ローンと一括購入ではどちらが有利?一括購入のメリットと注意点
2021年2月19日
投資用マンションを購入するとき、ほとんどの方は不動産投資ローン利用を検討するでしょう。その一方で、中にはローンを利用する必要がない方、もしくはローンを利用せずマンションを一括購入したい方もいらっしゃるかと思います。
ローンを組むか一括購入にするか、どちらを選ぶこともできる方にとっては悩みどころです。ここでは、マンションの一括購入のメリット、ローンと一括購入の比較、一括購入の注意点などについて解説いたします。
一括購入の主なメリットとは?
まずは、一括購入の主なメリットを見てみましょう。
ローン金利や各種の経費がかからない
一括購入の最大のメリットと言っても良いのが、ローンに伴う経費がかからず、総支払額を大幅に抑えられることです。
ローンを利用しないということは、当然ながら利息を支払う必要がありませんし、融資手数料やローン保証料、団体信用生命保険料などローンにともなって生じる各種の経費もかかりません。
金融機関の審査が不要なので早くマンションを取得できる
ローンを利用する場合、金融機関の審査を受けなければなりません。審査にかかる日数は、長ければ数週間ほどになることもあります。それに対して一括購入の場合、金融機関の審査を受ける必要はありません。売主と売買契約を結んでお金を全額支払えば、ローン審査を待つのに比べて圧倒的に早くマンションを購入することができます。
また、初めに申し込んだ購入希望者がローンの審査中の場合、2番目の購入希望者が一括購入であれば後者が購入権を得られることがあります。申込みが遅れたとしても確実にマンションを取得したいならば、一括購入のほうが有利になるでしょう。
長期間に渡る返済をしなくてよい
ローンの場合には、25年や35年などの長期間にわたって返済を続ける必要があり、不動産投資の場合は物件からの収入をこの返済に充てて運用することがほとんどです。一括購入の場合は返済するローンが存在しないため、物件からの収入をそのまま受け取ることができます。
仮に職を失う・大怪我をするなどして仕事ができないといったアクシデントが発生しても、不動産からの収入を生活費に充てられることになります。これは大きなメリットと言えるでしょう。
一括購入の流れと必要な費用 ~ローンと比較しながら~
マンションを一括購入するときの流れ、および、一括購入のときに発生する諸経費について解説します。ローンを組んだときとの違いも比較してみましょう。
一括購入をするときの具体的な流れ
一括購入するときの流れを大まかに言えば、「購入申込」「売買契約」「支払い」「引き渡し」の4つ。ローンを組んで購入する際に必要な審査やローン契約、ローンにかかわる登記などが不要な分、非常にシンプルです。具体的に流れを見てみましょう。
1.購入申込
欲しいマンションが決まったら、不動産会社などを通じて物件の購入申込を行います。
ローンを利用する場合はこの段階から金融機関の審査が始まりますが、一括購入の場合には不要です。購入申込を行った時点で、購入権を得られる可能性は非常に高くなっています。
2.売買契約と手付金の支払い
購入申込の後、売主と買主の双方で、あらためて売買条件(売買価格、引き渡しの時期、後述の「手付金」の金額など)を確認。双方が条件に合意すれば、売買契約の締結となります。売買契約を締結する際、買主は売主に対して手付金(売買価格の一部)を支払います。手付金の金額の相場は、売買価格の5~10%程度と考えてください。
売買契約を締結するときには、売買の窓口となる不動産会社から買主に対し、必ず「重要事項説明書」に基づく説明が行われることも覚えておきましょう。
3.決済(残金の支払い)
買主、売主、売買の窓口担当(不動産会社など)、司法書士の4者が集まって、決済(残金の支払い)を行います。売買価格から手付金を差し引いたものが残金です。
売買契約から決済までに要する期間は、一括購入の場合がおおむね1~2週間。ローンを利用する場合がおおむね1~2ヶ月。手続き完了までのスピードに大きな差があります。
4.物件の引き渡し
決済が完了すると同時に、売主から買主に対してマンションの引き渡しが行われます。具体的には、売主から買主にマンションの登記識別情報(権利証)と鍵の受け渡し(※)です。
決済と引き渡しが問題なく行われたことを確認した司法書士は、速やかに登記所へ行って登記手続きを行います。
※以下のような場合など、鍵を受け渡さないことも多くあります。
・オーナーチェンジの場合
・入居者がすでに居住している場合・管理会社が持っている場合
一括購入するときに必要な費用
マンションを一括購入するときには、物件の売買代金のほかにも諸経費が発生します。ローンを利用するときに比べれば諸経費の種類や金額は少なめですが、以下のような費用がかかることを覚えておきましょう。
- マンションの物件代金
通常は「手付金+残金」となります。 - 仲介手数料
売買を仲介した窓口(不動産会社など)に対して支払う手数料です。 - 収入印紙代
