不動産投資の基礎

物件概要書の見方は?不動産投資で活用するポイントを解説

2022年07月22日

物件概要書は、売買や賃貸など取引の対象となる不動産の情報が記載されており、これを正しく読み取って物件情報を理解することは、不動産投資を成功させるポイントの一つであるといえます。物件概要書に何が記載されているかを確認していきましょう。

物件概要書とは

物件概要書とは、物件(土地・建物)に関する基本的な情報をわかりやすくまとめたものです。「物件案内書」や「物件資料」と呼ばれることもあります。
法律で定められている書類ではないため記載事項や形式は自由ですが、一般的に記載されているものは、住所や価格、地積・面積、利回り、建築の構造などです。
不動産情報サイトでも、物件概要書が掲載されているものがあるため、特に意識せずに目にしたことがある人も多いかもしれません。

物件概要書は、不動産会社に投資用不動産の購入検討の意思を伝えるともらうことができます。これを用いて売主と買主が物件情報を共有し、取引条件の交渉や合意を行うのです。
多くの場合は不動産会社が作成して買い手に提示しますが、売主自ら作成するケースもあります。

また、投資用不動産を購入した際に手に入れた物件概要書は、当該不動産を売却することになった際にも利用可能です。自分自身が物件の基本情報や活用方法などを確認するための資料になります。

重要事項説明書との違い

不動産取引時に交わされる書類として取引物件に関する契約上重要な事項が記載された「重要事項説明書」がありますが、物件概要書とは別物です。

契約の前には、宅地建物取引士が「重要事項説明書」を交付し、資格証を提示したうえで、「重要事項説明」を行うことが義務付けられています。不動産の売買・貸借・委託契約を締結する判断に関わる、契約上重要な事項を説明するものです。
重要事項説明書は宅地建物取引業法で定められているので、物件概要書とは異なり、省略することはできません。

重要事項説明について詳しくはこちら
重要事項説明で注意するべきポイントはこちら

物件概要書の記載項目

不動産投資において物件概要書を活用するにあたって、まずは記載されている情報がどういったものなのか把握しておきましょう。

基本的内容

物件概要書には、基本的な情報として、売出価格、利回り、所在地や交通アクセスが記載されています。

売出価格

価格は消費税込みで記載されているケースがほとんどです。もし記載がなければ、念のため税込・税抜を確認しましょう。
なお、土地のみの売買には消費税がかかりません。

利回り

価格に対してどれだけの利益が出るのかの記載です。
満室時を想定した表面利回り(年間想定家賃収入÷購入価格)が記載されているケースが多く見られます。

所在地

所在地は、「地番」または「住居表示」で記載されます。

「地番」とは、登記簿上に記載されている土地の番号。一方の「住居表示」は日常生活における所在地で、法の定める方法により道路や街区に合理的な番号を振っていったものです。地番と住居表示は一致しません。

交通アクセス

実測値ではなく、徒歩1分は80メートル、車1分は400メートルで、最寄り駅やバス停などからの所要時間が計算されています。
所要時間は、実際に歩いて確認してみるとよいでしょう。「駅から徒歩5分」と記載されていても、信号が多ければさらに時間がかかるかもしれません。

土地に関する内容

土地の面積・地目や接道状況、法令上の制限など、土地に関する情報が記載されます。

土地の面積

㎡(平方メートル・平米)で記載されているのが一般的ですが、坪の単位で表記されていることもあります。
坪表記の場合、1坪は約3.3平方メートルです。

地目

宅地・田・山林など、利用状況によって区分した登記簿上の地目です。同じ広さの土地でも、地目によって固定資産税の評価額が変わります。

地目が「田」「畑」の農地に住居を建築しようとすると、「宅地」への変更手続きが必要です。既に建物が建っている場合でも地目が「田」や「畑」であれば宅地への変更が必要ですのでご注意ください。

接道状況

道路の種類(国道・県道など)や道路の幅員、敷地に接している方位などが記載されます。

都市計画

都市計画区域についての情報が記載されています。「市街化区域」と「市街化調整区域」があり、都市計画法によって都道府県知事や国土交通大臣から指定されています。

「市街化区域」とは、およそ10年以内に市街として整備を図る地域です。商業や住民生活が行われる地域であり、建物や住宅が積極的に建てられ、インフラも優先的に整備されます。

一方「市街化調整区域」は、農地や緑地など自然環境の保全が優先され、新たに建物を建てることが難しいエリアです。既存の住宅を増改築するケースでも、基本的には、自治体の許可が必要になります。

用途地域

都市計画によって、建築できる建物種類・規模・用途が制限されたものが「用途区域」です。
住居系・商業系・工業系に大きく分けられ、以下のように13種類に分類されています。

  • 第一種低層住居専用地域:低層住宅のための地域。
  • 第ニ種低層住居専用地域:主に低層住宅のための地域。
  • 田園住居地域:農業の利便の増進を図りつつ、低層住宅の環境を守るための地域。
  • 第一種中高層住居専用地域:中高層住宅のための地域。
  • 第二種中高層住居専用地域:主に中高層住宅のための地域。
  • 第一種住居地域:住居の環境を保護するための地域。
  • 第二種住居地域:主に住居の環境を保護するための地域。
  • 準住居地域:自動車関連施設などと調和して、住宅も立地する地域。
  • 近隣商業地域:近隣の住民が日用品の買い物などをするための地域。住宅や店舗、小規模な工場も建築可能。
  • 商業地域:百貨店や映画館が集まる、主に商業のための地域。住宅や小規模の工場も建築可能。
  • 準工業地域:主に軽工業の工場や、サービス施設等が立地する地域。
  • 工業地域:主に工業のための地域。住居や店舗は建築可能。
  • 工業専用地域:工業のための地域。

