売却

『中古マンションの査定方法』を不動産のプロが解説

2020年12月21日

ここでは、中古マンションの売却をお考えの方に向け、売却査定に関する基本的な情報を網羅的にご紹介しています。
査定価格と実際の売却価格の違い、査定方法の種類、査定の流れ、査定額を左右するポイント、査定の計算方法の種類などに関して詳細にまとめましたので、少しでも有利に中古マンションを売却したい方は、しっかりと内容を理解することが大切です。

査定方法の種類

不動産査定方法には、大きく分けて机上(ネット)査定と訪問(現地)査定の2種類があります。
言い方は様々ですが、簡単に言えば、不動産の現物を見ないで行う査定が机上査定、不動産の現物を見て行う査定が訪問査定と考えてください。

以下、それぞれの査定の概要、およびメリット・デメリットなどについて見てみましょう。

机上(ネット)査定

机上査定とは、対象となる不動産の現物を見ず、データ等を根拠に査定額を算出すること。各種の資料を参考にしたりネットシステムを利用したり、またAI(人工知能)を導入したりなど、その方法は様々です。

メリット

机上査定の最大のメリットは、ほとんど手間がかからないということです。実際に現地に行く必要が無く、自宅でネットを通じて査定を行ってもらうことも可能。基本的には不動産会社へ足を運ぶ必要もないので、どなたでも抵抗なく利用することができるでしょう。

デメリット

実際に不動産の現物を確認するわけではない以上、査定額の精度が下がることは机上査定の大きなデメリット。たとえば建物を売却する場合、壁や床、設備などの傷み具合や評価価値は、実際に建物を見てみなければ分かりません。これら査定に大きな影響を与える要素を省略して査定する以上、訪問査定に比べ、査定の精度が下がりやすい傾向にあります。

訪問(現地)査定

訪問査定とは、机上査定における各種データも加味しつつ、実際に対象となる不動産を目で見て査定額を算出すること。現地では物件の状態だけではなく、周辺環境など査定に影響を与える各種要素も確認し、査定の参考にします。

メリット

物件の状態や周辺環境など、実際に現地でしか把握できない要素も確認できることから、机上査定に比べると、査定の精度が高いです。

デメリット

不動産会社の担当者が物件を確認する際、原則として、当該不動産のオーナーは立ち会う必要があります。日程調整なども含め、これらを手間と感じる人もいることでしょう。机上査定に比べ、査定にかかる日数が長くなることもデメリット。

査定の精度を求めるなら訪問(現地)査定がおすすめ

机上査定にも訪問査定にも、それぞれにメリットとデメリットがあるので、どちらが良いかを一概に評価することはできません。 不動産の売却は、一般に大きなお金が動く取引ですので、少し長く日数がかかったとしても、査定の精度の高さを優先したほうが良いかもしれません。時間的な余裕がある方は、訪問査定を選んでみてはいかがでしょうか?

Myアセットでは、不動産の訪問査定を無料で行っております。すぐの売却をお考えの方はもとより、将来的に売却する可能性がある方も含め、ぜひお気軽にお問い合わせください。

訪問査定の流れ

依頼から結果報告まで

不動産の訪問査定は、大きく次の5つの流れで行われます。

  1. 査定依頼
  2. 査定日程の調整
  3. 訪問査定
  4. 不動産売却に必要な書類の確認
  5. 査定結果の報告

それぞれの内容を詳しく見てみましょう。

1.査定依頼

査定をお願いしたい不動産会社に連絡をし、正式に査定依頼をします。一社だけに査定依頼しても構いませんが、よりバランスの取れた査定額を知りたい方は、複数社に査定依頼することをおすすめします。

2.査定日程の調整

訪問査定の当日には、通常、その不動産のオーナー(売却希望者)が現場に立ち会わなければならないので、不動産会社の査定担当者と直接話し、査定に来訪する日時を調整する必要があります。

なお訪問査定への立ち会い時間は、正味2~3時間ほどかかります。

3.訪問査定

査定当日、不動産会社の担当者が実際に物件を調査に訪問します。調査対象は建物や場所の利便性、周辺環境などです。その不動産について、担当者から質問されることもあるので、売却の理由や希望額なども含めて事前に基本的な情報についてまとめておきましょう。

