一般と専任、投資用のマンション売却にはどちらの媒介契約?
2022年12月12日
目次
不動産会社に仲介を依頼して投資用マンションを売却するためには、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」のいずれかを結んで売却活動を進める形となります。
ここでは、これら3種類の売却方法の概要・メリット・デメリット、および不動産会社自身が買主となる「買取」という方法について詳しくご紹介します。
媒介契約の種類
媒介契約は3種類ありますが、どれがもっとも優れているかというものではありません。
不動産取引の状況や目的に応じて、どの契約が適しているのかを適宜判断しましょう。
一般媒介契約
一般媒介契約とは、不動産会社の広告や公式HPに物件情報を掲載してもらうなど、最低限の売却活動を依頼する契約を言います。
最低限の売却活動とは言え、依頼主は複数の不動産会社と同時に一般媒介契約を結ぶことができるため、比較的広く物件情報が公の目に入ります。
重複していることを伝えた上で結ぶ一般媒介契約を「明示型」と言います。
反対に、重複していることを伝えずに結ぶ一般媒介契約を「非明示型」と言います。
不動産会社においては、依頼主に対して売却活動の進捗状況を報告する義務はありません(報告するか否かは任意)。
3種類の媒介契約のうち、不動産会社においては、もっとも手間のかからない媒介契約となります。
なお、一般媒介契約の場合、不動産会社の仲介で売却できることに加えて売主が自分で買主を探して売却する「自己発見取引」も可能です。
また、法律上の契約期間は無制限です。
ただし、国土交通省の標準媒介契約約款においては3ヶ月以内で定められています。
一般媒介契約が向いている例
売却情報が人の目に触れるだけで問い合わせが集まるような、もとから高い需要が見込まれる物件については、一般媒介契約でも十分に売れる可能性があります。
例えば次のような物件です。
- 駅までのアクセスなど立地が良いマンション
- 築浅のマンション
これらのように、すぐにでも買い手がつきそうな物件であれば、たとえ一般媒介契約であっても、不動産会社はその売却情報を目立つ形で公開する傾向があります。
専任媒介契約
専任媒介契約とは、一般媒介契約よりも積極的な売却活動を不動産会社に依頼する契約を言います。
一般媒介契約とは異なり、専任媒介契約は1社の不動産会社としか契約を結べません。
売却活動の内容は、不動産会社の広告や公式HPへの情報掲載に加え、営業担当者による積極的な売却活動など。
一般媒介契約に比べると買主が見つかる可能性は高いとされ、投資用マンションの売却活動でもよく選択されている契約方法です。
専任媒介契約の契約期間中であっても、売主が自分で買主を見つける「自己発見取引」が可能です。
また、契約期間は3ヶ月ごとの更新制となっています。
専任媒介契約が向いている例
不動産会社が熱心に営業活動をしなければ売れにくい物件については、一般媒介契約よりも専任媒介契約のほうが向いているでしょう。
- 駅までのアクセスが悪いマンション
- 築年数が古いマンション
他にも、何らかの事情があって売れにくい物件については、一般媒介契約ではなく、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶことをおすすめします。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは、契約した1社の不動産会社に対し、売却活動のすべてを任せる契約を言います。
専任媒介契約を更に強化したような契約となるため、希望の価格でスピーディにマンションを売却して欲しいという方には、頼もしい契約方法になるでしょう。
すべてを任せる以上、売主が自分で買主を見つける「自己発見取引」はできません。
仮に買主を見つけたとしても、必ず媒介契約を結んだ不動産会社の仲介という形で売買契約を成立させなければなりません。
つまり売主は、必ず不動産会社に売買成立の仲介費用を支払わなければならない、ということです。
なお、契約期間は3ヶ月ごとの更新です。
専属専任媒介契約が向いている例
専任媒介契約と同様に、不動産会社の営業活動なくして売れにくい物件に関しては、専属専任媒介契約も検討してみたほうが良いでしょう。
一般媒介契約のメリット
物件の情報を広く公にすることができる
契約を結んだ複数の不動産会社が自社の広告や公式HP等に物件情報を掲載することから、情報が広く一般の目に触れる形となります。
マンションの売却可能性を高めるためには、多くの人の目に触れさせることは大事なポイントとなります。