建ぺい率・容積率

建ぺい率とは、土地に対して建物の面積がどれくらいを占めているかという比率。
容積率は、建物内の床面積の合計について、土地の面積に対する比率を計算したものです。

建ぺい率は、以下の計算式で算出されます。

建ぺい率 = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100

「建築面積」とは、建物を真上から見下ろした時の面積。2階建ての建物で1階部分と2階部分とで建築面積が異なる場合、広い方の面積を建築面積として使用します。

容積率の計算式はこちらです。

延べ床面積(※各階の床面積の総合計) ÷ 敷地面積 × 100

したがって、階が多い高層建築物であれば床面積の合計が大きくなるので、容積率が高くなります。

建物に関する内容

建物の構造・種類、延床面積、築年月、間取りなど、建物自体に関する情報です。

建物の構造は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など。建物の種類としては、居宅、共同住宅、寮などが記載されています。
登記簿謄本と建物の使用方法が異なっていないかを確認しましょう。

物件概要書のチェックポイント

投資用物件で利益を出すには、物件が投資に適しているかを見極める必要があります。物件概要書の記載内容において、特に注意が必要なのは以下の3点です。

再建築不可物件ではないか

再建築不可物件とは、建物を解体して更地にした後、新たに建物を建てることができない状態の物件・土地のことです。建築された当時は問題がなかったものの、法律の変化によって基準を満たさなくなってしまった建物がこれに該当します。

建物に一定の規模以上の増改築を行う場合、建築基準法に基づき、建築主は必要な図面や資料を添えて役所や民間の検査機関に申請を行って「安全基準・法律・条例に適合しているのか」という建築確認を受けることになります。再建築不可物件では、建築確認が必要な増改築を行えません。

例えば、現在の建築基準法では、都市計画区域・準都市計画区域内において「接道義務」というものがあり、横幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していない土地には、建物を建てることができません(※)。こうした土地に建築されている中古物件を購入すると再建築が不可能であるとともに大規模なリフォームを行えないので、購入を検討している物件が該当しないかどうか確認する必要があるのです。

※土地を後退させて道路の幅員を広げる(セットバック)・隣地を購入するなどの方法で、接道義務の基準を満たすことができる場合もあります。

違法建築物件(法的瑕疵物件)ではないか

違法建築物件とは、法や条例に違反している建築物のことです。
違法建築物件を売買すること自体は可能ですが、物件購入時にローンが組めない・行政による是正措置に従う必要が出てくるなどの問題が生じる可能性があります。

新築時には建築確認が取れているものであっても、増改築を行った結果として定められた建ぺい率や容積率を超えているのであれば、それは違法建築物件です。また、当初は住居として使用する予定だった物件でありながら、勝手に用途を変更し店舗にしているといった場合も、違法建築物件に該当します。

さらに、新耐震基準が適用された昭和56年6月1日以降に建築されたにも関わらずそれに適合していない建築物や、スプリンクラーなどが整備されていないといった防災設備の古さから消防法令を違反している物件などがある可能性も。
これらのように、違法建築への該当には様々な原因が考えられます。

利回りや積算価格から収益性を見込めるか

物件概要書から、収益性を検討する場合には、利回りや積算価格を確認する必要があります。

物件概要書に記載されている利回りは、購入価格のみをコストとして計算する「表面利回り」のケースがほとんどで、物件を運用していくうえで必要な諸経費が考慮されていません。諸経費は年度によって変動する可能性が高く、仲介手数料や司法書士報酬など購入時にかかる費用についても不確定なため、物件概要書作成時点では算定できないからです。

さらに、その表面利回りは、満室想定で計算されている場合も多くあります。
現実的な投資効果を計算するためには、部屋に借り手がつく割合や諸経費を考慮して「実質利回り」を計算する必要があります。

また、現在の「土地の評価額」と「建物の評価額」を合算した「積算価格」が物件の価格を上回っていると、収益性のある物件とみなされ、金融機関の融資の審査に有利です。資金計画を立てるためにも、積算価格を計算しておくことをおすすめします。

今回のまとめ

物件概要書とは、物件に関する基本的な情報を、簡潔にまとめたものです。重要事項説明書とは異なるものなので、混同しないようにご注意ください。

売出価格や所在地などといった基本的な情報に加え、土地の情報である面積・地目や接道状況など、そして建物自体の構造・種類・延床面積などについて記載されたものが多く見られます。
ただし、法律で内容が決まっているものではないので、記載事項や形式は場合によって異なります。

投資用物件の購入を検討する際は、違法建築物件ではないか、収益性を見込めるかなどによって不動産投資に適しているかをチェックすることが大切です。特に、再建築不可物件だと増改築に影響するため、物件の価値を高めるための工事も簡単には行えません。

物件概要書に記載されている項目を確認して記載内容を理解することで、不動産投資の物件として適しているかを見極めつつ、取引もスムーズに行えます。
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