4.不動産売却に必要な書類の確認

実際に不動産を売却するつもりならば、買主が見つかってから慌てないよう、事前に売却に必要な書類(後述)を確認・用意しておくようにしましょう。

5.査定結果の報告

調査から3~4日後、不動産会社から査定結果が伝えられます。報告を受ける際には、なぜその査定額となったのかを、詳しく質問することが大切です。

複数の不動産会社に査定額の根拠を質問することで、各不動産会社の力量や信頼性が見えてくることがあります。

不動産売却に必要な書類

以下のような書類が不動産売却時に必要になります。

  1. 本人確認書類や印鑑証明書など
  2. 固定資産税納税通知書
  3. 登記済権利証(不動産登記法改正後は「登記識別情報」)
  4. 管理規約(物件がマンションの場合)
  5. 図面など
  6. 自分の銀行口座の情報

それぞれの内容を詳しく見てみましょう。

1.本人確認書類や印鑑証明書など

免許証や保険証などの本人確認書類、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書などが必要です。現住所と登記上の住所が異なる場合には、住民票も用意しておきましょう。

2.固定資産税納税通知書

固定資産税の納税額の確認のため、また、売却時における登録免許税の算出のために、固定資産税納税通知書が必要となります。紛失している場合には、市区町村の役場で再発行することができます。

3.登記済権利証(登記識別情報)

登記済権利証とは、当該不動産の所有者を証明する書類のこと。「登記名義人=不動産の所有者」であることを示すための、重要な書類となります。不動産を購入した際に法務局から発行されているので、確認してみてください。

なお、不動産登記法の改正後、登記済権利証に代わって「登記識別情報」が発行されるようになりました。権利を証明するという点については同様ですが、こちらはランダム12ケタ英数字の暗証番号のようなものが記載されており、銀行のキャッシュカードに用いられる暗証番号と同様にこれを知る人が不動産権利者としてみなされます。

4.管理規約(物件がマンションの場合)

売却予定の不動産がマンションの場合、マンションの管理規約を用意しておく必要があります。

管理規約とは、そのマンションに住む人たち全員が守るべき共通ルールを記した書類です。買主にとっては、とても気になる書類なので、紛失して手元にない場合には、マンション管理組合に問い合わせてみてください。

5.図面など

図面や設備の仕様など、物件の詳細が記された書類を用意しておきましょう。買主にとって大切な書類です。

6.自分の銀行口座の情報

買主に振込先の口座番号を伝える書類を用意しておきましょう。ちなみに、預金通帳の口座番号が記されている面をコピーして買主に渡すことで書類を作る手間が省けます。

売却時に必要な書類についての解説はこちら

査定額に影響が出るポイント

査定額を左右する要素には、様々なものがあります。不動産会社によって独自のポイントを設けている場合もありますが、おおむね次の8つが、不動産業界に共通する大切なポイントと言われています。

  1. 立地
  2. 築年数
  3. 共用施設
  4. 陽当たり
  5. 階数
  6. 広さや間取り
  7. 交通の利便性
  8. 近隣の環境

順次詳しく見ていきましょう。

1.立地

特にマンションの査定においては、数ある査定基準の中でも、立地は大事なポイントの一つとなります。

もっとも注目される立地条件は駅からの距離。駅から物件まで徒歩10分以内かどうかが、査定額の大きな分かれ目になることがあります。

ほかにも、物件から徒歩圏内にスーパーやコンビニがあるかどうか、学校や保育園・幼稚園などへのアクセスが良いかどうか、近くに病院や銀行などがあるかどうなどが、不動産の査定額を左右する大事な立地条件になりやすいです。

2.築年数

一般的に、建物や設備は経年劣化するものなので、築年数が新しければ新しいほど、物件の価値は高くなります。
ただし建物の価値は、一般に築20年までは右肩下がりで下落するものの、それ以降の下落は非常に緩やかなものになることが知られています。場合によっては、建物の価値下落分が土地の価値上昇分に吸収され、全体として購入時よりも高い査定額がつくこともあります。

なお、築古の物件の売却を希望している方は、こちらでご紹介している記事も参考にしてみてください。築古物件を有利に売るためのポイントをまとめています。

なぜ売れない?築古の中古マンションを売却するためのコツ
築古物件の売却では価格の計算方法が変わる?