売買契約書に添付する収入印紙には印紙税がかかります。税額は取引金額に応じて決まります。契約書は売主と買主それぞれに1通作成するため、各自の契約書に貼る印紙税を負担するのが慣例です。
ローンを借りて購入する場合には、「不動産売買契約書」のほかに「金銭消費貸借契約書(ローン契約書)」にも収入印紙を貼るため印紙税がかかりますが、一括購入の場合には基本的には契約書1つ分で済みます。 - 登記費用
マンションを購入する際には所有権が移るため、登記を行います。登記には種類がありますが、中古マンションを一括購入した場合は「所有権移転登記」が必要です。その際にかかる登録免許税や司法書士への報酬のことを、まとめて登記費用と呼んでいます。 - 不動産取得税
マンションを購入した際、都道府県に対して支払う税金です。 - 火災保険料(任意)
火災保険への加入は義務ではありませんが、万が一に備えて保険をかけておくことをおすすめします。加入する場合には、損保会社に対して保険料を支払います。
ほかにも、状況に応じて「固定資産税・都市計画税」「管理費」「修繕積立金」などを日割り計算して必要な金額だけ売主に支払うことがあり、これを「精算金」と呼びます。
例えば固定資産税や都市計画税は毎年1月1日(※)時点での所有者に対して課税されるため、基本的には売主が1年分の税金を支払うことになります。そこで慣例的にではありますが、売却した日~12月31日までの分を日割りで計算し、買主側が「精算金」として負担することがあるのです。
ちなみにこの日割りでの精算は法律上で決められた手続きではありませんので、不動産会社に確認をすることをおすすめします。
※固定資産税の起算日は地域によって異なる場合があります。4月1日を起算日とする場合もあり、その場合は売却した日~3月31日の分を日割り計算し、買主が負担することになります。
一括購入するときの主な注意点
マンションを一括購入するときの主な注意点についても確認しておきましょう。
投資用物件としてのレバレッジ効果は得られない
投資用にマンションを一括購入する場合、手持ち資金を超える金額のマンションを買うことはできません。
不動産投資ではローンを利用して手持ちの資金より高額な物件を購入して運用することで、手持ちだけの資金で投資を行うよりも利回りを高める方法があります。いわゆる「レバレッジ効果」です。手持ちの資金のみで投資用物件を購入するとレバレッジ効果を得られなくなるということは、事前に理解しておきましょう。
手持ちの現金が大幅に減る
マンションの購入には非常に大きな金額が動きます。それぞれの経済事情によって感覚が異なるのはもちろんですが、手持ちの貯蓄が大幅に減ることで不安を感じる方も多いでしょう。
一括購入を検討する場合には、将来の生活費やアクシデントも想定し、計画的かつ慎重に予算計画を練るべきです。
火災保険への加入を忘れないようにする
ほとんどの金融機関では、住宅ローンを組むための条件として、火災保険への加入を設定しています。返済中に火災や自然災害などが発生した場合もローンを返済してもらうためです。一括購入の場合にはそういった理由では火災保険への加入を促されないことから、間に立つ不動産会社が加入を勧めてくれない場合があると、買主は火災保険への加入を忘れがちになります。
ローンであろうと一括購入であろうと、大切な資産に対して保険をかけておくことの重要性は変わりません。一括購入の際は義務にはならないとはいえ、火災保険への加入は忘れずに検討しておきましょう。
税務署の調査が入ることがある
マンションを一括購入した際、税務署から問い合わせが入ることがあります。内容は「高額な費用をどのように調達したのか」「贈与で資金を調達した場合、贈与税は納めたのか」といったところ。要するに、大きなお金の出どころに問題がないことを確認するための問い合わせです。
このような問い合わせに対して買主はきちんと説明できるよう、関係書類(※)を準備しておくようにしましょう。正当な手続きを踏んでマンションを購入しているならば、何も焦る必要はありません。
※自己資金であるための証拠としての「預金通帳」や、不動産を売却して資金を賄った場合はそれについて申告した税務署名がすぐに確認できる書類など。
今回のまとめ
マンションを一括購入することのメリット、流れ、注意点などについて詳しくご紹介しました。ポイントを簡単に振り返ってみましょう。
- ローンよりも一括購入のほうが、支払い総額は低い。売買手続きのスピードも一括購入のほうが圧倒的に早い。
- 一括購入の手続きは不動産投資ローンを借りて購入するのに比べてシンプル。基本的には「購入申込→契約→決済・引き渡し」のみ。
- レバレッジ効果がないことや手持ちの現金が減ることなど、一括購入にはいくつかの注意点がある。
ローンを組む場合に比べると、一括購入のほうが有利な側面があることは事実です。ただし、同時にいくつかの注意点もあるので、一括購入を検討する際には不動産会社とよく相談しながら話を進めましょう。
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