売却

【初心者向け】中古投資用マンション売却を不動産会社が徹底解説

2022年11月02日

安定的な収益を上げ続けている投資用マンションであっても、何らかのタイミングが訪れた場合、あえて売却してしまったほうが有利になることがあります。
ここでは、投資用マンションの売却の流れや売却に適したタイミング、売却価格の算出方法、売却にかかる費用や税金などについて詳しくご紹介しています。

投資用マンションの売却の流れ

投資用マンションの売却の流れは、一般的な住居用マンションの売却の流れと大きな違いはありません。
ただし、賃借人に対する「地位承継通知」の必要があるなど、一部特殊な流れがあることも確かです。

以下では、投資用マンションの売却における大きな流れをご紹介します。

中古マンション売却の流れについて詳しくはこちら

レントロールや修繕履歴を作成する

購入希望者が購入を検討する材料として、レントロールや修繕履歴を作成しておきます。
レントロールとは、賃借人に対する賃貸条件(家賃や敷金など)をまとめた表です。一棟まるごと、または同じ棟に複数の物件を所有している場合には、戸別で作成しておきます。

修繕履歴とは、過去に行った修繕の記録です。
直近で修繕していれば当面は修繕の必要がないと判断され、その分高い価格で売却できる可能性があります。

対象物件の査定をしてもらう

複数の不動産会社に対し、対象物件の査定を依頼します。
不動産会社ごとに査定額は異なりますが、査定額=売却価格ではないので、必ずしも高い査定を出してくれた不動産会社が良いとは限らない点にご注意ください。

査定を出す不動産会社の選定基準としては、投資用マンションの仲介実績が豊富かどうかを重視します。
投資用マンションの仲介に積極的な不動産会社では、すでに多くの購入希望者を抱えていることが多いため、より良い条件の買主を見つけられる可能性があるでしょう。

また、マンション売却の査定方法には、大きく分けて机上(ネット)査定と訪問(現地)査定の2種類があります。

査定の方法について詳しくはこちら

机上(ネット)査定

主に築年数や間取りなどの資料やデータをもとに査定するのが、机上査定です。
訪問査定よりも精度は低くなります。

訪問(現地)査定

訪問査定は現地で行う査定です。

資料やデータだけではなく、日当たりや交通の利便性・近隣環境・広さや間取りの実感・共用施設の使い勝手など、実際に訪問しなければ分かりにくい要素をプロがしっかりとチェックします。
机上査定に比べると、手間や時間はかかりますが精度は高くなります。

不動産会社と媒介契約を結ぶ

不動産会社と媒介契約を結びますが、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解した上で、適切な契約形態を選びましょう。

媒介契約の種類について詳しくはこちら

一般媒介契約

「一般媒介契約」とは、複数の不動産会社と同時に結んでも良い契約形態です。

契約を結んだ不動産会社が、すでに多くの購入希望者を抱えている場合には、よりスピーディに成約につながる可能性もある点がメリットになります。

一方、売却活動の進捗を売主に報告する義務もないため、活動が不透明になりがちで、販売活動に注力してもらえない点がデメリットとなります。
「一般媒介契約」を結んだ場合、不動産会社は対象物件をレインズに登録する義務がない点も特徴です。

専任媒介契約

「専任媒介契約」とは、1社の不動産会社としか結べない契約です。
ただし、不動産会社に買主を探してもらいながらも、売主が自分で買主を探すこともできます。

メリットは不動産会社の売却活動がわかりやすいこと。
契約締結後、不動産会社は7日以内に対象物件をレインズへ登録します。
また、2週間に1度の頻度で売主に売却活動の進捗状況を報告することも義務です。

メリットの多い契約形態ですが、複数の不動産会社と同時に契約を結ぶことができないため、不動産会社同士の競争原理が働かないことはデメリットになるでしょう。

専属専任媒介契約

「専属専任媒介契約」とは、「専任媒介契約」と同様に1社の不動産会社としか結べない契約です。
こちらは、売主が自分で買主を探した場合、依頼している不動産会社を仲介人としなければなりません。

契約締結後、不動産会社は5日以内に対象物件をレインズへ登録します。
また、1週間に1度の頻度で売主に売却活動の進捗状況を報告する必要があるため、専任媒介契約よりも更に売却活動の様子がわかりやすいでしょう。