不動産会社同士の競争が生まれることがある
他の不動産会社とも契約を結んでいると知った不動産会社では、自社が手数料収入を獲得するために、より営業活動を熱心に行うことがあります。
それぞれの不動産会社に競争が生まれれば、それだけ売却可能性が高まるでしょう。
売主が自分で買主を見つけても良い
不動産会社に営業活動を行ってもらっている一方で、売主は自分で買主を探しても問題ありません(自己発見取引)。
親戚や知人などが買いたいと名乗り出れば、不動産会社に仲介手数料を支払うことなくマンションを売却できます。
一般媒介契約のデメリット
物件情報がレインズに登録されないことがある
一般媒介契約の場合、不動産会社はレインズに物件情報を登録する義務がありません。
もしレインズに登録されなければ、全国にいる潜在的な買主を逃してしまうおそれがあるでしょう。
不動産会社から営業状況の報告が入らないこともある
一般媒介契約の場合、不動産会社は売主に対する営業状況の報告義務を負いません。
もし不動産会社から報告が入らなければ、マンションが売れそうなのか売れる見込みがないのか等々、売主は情報を入手しにくくなります。
不動産会社が積極的に営業活動を行ってくれないこともある
もし自社ではなく他社が買主を見つけた場合、それまで行ってきた営業活動が無駄になってしまいます。
そのため、中には一般媒介契約の営業活動を積極的に行わない不動産会社もあります。
専任媒介契約のメリット
契約から7営業日以内にレインズへ物件情報が登録される
専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社は7日以内にレインズへ物件情報を登録しなければなりません。
レインズに登録されることで、比較的スピーディに買主が見つかることもあります。
2週間に1度の頻度で不動産会社から営業状況の報告が入る
専任媒介契約を結んだ不動産会社には、2週間に1度の頻度で、売主に対して営業活動を報告する義務が生じます。
定期的に不動産会社からの情報が入れば、その情報をもとにして売却方法の見直し等をしやすくなるでしょう。
売主が自分で買主を見つけても良い
一般媒介契約と同様に、専任媒介契約でも自己発見取引が可能です。
専任媒介契約のデメリット
複数の不動産会社と同時に契約を結べない
専任媒介契約は不動産会社1社としか結べないため、不動産会社同士の競争原理が働きません。
ライバルがいない分、不動産会社は売却活動に熱心な姿勢を見せない可能性があります。
両側取引による「囲い込み」のリスクがある
両側取引に熱心な不動産会社と専任媒介契約を結んだ場合、他の不動産会社が見つけてきた買主の案件を隠すなど、いわゆる「囲い込み」のリスクがあります。
3か月以内に契約解除をするとキャンセル料を請求されることがある
専任媒介契約の契約期間は3か月です。
この間に契約解除して他の不動産会社に乗り換えた場合、これまでかかった販売活動の経費などをキャンセル料として請求されることがあります。
専属専任媒介契約のメリット
契約から5営業日以内にレインズへ物件情報が登録される
専属専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社は5日以内にレインズへ物件情報を登録しなければなりません。
専任媒介契約よりも早く情報が公開されるかもしれません。
1週間に1度の頻度で不動産会社から営業状況の報告が入る
専属専任媒介契約を結んだ不動産会社は、売主に対して1週間に1度の頻度で営業状況を報告する義務を負います。
専任媒介契約の2倍となる報告頻度です。
買主から物件を信頼してもらえる傾向がある
専属専任媒介契約に基づいたマンションは、買主から見れば「1社の不動産会社に任せておけば十分に売れる物件」「売主が自分で買主を探さなくても売れる物件」という印象となります。
マンションに対する信頼が上がり、買主が集まりやすくなる可能性もあるでしょう。
専属専任媒介契約のデメリット
複数の不動産会社と同時に契約を結べない
専任媒介契約と同様、複数の不動産会社と同時に契約を結ぶことができません。
売主が自分で買主を見つけることはできない
専属専任媒介契約を結ぶと、売主は自己発見取引ができなくなります。
もし売主が自分で買主を見つけた場合には、不動産会社に仲介手数料を支払わなければなりません。
両側取引による「囲い込み」のリスクがある
両側取引による「囲い込み」のリスクがある点は、専任媒介契約と同様です。
マンションがなかなか売れない時の工夫と対策