3.共用施設

対象物件がマンションの場合、共用施設の充実ぶりも査定額に反映されます。たとえば24時間いつでもゴミ出しができる設備を設置していたり、宅配ロッカーを設けていたりするマンションは、そうではないマンションに比べ、査定額が高くなる可能性があります。
また、ゲストルームや十分な駐車場の有無、防犯カメラの設置状態なども査定額を左右します。

4.陽当たり

南向きの部屋は陽当たりが良いので、他の方角を向いた部屋に比べ、査定額は高くなる傾向があります。ただしたとえ南向きの部屋であっても、目の前に高い建物がある場合には陽当たりが制限されるため、査定のマイナス要因になることもあります。

5.階数

マンションの場合、一般に階上になればなるほど、査定額が高くなる傾向があります。部屋からの眺望の良さに加え、階下よりも日差しを遮る要素が少なくなるからです。「階数が高い角部屋」は、特に査定額が高くなるでしょう。

6.広さや間取り

広ければ広いほど査定が有利になるという保証はありませんが、一般的には、ファミリー層でも無理なく入居できる広さを持った物件・間取りであれば、査定額は高くなるでしょう。

ただし広めの物件は、地域の需要により買主がつきにくいこともあるため、かえってワンルームのほうが満足度の高い査定になることもあります。

7.交通の利便性

駅までのアクセス状況はもちろんのこと、ほかにも、最寄り駅に特急や急行が停まるかどうか、ターミナルや空港へのアクセスが良いかどうか、路線バスの運行が充実しているかどうか等、様々な交通要因が物件の査定額に影響を与えます。

8.近隣の環境

スーパーや病院、ドラッグストアなどの実用的な設備が近隣にあるかどうかに加え、公園や図書館の有無、自然環境、治安の良さなど、近隣の総合的な環境条件が物件の査定額を左右することもあります。

計算方法の種類

不動産の査定計算方法には、主に「原価法」「収益還元法」「取引事例法」の3種類があります。それぞれの特徴について確認しておきましょう。

原価法

対象不動産の再調達原価をベースに、査定額を算出する方法。主に、戸建ての建物部分を査定する際に用いられています。計算式は次のようになります。

積算価格(査定額)= 再調達原価 - 減価修正

再調達原価とは

再調達原価とは、「もし同じ不動産を再取得するならば、いくらかかるか」という価格のこと。建物の再調達原価については、実際に建物を建てるために必要なコストを足し算する「直接法」、および類似の建物のコストを参考にする「間接法」のいずれかの方法で算出します。

土地の再調達原価については、土地の造成費用等から算出する方法や、後述する取引事例法で算出します。

減価修正とは

減価修正とは、対象不動産の老朽化(物理的要因)や設備機能の低下(機能的要因)、近隣地域の衰退(経済的要因)などの影響により調整される金額のこと。再調達原価から減価修正が差し引かれる形で、対象不動産の査定額が決まります。

収益還元法

対象の不動産が将来生み出すであろう収益を予測し、それをベースに査定額を算出する方法。主に、投資用物件を査定する際に用いられています。

収益還元法には、直接還元法とDCF還元法の2種類があります。

直接還元法

投資用物件などが生む年間の純利益(家賃収入-維持管理コスト)を還元利回り(対象不動産の適正な利回り)で割ることで、現在の査定額を算出します。

DCF還元法

対象不動産の保有期間中に得られると予想される純利益、および、対象不動産を売却する際の予想価格を基に、現在の査定額を算出します。

取引事例法

対象不動産と条件の近い不動産の売却履歴を参考に、査定額を算出する方法。主に、土地や住居用マンションを査定する際に用いられています。取引事例法による査定額算出法は、主に次の3種類。

レインズを活用して査定額を算出

国土交通省の関連機関が運営するレインズマーケットインフォメーションの不動産情報を基に、対象不動産の査定額を推定。対象不動産特有の事情や地域要因などを加味し、最終的な査定額を算出します。

自社(不動産会社)の取引履歴を参考に査定額を算出

不動産会社が過去に手がけた取引履歴の中から、対象不動産に条件の近い履歴を抽出。抽出した情報に対象不動産の個別要因を加味し、最終的な査定額を算出します。

その他の公的な数値を参考に査定額を算出

公示地価や基準価格、路線価などの公的な数値をベースにしつつ、対象不動産の個別要因を加味したうえで最終的な査定額を算出します。

また、査定には対象の不動産の状態を考慮した修正・補正が含まれます。
対象に何らかの特殊な事情がある場合は「事情補正」、過去に極端な価格の上下があった場合は「時点修正」と呼ばれるものが行われます。