迅速かつ手厚いサポートを受けられる点がメリットですが、売却活動のすべてを不動産会社に一任しなければならないこと、不動産会社同士の競争原理が働かないことなどがデメリットになります。

売却活動を行う

いずれかの媒介契約を結んだ後、具体的な売却活動へと入ります。

すでに入居者のいる投資用マンションは内覧が難しいため、売主は内覧の代わりになる各種情報を整えておくことが必要です。
上で説明したレントロールや修繕履歴の他にも、以下のように購入希望者の判断材料となる情報をたくさん用意しておきましょう。

  • 新耐震基準の適合証明書
  • インスペクション結果報告書
  • 物件内部の画像
  • 想定利回り
  • エリアの賃貸需要 など

なお、情報を提供する際には、事前に購入希望者から守秘義務誓約書を差し入れてもらうことをおすすめします。

購入希望者と条件交渉をする

購入希望者が現れたら、まずは買付証明書を受領します。

買付証明書とは、「対象物件を〇〇円で購入したい」という購入希望者の意志をまとめた書類のこと。
買付証明書に記載された購入希望金額をたたき台にして、売主と購入希望者との間で条件交渉が行われます。

多くの場合、購入希望者は売主に対して値引きを要求してくるので、売主は値引き分も考慮して高めの価格で売り出しておくことが基本です。
更に、条件交渉の過程で、どこまで値引きに応じられるかの下限も想定しておくようにします。

売買契約を結ぶ

条件交渉で売主と購入希望者が合意に達したら、双方で正式に売買契約を結びます。

一般的に、売買契約の際には購入希望者から売主に対し、売買代金の10%ほどの手付金が差し出されます。
また、不動産会社に対しては、売主や購入希望者などから、仲介手数料の50%が支払われます。

物件を引き渡して残代金を払ってもらう

問題なく売買契約が成立したら、売主から買主に対して物件を引き渡し、同時に以下のように支払いが行われます。

  • 買主から残代金(売買代金から手付金を差し引いた金額)を支払い
  • 売主や買主から不動産会社に対して仲介手数料の残り(50%)を支払い

住宅用マンションの売買であれば、あとは固定資産税の精算などを行って売買手続きが完了しますが、投資用マンションの売買では、他にも賃料や敷金などの精算があります。
日割り計算をはじめとしてやや複雑な手続きとなるため、不動産会社のアドバイスにしたがって適切に手続きを進めましょう。

賃借人に地位承継通知を行う

投資用マンションの売買が成立するということは、賃借人の立場から見れば、オーナーチェンジ(大家さんが代わる)ということ。
オーナーチェンジが行われれば、以後、家賃は新オーナーへ振り込むことになるなど賃借人に求められる行動も変わるため、その旨の報告(地位承継通知)を行う必要があります。

地位承継通知は、売買契約の成立後に行うことが通常です。売主と買主の連名で書類を作成し、賃借人へと差し入れます。

マンション売却に必要な書類

中古マンション売却の際、売主は多くの書類を用意する必要があります。これらの書類は仲介業務を行う不動産会社や買主にとって非常に重要なものとなるので、事前に準備をしておくと安心です。

以下ではタイミング別に主な必要書類をまとめてありますので、参考にしてみてください。
※対象物件の状況によっては、他の書類が必要になる場合もあります。

不動産売却の書類について詳しくはこちら

媒介契約時から必要になる書類

  • 登記済権利証・登記識別情報通知書:売主が不動産の所有者であることを証明する書類。
  • 登記簿謄本:不動産に関する詳細な情報(抵当権など)が記載された書類。
  • 身分証明書:売主が依頼者本人であることを証明する書類。運転免許証など。
  • 間取図:物件の間取りを表した図。

販売活動で必要になる書類

  • 管理規約・使用細則:マンションの共用部分の使い方や注意事項等がまとめられた書面。
  • 重要事項にかかわる調査報告書:マンション管理費や修繕積立金、大規模改修等に関する情報がまとめられた書類。
  • 固定資産税・都市計画税納税通知書:固定資産税・都市計画税の納税額の通知書。

