管理・運用

2022年4月登録開始の「マンション管理適正評価制度」とは?

2022年04月22日

2022年4月から、「マンション管理適正評価制度」によって分譲マンションの管理状況が定量的に評価されることになりました。マンションの管理状況は資産価値に影響を与えるので、評価結果は中古マンションを購入を検討する際の判断材料になります。
「マンション管理適正評価制度」の概要やメリットを詳しく確認していきましょう。

マンション管理適正評価制度とは

「マンション管理適正評価制度」は、一般社団法人マンション管理業協会による、マンション管理の評価制度です。

分譲マンションの管理状況を数値化して定期的に評価する仕組みで、マンション管理の適正化促進と市場への情報開示を目的に創設されました。この制度では、管理組合が加入する損害保険料について割引ができるような、登録へのインセンティブも検討されています。評価制度への登録は4月から開始しますが、インセンティブを含む本格的稼働は10月からです。

老朽化したマンションの建て替えが必要になる中、住民の高齢化を始めとする様々な原因でマンションの管理組合が機能していないケースがあります。適切な修繕がされていないマンションは、資産価値の低下はもちろん、階段や柵が壊れて住民が怪我を負ってしまうといった危険性も。マンション管理の適正化は喫緊の課題なのです。

制度活用のメリット

ここからは、マンション管理適正制度にはどのようなメリットがあるのか解説します。

管理への意識向上に繋がる

評価で得られた点数から必要な対応が明確になり、管理への関心がなかった区分所有者の意識を高められるでしょう。管理組合としても、評価結果を今後の管理方針に反映させられ、現状に即した効果的な管理計画を立案できるというメリットがあります。

また、評価は1年ごとに更新されるため、継続して良い評価を得られるように管理組合は継続的な改善に取り組むことになります。長期にわたって良好な管理状態を維持すればマンションの資産価値が向上し、売却や賃貸に出して購入者や入居者を募集する際にも有利に働くでしょう。不動産投資の観点からも、投資対象のマンションがしっかり管理されていることは重要なポイントです。

市場へのアピールになる

評価された管理体制は、専用サイトである「マンション管理適正評価サイト」を通じて発信されます。第三者からの評価を公表することによって、マンションの管理が行き届いていることを市場にアピールできるため、中古マンションとしての資産価値が高まるでしょう。

また、評価結果は不動産関連サイト(ポータルサイト)への掲載も検討されています。これにより、マンションを購入しようと考えている人が、価格や住所などの基本情報と同時に管理状態も把握できるようになることが狙いです。

評価の項目や基準

「マンション管理適正評価制度」では、分譲マンションの管理状態を30項目・100点満点で採点します。項目は5つのカテゴリに分けられており、各カテゴリで獲得した合計点数によって、6段階にランク付けされる形式です。

「マンションの事故歴」や「屋上やベランダの防水工事実績」など、採点はされず調査・登録のみ行われる項目もありますが、ここでは採点される項目に絞って詳しく解説していきます。

管理組合体制関連事項

管理組合体制関連事項とは、マンション管理におけるガバナンスを評価する20点満点の項目です。

管理組合の監事や理事長といった管理者選任についての規定や「総会が年一回以上実施され、議事録が直近5年分の保管がされているか」といった総会に関する項目、管理規約の整備・運用状況などがチェックされます。

組合会計収支関連事項

管理費会計や修繕積立金会計の収支財務における健全性や、適正に会計管理がされているかを評価する40点満点の項目です。

管理費については、滞納住戸数(金額)や滞納期間、滞納に対する法的措置の有無などによって、獲得できる点数が変わってきます。
修繕積立金については、

  • 積み立ての方式
  • 計画期間の推定工事費を、修繕積立金が上回っているか
  • 長期修繕計画上の年度収入通りに、管理組合の年度収入が徴収されているか

という点が評価の対象になります。

建築・設備関連事項

建物や設備の修繕・点検状況が、20点満点で評価されます。

20点のうち、法令(建築基準法・水道法・消防法・電気事業法)に基づく定期点検の実施状況の有無や、点検報告書の保管についての評価が10点分です。
残る10点分が、長期修繕計画の有無や、直近5年間の共有部分修繕などの履歴情報に関わる項目の評価によって採点されます。

耐震診断関連事項

マンションの耐震強度について10点満点で評価されます。
新耐震基準の建物であれば10点です。
建築確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前の建物は新耐震基準に準じていないため、耐震診断や改修計画の有無によって獲得できる点数が異なります。

生活関連事項

設備などの警報を発報する緊急対応の体制や、法令にもとづく消防訓練の実施状況、区分所有者及び居住者名簿の整備状況、防災対策についての項目で10点満点です。

防災対策の項目は全8項目あり、消防計画の作成や災害時の備品の備蓄、防災・災害の情報提供などの事項が含まれています。

評価・登録の流れ

「マンション管理適正評価制度」に登録する流れを解説します。

1.管理組合の総会決議

「マンション管理適正評価制度」への登録申請・情報開示について、管理組合は総会での決議が必要です。
また、総会の前に管理状態をセルフチェックすることが推奨されています。

総会で合意がとれれば、管理組合からマンション管理会社へ評価を依頼します。

2.管理状態の確認・登録申請

マンション管理適正評価制度の運営元である「一般社団法人 マンション管理業協会」指定の講習を修了した管理業務主任者・マンション管理士がマンションの管理状況を評価し、その結果のシステム登録を申請します。

3.登録完了と「マンション管理適正評価サイト」への掲載

マンション管理会社から登録料が入金されたことを確認して、マンション管理業協会が「マンション管理適正評価制度」へ評価対象マンションを登録します。

「マンション管理適正評価サイト」にマンションの管理状態が掲載され、手続きは完了です。

「管理計画認定制度」との違い

「管理計画認定制度」とは、マンションの管理計画が一定の基準を満たしている場合に、地方公共団体から認定を受けられる制度です。

「マンション管理適正評価制度」の目的が全国のマンションの管理状態をわかりやすく市場に開示することであるのに対し、「管理計画認定制度」は国により基本方針が作成され、それを元に地方公共団体がマンション管理の適正化を行うもの。
「マンション管理適正評価制度」と「管理計画認定制度」は、評価項目の整合や一括申請の対応が予定されています。

管理計画認定制度について詳しい解説はこちら

今回のまとめ

「マンション管理適正評価制度」は、分譲マンションの管理状況を数値化して、市場に情報を開示する制度です。一般社団法人マンション管理業協会により創設され、2022年4月から登録申請がスタートしました。
10月から、評価に対するインセンティブの付与を含めて本格的に稼働する予定です。

評価項目は管理組合の体制から生活に関連する内容まで5カテゴリ・30項目にわたり、それぞれ6段階で評価されます。
その結果は「マンション管理適正評価サイト」で公開され、マンション購入を検討している人に対して客観的な管理状況の情報公開が可能です。

これから不動産投資を始めるにあたって不利になる制度ではなく、物件を購入する際は「マンション管理適正評価制度」による情報を踏まえて適切に管理されている物件を選べるというメリットがあります。
また、購入後の不動産運用でも、評価結果をベースとして管理方針を決めやすくなったり、良好な管理体制をマンションの価値として市場に発信できたりという利点があるでしょう。

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