不動産投資の基礎

投資用不動産の重要事項説明で注意するべきポイントは?

2022年02月25日

不動産売買契約を締結するにあたり、宅地建物取引士が買主に重要事項説明を実施することが義務付けられています。
今回は、不動産投資のトラブルを回避するために重要事項説明で注意するべきポイントを解説しますので、不動産投資をご検討中の方はぜひご参考ください。

重要事項説明の2つの要素

重要事項説明とは、不動産の売買・貸借・委託契約の際に不動産会社から行われる、対象物件についての説明のこと。大きく分けて「物件に関する事項」「取引条件に関する事項」という2つの要素があり、それぞれ注意すべき項目があるので、ポイントを押さえて確認しましょう。

物件に関する事項には、以下のようなものが含まれます。

  • 都市計画法・建築基準法など法令に基づく制限の概要
  • 飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況
  • 当該宅地建物が造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域内か否か

一方、取引条件に関する事項とは、下記の内容などです。

  • 代金・交換差金以外に授受される金額
  • 契約解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する事項

重要事項説明についての詳しい内容は、前回の記事をご覧ください。

物件に関する注意点

重要事項説明を受ける際には、まず契約対象の物件が間違っていないかを確かめます。
事前に知らされていた物件の属性や面積などと異なっていなければ、以下の内容に注意しましょう。

所有権以外の権利が付着していないか

物件に「抵当権(※1)」や「賃借権(※2)」が付着していると、購入後の利用が制限されてしまうかもしれません。

物件に抵当権が設定されている場合、売主がローンを完済しておらず、買主は売主の事情で物件を失うおそれがあります。抵当権によって、債権者である金融機関は買主に対して対抗できる(権利を主張できる)からです。
抵当権が抹消される予定が立っているか、不動産会社や売主に確認しましょう。

また、賃借権が付着している物件(オーナーチェンジ物件)を購入する場合は、家賃をはじめとして現入居者の条件を変更できません。自身の資金計画とズレが生じないか、チェックをおすすめします。

※1 不動産購入時に金融機関から融資を受ける場合、債権者である金融機関が購入対象の不動産を担保にしていることを示す権利。
抵当権に関する詳しい解説はこちら

※2 不動産を借りていることを示すもの。賃貸されている物件であれば、入居者がこの権利を持っていることになる。

インフラは整備されているか

契約時点で対象物件に上下水道・電力・ガスなどが整備されていないのであれば、インフラ整備の予定や費用負担についても確かめておきましょう。

近隣には上下水道などが整備されていても、購入予定地の前面道路には整備されていない可能性があります。水道管が遠い場合、引き込むための工事費用が高くなるおそれも。

また、都市ガスが供給されている地域でも、古い中古物件ではプロパンガスを使用しているケースがあります。その場合、都市ガスへの変更工事費用は、買主負担になるかもしれません。

想定している利用方法を法律で制限されていないか

購入した不動産が、法的な制限によって思い通りに利用できない場合もあります。

まず、建物が違法建築でないかの確認が重要です。違法建築であれば、行政から指導・勧告を受ける場合があるでしょう。
建築された当時の法律で合法であったならば、「既存不適格建築物」という扱いになり指導や制限などは受けませんが、取り壊した後で同じ建物を再度建てることは不可能です。

都市計画法や建築基準法による制約の把握もおすすめします。
土地には「建ぺい率」や「容積率」が定められており、それらを把握していなければ増改築の際に問題が生じるかもしれません。
また、購入予定の土地が市街化調整区域にある場合は、原則として無許可での建築は不可能です。

災害リスクを説明されたか

購入予定地の災害リスクについて、自分が納得できる内容であることを確認しましょう。
リスクを正しく把握して、水害に対して盛土をしたり、耐震性のある建物を建てるなどの策を講じることが必要です。

令和2年には、重要事項説明の対象項目として「水害リスクについての説明」が義務として追加されました。買主は、対象物件の所在地について、ハザードマップを用いた説明を受けます。

契約条件に関する注意点

重要事項として契約条件についての説明も受けます。
トラブルを防ぐために、下記の内容は特に注意することがおすすめです。

売主と所有者名義が一致しているか

売主と所有者名義が異なる場合、売主に理由を聞きましょう。
登記名義上の所有者でない売主から物件を購入した場合、登記簿上の名義人が買主への所有権移転を拒む可能性があります。

例えば、登記簿上の所有者が亡くなっていて、売主が物件を相続する旨の遺産分割協議が終了しているケース。相続を証明してもらった上で、売買契約までに売主の名義に変更するよう求めることが可能です。

ローン特約(融資特約)が定められているか

ローン特約とは、不動産投資ローンが承認されなかった場合に、買主が不動産取引契約を無条件で解除できる特約。
特約に関する「承認取得期日」「金融機関名」についてそれぞれ注意点を解説します。
ローン特約について、詳しくはこちらの記事をご参考ください。

承認取得期日

承認取得期日とは、ローン特約によって買主からの契約解除が認められる期日です。
記載していなければ、申し込んでいたローンの承認が得られなかった場合でも、「今後、別のローンが承認される可能性があるので、現時点での契約解除は認めない」と買主に主張される可能性があります。

金融機関名

融資を申し込む金融機関名を明記するのが大切です。
契約書に記載が無い場合、買主が申し込んだローンの審査が通らなかったとしても「別の金融機関でローン審査が通れば契約続行」という解釈ができます。
結果として当初の希望より金利が高いローンを組むことになる、というおそれがあるでしょう。

契約解除の条件

契約解除できる方法・期日・違約金などについては、契約の前にチェックしておきましょう。

相手方が契約履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄することで(売主は手付金の倍額を支払うことで)、契約解除が可能です。
相手方が契約履行に着手している場合は、手付解除を申し出ても違約金が発生するかもしれないので、契約解除が必要になってしまった時に備えて事前の条件確認をおすすめします。

契約不適合責任の期間

契約不適合責任とは、売買された不動産が契約で求められていた品質や性能を持っていない場合に売主が負う責任です。

民法では、基本的に買主は「不適合を知ってから1年以内」に売主に契約不適合の事実を通知することで、契約不適合責任を追及できると定められています。
ただしこの期間は、売主と買主の合意があれば変更可能です。事前に売主と話し合っていた内容があれば、それと齟齬が無いかを確かめましょう。

また、売主が宅建業者の場合、通知期間に宅地建物取引業法による制限があります。「物件引き渡しの日から2年が経過するまでに通知する」と定められていますので、これを守っているか確認することが必要です。

今回のまとめ

ここでは、投資用不動産における重要事項説明で注意すべきポイントを解説してきました。

重要事項は「物件」と「契約条件」の2種類に大別されます。
前者では所有権以外の権利やインフラ、法的制限、災害リスクについて確認しましょう。
後者では、売主と所有者の名義をはじめとして、ローン特約の条件、契約解除や契約不適合責任追及の条件をチェックしておくことが大切です。

投資用不動産の購入は、重要事項説明以外にも専門的な知識が必要な部分が多くあります。安心して投資用不動産の取引を行うために、不動産投資の実績があり信頼できる会社に相談するとよいでしょう。
不動産投資に関するご相談であれば、売買から管理委託まで承っているMyアセットへお問い合わせください。