売買契約時や引き渡し時に必要な書類

  • 印鑑証明・実印:役所に印鑑登録したことを示す書類が印鑑証明。その際に登録した印鑑が実印。
  • 固定資産評価証明書:役所で把握している不動産評価額に関する書類。
  • 銀行口座の種類・口座番号がわかる通帳:売却代金の振込先となる銀行の口座種類と、その預金通帳。

登記済権利証・登記識別情報通知書と登記簿謄本について

マンション売却の準備段階に用意する書類に含まれる「登記済権利証・登記識別情報通知書」は、特に重要な書類です。
登記情報を記載した「登記簿謄本」とあわせて確認しておきましょう。

登記済権利証・登記識別情報通知書

不動産の権利登記手続きを行ったことを証明する書類が「登記済権利証」です。
マンション売却においては、そのマンションの所有者であり、かつ売却する権利を持つことを公的に証明する書類となります。

2005年3月7日以降に登記された場合は、基本的に12ケタの番号が記載された「登記識別情報通知書」が権利証に代わって交付されています。
場合によっては、2008年7月14日まで登記済権利証が交付された可能性があるので、自分が持っている書類はどちらなのか確認しておきましょう。

登記簿謄本

登記簿謄本とは、不動産の所在地や面積、所有者の氏名、住所、権利など、登記されている情報が記載された書類です。

不動産の物理的な状況を記載した「表題部」と、所有者の権利や住宅ローンを組む際の抵当権に関する情報等を記載した「権利部」に分かれています。
主に不動産会社に売却を依頼する際に、物件の登記内容を確認するために使われる書類です。

投資用マンションの売却を検討したいタイミング

安定的な家賃収入を維持している投資用マンションであっても、一定のタイミングが訪れた際には、あえて売却してしまうことも選択肢の1つです。

以下では、投資用マンションの売却を検討したい主なタイミングを見ていきましょう。

売却と時期の関係について詳しくはこちら

空室が増えてきた時

宣伝活動と比べて空室が増え始めてきた場合には、売却して次の物件への乗り換えを検討したほうが良いかもしれません。
不動産会社に相談しつつ検討することをおすすめします。

なお、不動産会社と「サブリース契約」を結ぶことで空室が生じても一定の家賃収入が確保できますが、支払われる家賃は相場より安くなることが多いでしょう。
契約する場合にはよく内容を吟味する必要があります。

金利が低い時

不動産の売却価格を算定する方法には複数ありますが、一般的に投資用マンションの場合は「収益還元法」と呼ばれる計算式が用いられます。
不動産の価格を算定した際、金利が安ければ安いほど価格が上がるという点が特徴です。

2022年11月現在、日本では低金利政策が続いています。
金利を基準に投資用マンションの売却を検討するのであれば、今は絶好のタイミングと言って良いでしょう。
ただし、査定の価格は売却価格と必ず一致する数字ではないという点にご注意ください。

ローンの元金返済分が減価償却費を超えた時

投資用マンションの購入費用は経費に計上できるので、その分の節税が可能ですが、単年度での一括計上はできません。
対象物件の法定耐用年数に応じ、年度を分散して経費計上(減価償却費として計上)します。

年度を分散して減価償却費として経費計上しても、その分の節税は可能ですが、もしローンを元利均等返済で組んでいた場合、いずれ経費計上できない元金分の返済額が減価償却費を上回るタイミングがやってきます。
このタイミングのことをデッドクロスと言いますが、デッドクロスを迎えると、以後は税金が増えてしまいます。

節税の視点から見れば、デッドクロスを迎える前のタイミングが、投資用マンションの売り時と言って良いでしょう。

大規模修繕の前(修繕積立金が上がる前)

大規模修繕とは、一定期間ごとにマンションの外壁や共用部分などを修繕する大きな工事を言い、これに備えて各区分のオーナーたちは毎月の修繕積立金をマンション管理組合に支払っています。
しかし、実際の大規模修繕では、修繕積立金の範囲内で収まらないケースが少なくありません。

もし修繕積立金で大規模修繕の費用をまかなうことができなかった場合、事後的にオーナーたちから特別徴収が行われます。特別徴収の額はケースにより異なりますが、高ければ100万円を超える場合も。
なおかつ、以後は月々の修繕積立金が増額されることも珍しくありません。

投資用マンションの場合、特別徴収や修繕積立金の増額でキャッシュフローが悪化する恐れもあります。
大規模修繕が行われる前のタイミングで売却することも選択肢となるでしょう。

