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「還元利回り」とは?投資用不動産の購入で確認するべき?

2022年07月22日

不動産投資の用語の一つ「還元利回り」について、その意味や不動産投資との関係について解説します。不動産投資をお考えの方はぜひご参考にしてください。

還元利回りとは

還元利回りは「キャップレート」や「投資家期待利回り」ともいわれ、不動産鑑定士が不動産価格を評価するために用いる数値の一つです。
不動産投資では、投資価値の評価基準として、得られる収益に対して価格が適切かどうかを判断するために使われます。

この還元利回りは、不動産鑑定の方法である「収益還元法」の「直接還元法」で使用される数値です。還元利回りがどのような意味を持つのかご理解いただくために、ここからは不動産鑑定の方法について簡単にご説明いたします。

収益還元法とは?

「収益還元法」とは、投資用不動産から得られる収益の総計を元にして不動産の現在価値を評価する方法で、これによって求められる価格を「収益価格」といいます。

収益価格を求める方法には、主に不動産の証券化に使用される「DCF法」と、「直接還元法」があり、還元利回りが関係するのは直接還元法です。

直接還元法・DCF法はどう違う?

直接還元法とDCF法は、不動産から得られる利益の総計を算定した後、どのように不動産価格を決めるかという点で異なります。

直接還元法とは、不動産投資の不動産評価において主に利用される方法です。
一定期間の不動産から得られる純利益(収益-経費)に、一定の還元率である「還元利回り」を除して計算します。DCF法より精度は劣るものの、計算がシンプルなのが特徴です。

一方のDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)は、現在の価格を将来得られる利益と売却時の予想価格から評価する方法。この計算に用いられる数値を「割引率」といいます。不動産の価値は時間によって変化するという考えのもと、不動産の保有期間で得る純利益と売却時の予想価格を現在価値に割り戻し、合計するときに使用する比率です。

割引率は、還元利回りと使われ方や意味が似ていますが、直接還元法・DCF法どちらで用いるのかが違い、収益の変動リスクの考え方も異なります。別物であるため、混同しないようにしましょう。

「原価法」「取引事例比較法」とは?

不動産鑑定の方法は、上記「収益還元法」のほか、残り2種類として「原価法」「取引事例比較法」というものがあります。

原価法

原価法とは、鑑定時の不動産を再調達するために必要になる原価を前提に、年月による価値低下を考慮して求める方法。そのため、再調達原価を求めることができない場合は使用できません。
ちなみに、原価法で算出された価格は「積算価格」と呼ばれます。

取引事例比較法

取引事例比較法は、対象不動産と類似した特徴や条件の不動産の取引事例から類推して、不動産価格を評価する方法です。
対象不動産に似た条件の取引事例を、特殊な取引事情や価格水準の上下を考慮した上で参考にするので、説得力のある価格を評価することができます。

還元利回りを算定する方法

不動産投資で用いられる還元利回りの求め方には複数あり、地方や用途地域に応じて適切な算定が必要です。ここでは、国土交通省の資料で例として挙げられている4つの方法をご紹介します。

参考:国土交通省|不動産鑑定評価基準
https://www.mlit.go.jp/common/001204083.pdf

類似の不動産の取引事例を用いる方法

対象不動産と類似した不動産の取引事例から利回りを計算する方法です。
取引事例から地域ごとの基準値を導き、取引時の事情や地域性・個別性を考慮して補正していきます。

借入金・自己資金の構成割合を用いる方法

不動産の購入を資金調達面から考え、自己資金と借入金それぞれの割合を計算し、加重平均する方法です。資金調達能力に注目しているので、金融市場の状況を反映させることに向いています。

土地価格・建物価格の構成割合を用いる方法

土地と建物、それぞれの還元利回りを用いる計算方法です。価格の構成割合を算出し、加重平均します。
土地・建物を合わせた不動産を購入する際、両者で利回りが異なる場合に有効です。

割引率との関係を用いる方法

不動産鑑定方法の一つである「DCF法」に用いる「割引率」という数値を使った計算方法です。

他の「利回り」用語との違い

還元利回りと間違えやすい言葉として「最終還元利回り」「表面利回り」「実質利回り」があります。これらの意味を確認し、還元利回りとの違いを明確にしておきましょう。

最終還元利回り

最終還元利回りは、対象不動産の売却年度の還元利回りを指します。将来の売却価格を算定するために使用する、「未来の還元利回り」です。
不動産投資前の段階で投資の不確実性を考慮し、還元利回りに対してリスク評価時の将来の伸びしろが加算されます。

使用されるのは、収益還元法のDCF法の計算内です。

表面利回り・実質利回り

表面利回りは、運用にかかる諸経費を考慮せずに計算する不動産投資の利回りのことです。「年間賃料収入÷不動産価格×100」で算出され、不動産価格に対して家賃収入をどのくらい得られるかの大まかな指標になります。

実質利回りは、不動産購入の費用だけでなく、運用時に必要な修繕費や管理委託費、固定資産税などの運用コストを差し引いた利益で計算した利回りのこと。NOI利回りともいわれています。
「(年間賃料収入-維持管理費等)÷(不動産価格+取得費用)×100」で算出可能で、より現実に近い収支計算を行う際に用いられます。

【利回り・ROI・CCR】不動産投資の収支計算に関する用語解説はこちら

今回のまとめ

還元利回りは、不動産鑑定士が不動産価格を評価する際、収益還元法の中の一つである直接還元法で使用される数値です。不動産投資では、予想される利益から現在価格を求め、収益性分析の結果として妥当な価格かどうかを判断する基準として使えます。

還元利回りの算定方法は複数あり、対象不動産の地域性や個別性を考慮して適切なものを選ぶことが必要です。

また、還元利回りと似ている言葉に「最終還元利回り」「表面利回り」「実質利回り」があるので、混同しないように注意しましょう。それぞれの違いを理解することで、適切な指標で不動産を評価できるようになります。

投資用不動産の価値を評価する方法はいくつもあり、「利回り」という言葉も目的によって複数の種類に分かれます。初心者の方にとっては複雑で、物件選びに対してハードルが高いと感じられる方もいらっしゃるでしょう。
そこでおすすめしたいのが不動産会社に相談すること。特に投資用不動産選びや収益性分析に多くの実績がある不動産会社がおすすめです。

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