不動産会社に仲介してもらっているにもかかわらず、どうしてもマンションが売却できない場合には、売却可能性を高めるための何らかの工夫や対策が必要です。
不動産会社と相談の上、以下のような工夫・対策を検討してみると良いでしょう。
売却価格を下げる
マンションの価値に対し、設定している売却価格が割高であれば、買主はなかなか現れません。
改めて不動産会社と相談の上、売却価格の見直しを検討してみましょう。
内覧に向けて部屋をきれいにしておく
もしマンションが空室ならば、ハウスクリーニングの依頼や細かな修繕などを行い、内覧の印象を良くするよう部屋をきれいにしておきましょう。
不動産会社を変える
より熱心に営業活動を行ってくれる不動産会社に乗り換えることも検討してみましょう。
キャンセル料がかからないよう、契約期間を確認してから乗り換えるようにします。
不動産会社に買取してもらう
不動産会社の「仲介」で売却できない場合には、不動産会社の「買取」による売却を検討してみましょう。
「買取」に関する詳細は後述します。
マンション売却における「買取」とは
買取とは、不動産会社が直接マンションの買主になる契約を言います。
不動産会社は「買取」したマンションをリフォームやリノベーションによって価値を高め、不動産市場で再販売するのです。
買取のメリット
現金化が早い
市場から買主を探す必要がないので、取引が非常にスピーディです。
不動産会社と買取の契約を結んで物件を引き渡すだけで、売主は売却を完了できます。
内覧に向けた準備が要らない
買取の場合、買主は不動産会社であることが確定しているため、売主は一般の内覧に対する準備をする必要がありません。
リフォームも不動産会社が買取後に行うため、売主には修繕費等の負担もありません。
仲介手数料が無料になる
買取は不動産会社との媒介契約に基づく取引ではないため、売買に際して仲介手数料は発生しません。
契約不適合責任を問われない
買取によってマンションを売却した場合には、売主は契約不適合責任を負う必要はなく、引き渡し後に見つかった不具合は不動産会社の責任で対応する形となります。
仲介によってマンションを売却した後、当該マンションに契約内容には存在しない不具合が発覚した場合、その不具合に対する責任は売主が負うこととなります。
これを契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)と言います。
買取のデメリット
仲介で売却するよりも価格が安くなる
買取による売却価格は、仲介による売却価格の7~8割程度とされています。
不動産会社の目的は「リフォーム+転売」で利益を出すことなので、利益分を考慮した価格まで下げられることは避けられません。
買取を行っていない不動産会社も多い
すべての不動産会社が買取を行っているわけではありません。
「仲介で売れなければ買取してもらう」とお考えの売主は、仲介契約を結ぶ際、その不動産会社が買取も行っているかどうかを確認する必要があります。
両側取引とは
不動産業界には「片側取引」と「両側取引」という言葉があります。
片側取引とは、売主または買主の一方と媒介契約を結んで売却活動をする方法で、両側取引とは売主と買主の両方と媒介契約を結んで売却活動をする方法です。
一般的には片側取引で売却活動が進められますが、もし片側取引で売買が成立した場合には、不動産会社は契約した売主または買主の片方から手数料を受け取る形となります。
一方で両側取引において売買が成立した場合には、不動産会社は売主と買主の両方と媒介契約を結んでいるため、双方から手数料を受け取ります。
両側取引は法律で禁止されているわけではないので、両側取引をしても不動産会社には何ら問題はありません。
ただし、売主には「少しでも高く売りたい」という希望があり、買主には「少しでも安く売りたい」という希望があるため、これを同じ不動産会社が仲介すると利益相反する形になりかねません。
また、特定の物件を他の不動産会社に回さないための「囲い込み」にもつながる可能性があるなど、両側取引はいくつかの問題点を指摘されることがあります。
賃借人がいる状態でもマンション売却は可能
賃借人がいる状態でもマンションは売却可能です。
オーナーが代わったことを事後的に賃借人へ報告する必要はありますが、売却活動に先立って賃借人にオーナーチェンジの意向を報告する必要はありません。
すでに賃借人が入居している物件の場合、買主は入居者の募集活動をする手間がなく、かつマンションを購入した直後から家賃収入を手にできるため、投資用マンションを求める投資家から人気です。
すぐにでもマンションを売却したいという方は、あえて入居者がいる状態の時に売却活動を行うことも一法です。