路線価や公示価格が上昇している時

路線価とは、国税庁が定めている土地の相続税評価額の通称です。
一方で公示価格とは、国土交通省が定めている標準地の価格を言います。

路線価や公示価格が上昇すれば、当然、そのエリアにあるマンション等の価格も連動して上昇します。もちろん投資用マンションの価格も上昇するでしょう。

少しでも有利な価格で売却できるよう、逆に、不利な価格で売却しないよう、常に路線価と公示価格をチェックしておくことが大切です。

相続への準備をする時

所有する投資用マンションが1つで相続人が複数いる場合、マンションを分割しての相続はできません。
また、相続人が一人であったとしても、マンションを相続した後は、原則として現金一括で相続税を納める必要があります(評価額にもよります)。
いずれの場合でも、相続人には多少の混乱が生じることになるでしょう。

これらの混乱を避けるため、物件の評価額や収益などにかかわらず、生前の意志が明瞭なうちに投資用マンションを売却して現金化する人も少なくありません。
事前に現金化されていれば、複数の相続人が分割しての相続も可能です。
また、現金一括で相続税を納めることもできます。

不動産投資と相続に関する解説はこちら

売却活動には時間の余裕を持つ

できるだけ時間にゆとりを持って売却活動をすることが大切です。
売主に時間がないと、早く売却を成立させたい気持ちから、買主から値下げ交渉をされた時に弱気になってしまうことがあります。

時間があれば少しでも高く買ってくれる買主を探すことができるかもしれませんが、「1カ月以内に売ってしまいたい」などと売り急いでいると、大幅な値下げを要求する買主であっても妥協せざるを得ないでしょう。

できるだけ有利なマンション売却をするには、時間に余裕を持って早めに準備をすることをおすすめします。

売却しやすい投資用マンションの特徴

市場で活発に取引されている状態のことを「流動性が高い」と言い、逆に、市場での取引が活発ではないことを「流動性が低い」と言います。

あらゆる市場の中で、不動産市場は流動性が低い市場のため、投資用マンションを売りたいと思っても、すぐに買主が現れるとは限りません。
一方で、投資用マンションの中には、他に比べて流動性が高いとされるタイプも見られます。

流動性が高い投資用マンションの特徴を見てみましょう。

利回りが高い

利回りが高い投資用マンションは、流動性が高くなる傾向にあります。
特に、駅近などの好立地で築年数が浅い物件の場合、売り出してすぐに複数の購入希望者が現れる可能性もあるでしょう。

一方で、いかに利回りが良くても、郊外の築古マンションなどの場合には流動性が低くなる傾向もあります。

空室リスクが低い

空室リスクが低いマンションも流動性が高めになります。

空室リスクが低いマンションとは、例えば駅近で立地が良い物件や、築年数が浅い物件など。
都市部の場合には、築年数よりも立地が流動性に影響を与える傾向があります。

また、法人の社宅として長期契約が前提となっているマンションや、駅は遠くても大きな病院などの重要施設が近くにあるマンションなども、一般的なマンションに比べて空室リスクが低いと言えるでしょう。

価格が低い

今や投資用マンションは一般サラリーマンなどの間でも人気を集めている投資法の1つとなっていますが、まとまった資金が必要な物件を購入できる人は、ごく少数です。

逆に、1千万円台などの物件であれば、収入が特別高い方ではなくともローンを組んで投資ができます。
流動性の高さは市場への参加者の人数に比例する側面があることから、投資用マンション市場においては、高額な物件よりもリーズナブルな物件のほうが流動性は高くなります。

都市部の区分ワンルームマンション

一般的に、都市部の区分ワンルームマンションは、流動性の高さが特徴の1つとされています。

区分ワンルームマンションに入居する世帯は大半が単身者。
単身者は比較的フットワークが軽く、かつ都市部であれば人の流出よりも流入のほうが多い傾向のため、築年数にかかわらず、都市部の区分ワンルームマンションは高い流動性があるとされています。

投資用マンションの価格の算出方法

投資用マンションを売却する際、一般的には複数の不動産会社に価格してもらいます。
不動産会社はそれぞれの基準で異なる査定額を提示してきますが、「査定額=売却価格」ではないということが重要です。