査定価格と売却価格は一致しない

勘違いしがちですが、マンションの売却査定額は、かならずしも実際に売れる価格とは限りません。以下では、不動産査定価格と実際の売却価格に関連し、様々な側面から理解を深めていきたいと思います。

不動産査定とは

不動産査定とは、対象となる不動産の「売れそうな価格」を推算してもらうことです。推算するのは不動産事情に詳しい専門家(不動産会社の社員など)。よって希望的観測的な価格ではなく、現実的な価格が示されることがほとんどです。
都心部においてマンションの評価額を決める要素は、建物自体よりも土地。建物の評価額が低下していたとしても、逆に土地の評価額が上昇してきたことから、結果として買値よりも売値のほうが高くなるという事例は、枚挙にいとまがありません。

例えば中古車などの査定とは異なり、一般に、不動産の買主は査定を行った不動産会社ではありません(中古車などは査定を行った業者が買い取ります)。よって事前の査定額と実際に売れる価格との間には、差異が生じることが多くあります。査定額より高く売れることもあれば、査定額より安く売れることもあることを理解しておきましょう。

査定価格は、あくまでも「たぶんこのくらいの値段で買主が現れるだろう」という予測です。実際にその値段で買主が現れるかどうかは、フタを開けて見なければ分かりません。
中には、「複数の不動産会社に査定してもらって、もっとも高い査定額を出してくれた不動産会社にお願いする」という人もいるようですが、これは最善の判断とは限りません。契約する不動産会社を決めるときには、「高額査定」ではなく「査定の根拠」を重視すべきでしょう。

査定の「価格」よりも「根拠」が大事

高く売れるはずの不動産に対して安めの査定をする不動産会社は問題ですが、反対に、安いはずの不動産に対して高めの査定をする不動産会社も問題です。不動産の売主は、不動産会社が算出する査定額を参考程度と考えておくべき。査定額よりも、むしろ査定の根拠に関心を持ったほうが良いでしょう。
どの不動産会社が査定するのであれ、算出される査定額には根拠があります。相場よりも安め、または高めの査定額を示された場合には、何がマイナス要素になったのか、何がプラス要素になったのかを明確に示してもらうことが重要です。査定額の根拠が細かくて具体的であるほど、その不動産会社が信頼できると考えていいでしょう。

不動産の価格相場の調べ方

不動産の売却相場については、自分でも調べることができます。専門家ほどの詳細な計算はできませんが、対象の不動産について、おおよその相場の目安を知ったうえで不動産会社に相談したほうが良いでしょう。自分で不動産の相場を知る方法には、主に次の3つがあります。

レインズマーケットインフォメーション

国土交通大臣指定の不動産流通機構が公表している不動産情報サイト。直近1年間で売買された不動産の情報を検索することができます。
レインズマーケットインフォメーション

土地総合情報システム

国土交通省が運営している不動産情報システム。地価公示・都道府県地価調査などの情報を取得することができます。
土地総合情報システム

不動産会社の物件情報

不動産会社が運営している情報サイトを確認すれば、近隣の似たような不動産の売却価格をチェックすることができます。

今回のまとめ

以上、中古マンションの売却査定に関し、知っておくべき情報を網羅的に解説しました。マンション査定の基本的なイメージができたでしょうか?

改めて大事なポイントを確認しておきましょう。

  1. 机上(ネット)査定より訪問(現地)査定のほうが精度は高い
    データ等だけで査定する机上査定に比べると、実際の物件の劣化状況や周辺環境などを加味する訪問査定のほうが、精度の高い結果を得られます。
  2. 査定額を左右するポイントは様々
    物件そのものの状況だけではなく、駅からのアクセス状況や周辺環境など、査定額に影響を与える要素はたくさんあります。

不動産会社にマンションの査定を依頼する場合には、特に上記の2点に気を付けることがおすすめです。

なお、Myアセットでは、無料でマンションの査定を行っています。ご希望のある方は、気軽に当社までお問い合わせください。