査定額は、あくまでも不動産会社が想定した売却価格であり、実際の売却価格はその他の様々な要素や買主の価格交渉などを通じて決まります。
高い査定額を提示した不動産会社が、実際に高い価格で売却できるとは限らない点に注意しましょう。

以下、不動産会社が投資用マンションを査定する際に参考としている計算方法「収益還元法」を軸に、関連知識をまとめました。

投資用マンションは収益還元法で価格が算出される

マンション価格の算出方法にはいくつかの種類がありますが、中でも投資用マンションの価格の算出方法として一般的に用いられているのが収益還元法です。

収益還元法とは、将来のキャッシュフローも考慮して現在評価額を算出する方法。
細かく分けると「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。

直接還元法とは、一定期間の純利益を還元利回りで割って算出する計算方法です。
還元利回りとは、その不動産から得られる投資利回りを言います。

DCF法とは、将来的に獲得できるであろう利益と売却価格を、現在価値を基準に割り引いて算出する計算方法です。
背景には、「将来の100万円よりも現在の100万円のほうが価値が高い」という投資特有の考え方があります。

直接還元法とDCF法のどちらを採用しても、得られる結果に大差はありません。DCF法よりも直接還元法のほうが計算は簡単なので、実務的には直接還元法を採用するのが一般的です。

NOI利回りとの関係

投資用マンションの価格を算出する際の分母には「NOI利回り」が置かれます。
「NOI利回り」が低ければ低いほど、投資用マンションの価格は高くなるということです。

「NOI利回り」は、市場の「金利」と「不動産リスクプレミアム」を足して算出するので、「金利」と「不動産リスクプレミアム」が低いほど投資用マンションの価格は高くなる、と言うこともできます。

不動産リスクプレミアムとは

「不動産リスクプレミアム」とは、立地や築年数などの要件から見積もったリスクを数値化したものです。
好条件であればあるほど数値が低くなります。

2022年11月現在、市場の「金利」は低水準が続いています。
同時に「不動産リスクプレミアム」の低い物件であれば、高い価格となる可能性があるでしょう。

投資用マンションの売却で必要な費用

投資用マンションの売却で必要となる費用には、不動産仲介手数料や司法書士報酬などの一般的な費用の他、印紙税や譲渡所得税などの税金もあります。
投資用マンションの売却で必要となる主な費用について確認してみましょう。

仲介手数料

仲介手数料とは、投資用マンション売却の媒介契約を結んだ不動産会社に対し、売買契約が成立した時に支払う報酬です。
あくまでも成功報酬という位置づけなので、売買契約が成立してから支払います。
また、売買契約未成立のままで媒介契約を解除した場合、支払う必要はありません。

仲介手数料には法令上の上限があるため、不動産会社は、この上限を超えては請求できません。
逆に、上限内で仲介手数料を下げることは可能です。

仲介手数料の上限額は一律ではなく、対象物件の売買金額に応じて上下します。

  • 売買代金が200万円以下の場合:売買代金の5%
  • 売買代金が200万円超400万円以下の場合:売買代金の4%+2万円
  • 売買代金が400万円超の場合:売買代金の3%+6万円

なお、仲介手数料には消費税が課税されます。

印紙税

印紙税とは、いわゆる「課税文書」にかかる税金の総称です。
不動産売買契約書も「課税文書」の一種なので、売買契約を結ぶ際には印紙税を納税しなければなりません。
収入印紙を購入し、不動産売買契約書に貼付すれば納税完了です。

印紙税の額は、対象物件の売買金額に応じて上下します。

  • 売買代金が500万円超1000万円以下の場合:10,000円(5,000円)
  • 売買代金が1000万円超5000万円以下の場合:20,000円(10,000円)
  • 売買代金が5000万円超1億円以下の場合:60,000円(30,000円)

※2022年10月現在は軽減税率が適用となっているため、印紙税はカッコ内の通りとなります。

抵当権抹消に関連する費用

抵当権が設定されたままの不動産は売却できないため、所有する投資用マンションに抵当権が設定されている場合には、抵当権を抹消する必要があります。

抵当権抹消の際には、不動産1個につき登録免許税1,000円が必要です。
また、手続きを司法書士に依頼した場合には、司法書士報酬として別途10,000~15,000円程度がかかります。

譲渡所得にかかる税

投資用マンションの売却により、もし譲渡所得(売却益)が出た場合には、所得税や住民税の納税が必要です。
税率は、不動産の所有期間に応じて異なります。

具体的な計算方法は次の通りとなります。

  • 不動産の所有期間が5年以下の場合
    譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
  • 不動産の所有期間が5年超の場合
    譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

投資用マンションの所有期間が5年超になると税率が大きく下がるため、売却益が出そうな場合には、購入から5年超を経たのちに売却したほうが得策です。

なお、売却損が出た場合には、所得税・復興特別所得税・住民税は課税されません。

譲渡所得の計算方法

所得税の計算式で出てくる譲渡所得とは、「譲渡価額」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた金額です。
単純に「譲渡価額-取得費」を指すわけではありません。

また、投資用マンションの「取得費」は「買った時の金額」を指すのではなく、「買った時の金額-減価償却費(※)」を指します。

なお、投資用マンションを運営する場合には、毎年確定申告をする必要がありますが、この確定申告書類に記載されている「年初未償却残高」が「取得費」となります。
譲渡所得の計算の際、参考にしてみてください。

譲渡費用として認められない主な費用

譲渡費用とは、対象物件の譲渡に直接関連して発生した費用のことで、不動産仲介手数料が代表的です。
ただし、譲渡費用に該当しそうな項目でありながらも、計算上は譲渡費用に含まれない項目もあります。

例えば抵当権抹消にかかった費用については、必ずしも譲渡のみに直接関連して発生する費用ではないため、譲渡費用としては認められません(判例あり)。
また、譲渡に関連して発生した税理士費用についても、譲渡のための直接的な費用ではなく、譲渡を経た後の確定申告のための費用とみなされるため、譲渡費用には含まれません。

譲渡所得を計算する際には、認められていない項目を費用計上しないよう注意しましょう。

消費税

売主が課税事業者の要件を満たしていた場合には、消費税の納税が必要です。

売主が課税事業者であれば、投資用マンションを売却する際、買主から消費税を預かります。
預かった消費税は、売主が税務署に申告して納付する形となります。

消費税の課税事業者となる基準

個人事業主の場合、売却の前々年の課税売上高が1000万円以上かどうかが基準です。
つまり、売却した年の2年前に事業所得が1000万円以上なければ、消費税を納税する義務はありません。

消費税の課税事業者とは、所定期間内における課税売上高が1000万円以上となった事業者を言います。
この「課税売上高」とは、マンションの売却代金から、事後的な値引きや割り戻しなどを差し引いた金額のこと。
ちなみに、差し引く金額がなければ、売却金額がそのまま課税売上高となります。

中古マンションの売却にかかる税金について詳しくはこちら

確定申告について

投資用マンションの売却において、譲渡所得(売却益)が出た場合には譲渡所得税等の納税が必要ですが、その納税は確定申告を通じて行います。
確定申告を怠った場合、税務署の判断によっては無申告加算税や延滞税、重加算税などを追徴されるおそれがあるでしょう。

税務署は、特に不動産取引に関しては細かく調査しているとされています。
もし確定申告を怠ったり失念したりした場合には、税務調査(税務署の職員によるヒアリング)が行われる可能性も。
投資用マンションの売却で譲渡所得が生じた際には、正しく納税額を計算して期限までに確定申告を終えるようにしましょう。

なお、居住用のマンションとは異なり、投資用マンションを売却して譲渡損失(売却損)が発生したとしても、給与や事業所得など他の所得と損益通算はできません。
確定申告の際には、誤って損益通算しないよう注意が必要です。

オーナーチェンジで売却する際の注意点

入居者がいるマンションの売却(オーナーチェンジ)では内覧ができないため、購入希望者は売主から提供される情報のみを頼りに購入を検討しなければなりません。
その制約から、オーナーチェンジ物件は、空室時の価格相場よりも多少安くなることがあります。

すでに入居者がいる投資用マンションを売却する場合、当面の家賃収入が約束されていることから、スピーディな売買が期待できるでしょう。
売却スピードを重視する場合には良い選択肢となり得ますが、売却価格を重視する場合、必ずしもオーナーチェンジが有利になるわけではないのです。

中古マンション売却の相場

査定の際は、どれくらいの金額が妥当なのか自身でも確認しておくことが大切です。
千葉県における中古マンション売却の相場を例に、調べ方をご紹介いたします。

千葉県の中古マンション売却相場の平均価格

中古マンションと一口に言っても、地域・間取り等様々な条件によって売却価格には大きな幅があります。
あくまでも参考としてですが、例として、弊社Myアセットの本社所在地である千葉県の相場を見てみましょう。

国土交通省の不動産取引価格のデータによると、2019年10月~2020年9月の1年間に千葉県内で取引された中古マンションは約2,000件。
うち最も取引数が多い(※1)3LDKの平均取引価格を計算すると、1件あたり約2,300万円です。

ちなみに1LDKなら約1,900万円、2DKなら約930万円、2LDKなら約1,700万円となっています。
いずれも幅広い床面積・建築年の物件が含まれるため一概には言えませんが、相場を知る目安になるでしょう。

(※1)2019年10月~2020年9月における中古マンション取引件数2,059件のうち、半数以上にあたる1,194件が3LDK物件。
参考:土地総合情報システム(国土交通省)
https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/PopTradeListServlet?TTC=29001&TKC=07&TTY=1&ARC=12&LY=9999&SFL=0&FFL=0:0&PG=1

不動産取引価格を調べることができるデータベース

自分が所有している個別物件の売却価格は、査定に出すほうがより正確に推定できますが、おおまかな相場のイメージを把握するためには以下のデータベースが参考になるでしょう。

土地総合情報システム(国土交通省)

国土交通省のデータベース「土地総合情報システム」では、個別の不動産取引価格を確認できます。
売却したい物件に似た物件の取引事例を探してみましょう。

REINS Market Information(不動産流通機構)

全国の不動産会社が物件情報を登録・する情報システム(REINS:レインズ)のデータベース、「REINS Market Information」でも物件の取引情報を調べることが可能です。

売却に際してのポイント・失敗しないための注意点

中古マンションの売却は、非常に大きなお金が動きます。
いくらで売却を成立させるか、売却活動時にどれくらいのコストをかけるかの違いで、数十万円や数百万円規模の違いが出ることも。

少しでも有利に売却を進めるために、マンション売却に失敗しないためのポイントをまとめました。

売却にあたってリフォームは必要?

売却活動の前にリフォームやリノベーションを検討する人もいますが、リフォーム・リノベーションをしないほうが中古マンションは売れやすい場合があります。

中古マンションの買主の中には、なるべく安くマンションを買って自分好みにリフォームをしたいと考えている人も多いからです。
事前にリフォームしてしまうと、その機会を奪ってしまい候補物件から外れてしまうことになります。

ただし、ドアが開かない、ガラスが割れている、水漏れ箇所があるなどの機能的な部分については最低限の修繕・リフォームが必要です。
リフォームすべきか迷ったら、不動産会社などの専門家に相談しましょう。

リフォームについて詳しくはこちら

掃除など内覧準備を徹底的に行う

少しでも有利な条件で売るには、屋内の清潔感を演出することも効果的です。
特に購入希望者の印象を左右する水周りや玄関、リビングなどはハウスクリーニング等を活用して徹底してきれいにしておくことをおすすめします。

「明日内覧をしたい」という急な問い合わせが来ても大丈夫なくらい、売り出し中は常にきれいにしておくよう心がけましょう。

マンション売却を得意とする不動産会社に仲介依頼する

マンション売却は、一戸建てや賃貸物件などとは異なる専門性が求められる分野です。
可能であれば、マンション売却を得意とする不動産会社に依頼することをおすすめします。

各不動産会社にはそれぞれの得意・専門とする分野があります。
専門分野の異なる不動産会社にマンション売却の仲介を依頼してしまうと、納得のいく取引にならないおそれがあるでしょう。

「不動産投資顧問業」は売却にも関係する?

不動産会社の中には、「不動産投資顧問業」という専門業者としての登録をしている会社があります。
不動産会社選びの際には、「不動産投資顧問業」などの肩書にも注目してみましょう。

「不動産投資顧問業」とは、投資用マンションなどで不動産投資をする人に対し、様々な助言やサポートをする業務のこと。
国土交通省が認定する高度な業務のため、信頼できる不動産会社を選ぶためのひとつの指標になります。

特に、築古物件の売却など、仲介契約をする不動産会社を1社に絞ったほうが売却活動を進めやすいような案件では、不動産会社の専門性の高さが大切です。

不動産投資顧問業について詳しくはこちら

自分の物件の良い点を把握する

好条件で売却するには、購入希望者に物件のアピールポイントを伝えることも大切です。
内覧する人に響くアピールポイントを、たくさん用意しておきましょう。

例えば次のようなものです。

  • 修繕が終わったばかりなので、これから数年は修繕が不要
  • 共有部分の設備が充実している
  • 買い物に便利な立地
  • 公園や緑が多いので子育てしやすい
  • 治安面での問題を聞いたことがない
  • 病院、銀行、市役所など生活の要所が徒歩圏内
  • 管理会社がしっかりしているので、共有部分が常に清潔

不動産会社とも相談し、売却物件の魅力的な部分はどこなのかを明確にしておきましょう。

売却する最低金額を決めておく

マンションの売買交渉においては、買主から値引きを求められることがあります。
最終的な売買価格は売主と買主の合意で決まるため、取引を成立させるにはある程度は買主の希望に歩み寄ることも大切です。

一方で売主側は、事前に「ここまでなら値引きに応じる」という最低ラインを設定しておくようにしましょう。
成り行き任せで価格交渉をしていると、当初の想定よりもかなり安い価格で売却しなければならなくなる事態もありえます。

売買契約後の責任を把握する

2020年4月1日から施行された改正民法において、従来の「瑕疵担保責任」の概念が、新たな「契約不適合責任」に変わりました。
この改正により、実質的には売主の責任範囲(=買主からの請求権の範囲)が広くなっています。

改正法における最大の変更点とも言える部分が、買主に追完請求権が認められるようになったこと。
追完請求権とは、引き渡された物件に契約内容と一致しない不具合があった場合、買主から売主に対して不具合の補修請求ができるという権利です。

以前の「瑕疵担保責任」においては、売主がその不具合を知っているかどうかが争点となりましたが、新たな「契約不適合責任」においては、売主がその不具合を知らなくても売主の責任が成立することになりました。
代金の振込と物件の引き渡しが済んでも、売主には「契約適合責任」が残ることを覚えておきましょう。

契約不適合責任について詳しくはこちら

築古物件の売却の注意点

築古物件の場合、なかなか売れないことがあります。買主が現れても、銀行から融資を受けられなかったとの理由で売却が成立しないことも。
築古物件は担保評価額が低く、返済不能リスクへの十分な備えにならないと判断されて金融機関が融資を断るケースが多いためです。

また、1981年6月以前に建設されたものについては、新耐震基準に対応していない可能性が高いので、同じく融資が受けづらい理由になります。

これらの対策として、「不動産会社と専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶ」ことや「不動産会社に買取を依頼する」ことをおすすめします。

前者は一般媒介契約よりも、積極的な宣伝活動を行う「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」を不動産会社と結ぶことで、より早く売却できる可能性を高めることが可能です。
後者は価格こそ下がってしまう可能性はありますが、仲介の売却よりも短い期間で売ることができるでしょう。

築古物件の売却について詳しくはこちら
築古物件の価格計算方法が変わる場合についてはこちら

遠方にある物件の売却の注意点

自宅から遠方にある物件を売却する際には、売却活動や契約にあたってコストがかかります。

「マンションの売買契約を結ぶ時」と「引き渡しを行う時」の最低2回は売主がその場に立ち会うのが原則です。
そのため、売却するマンションが遠方にある場合には、現地や引渡しを行う場所までの交通費や宿泊費などがかかります。

どうしても自分が立ち会えない場合は代理人を立てる方法もありますが、その場合にも代理人への報酬などコストの発生は避けられないことがほとんど。
近場のマンションの売却に比べると、遠方のマンションを売却するにはそれらのコストが加わることも念頭に置きましょう。

今回のまとめ

中古マンションの売却に関して、売却活動の概要や契約、費用、注意点・ポイントなどについて網羅的に解説してきました。
当メディア「不動産投資の副読本」内の各記事ではそれぞれの詳細に解説していますので、こちらもぜひチェックしてみてください。

Myアセットでは、住居用・投資用を問わず豊富な売却実績で得たノウハウをもとに、ここで取り上げた話題以外にも中古マンション売却に関するあらゆるご相談を受け付けております。
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