「管理計画認定制度」が開始。不動産投資への影響は?
2022年04月22日
2022年4月から、マンションの管理状況を地方公共団体が評価する「管理計画認定制度」が始まりました。この制度でマンションの管理状況が外部に分かるようになったことは、不動産の市場価値にも影響があります。
ここでは、「管理計画認定制度」について、不動産投資への影響を踏まえて説明していきますので、ぜひご参考ください。
管理計画認定制度とは
「管理計画認定制度」は、マンションが適切な規約や修繕計画などを元に管理されるよう国土交通省が定めた認定制度です。管理が適切であると判断されたマンションは、地方自治体によって認定を受けられるようになります。国としての制度開始は2022年4月ですが、各地方公共団体によって開始時期は異なります。
この制度以前にも20年ほど前から、マンションの管理に関する助言や支援などの業務を担う「マンション管理士」という資格制度がありましたが、近年ではマンション管理の問題点が目立つようになり、管理組合の方針と管理会社の損益が合わずに管理会社がマンション管理から撤退するという事例も出てきました。そういった背景を元に、マンションの管理体制が見直されているのです。
制度活用のメリット
「管理計画認定制度」を活用するメリットは、以下のような内容です。
なお、新築マンションの管理計画が評価される「予備認定」制度によって、認定されたマンションの住宅ローン(フラット35)の金利が5年間引き下げられるという特典もありますが、ここでは不動産投資に関わるポイント2点を解説します。
管理方針を明確化できる
管理者や区分所有者にとって、行政の設定した「適切な管理計画」に沿うことで管理方針が明確になり、結果的に管理水準の向上が期待できます。
また、「管理計画認定制度」ではマンション管理計画に関する書類を地方公共団体に提出することが必要になるため、これらの管理計画の適切な文書化を行う過程で、これから行うべき作業を確認したり計画の不備に気づいたりできるでしょう。
入居者からの信頼や入居率の維持に繋がる
「管理計画認定制度」では、マンション管理計画が一定の基準を満たしていることを地方公共団体が評価するため、入居者からの信頼を得て退去率を抑えられる可能性があります。
また、管理が適切であれば、物件を探している人の目にも留まりやすくなるでしょう。
認定の項目と基準
管理計画がどのように認定されるのか、確認していきましょう。
国土交通省から発表されている資料の「助言・指導・勧告を行う判断基準の目安」「管理計画認定の基準」を参考にしてわかりやすくまとめました。
参考:国土交通省|改正マンション管理適正化法・マンション建替え円滑化法について
https://www.tokyo-kanteishi.or.jp/jp/wp-content/uploads/2021/10/20211101_shiryo01.pdf
管理組合の運営
管理組合の運営について確認があります。
- マンション管理者等・監事の定めがあること
- 総会が定期的に開催されていること
これらを満たすことが、管理計画認定の基準です。
管理者が定められていない・総会が全く開催されないなど、基準を満たしていない場合には、助言・指導・勧告が行われる可能性があります。
管理規約
管理規約が作成されていることも基準の1つです。認定されるためには、管理規約に以下の項目を含むことが求められます。管理規約を作成するときは、項目に漏れがないようにしましょう。
- 緊急時等の専有部分の立入りについての定め
- 修繕等の履歴情報を保管していること
- 管理組合の財務・管理情報を提供すること
管理組合の経理
- 管理費と修繕積立金が分けられていること
- 修繕積立金から他の会計への充当がされていないこと
- 修繕積立金の滞納に対する対処が適切であること
これらの点を確認されます。マンションの経理において、修繕積立金は重要な要素であることを認識しておきましょう。
長期修繕計画の作成及び見直し等
マンション管理では、修繕積立金の積み立てを始めとする、長期修繕計画が必要です。
管理計画認定の基準として、下記の内容が確認されます。
- 長期修繕計画と修繕積立金が総会の決議を得ていること
- 長期修繕計画を最後に作成又は見直ししてから7年以上経過していないこと
- 30年以上の長期修繕計画があり、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていること
- 一時金(積立金で足りない修繕費用を補填するお金)の徴収が予定されていないこと
- 長期修繕計画で予定される修繕積立金の総額から考えて、算定された修繕積立金の平均額が低すぎないこと
- 計画期間の最終年度において、借入金が残らない計画であること
修繕積立金が積み立てられていない場合は、助言・指導・勧告を受ける可能性があります。
その他
管理に重要なものとして下記の2点についても、認定を受けるために必要です。
- 組合員名簿や居住者名簿が適切に備えられていること
- 都道府県等マンション管理適正化指針を参照して適切なものであること
認定の流れ
それでは、「管理計画認定制度」の認定手続きの流れを確認しましょう。
1.管理組合の総会決議
はじめにマンションの管理組合の総会で、管理計画認定の決議をとります。
管理組合は事務手続きが必要になるため、その労力と認定のメリットを話し合って合意することが大切です。
2.申請手続き
地方公共団体に管理計画認定の申請手続きをしますが、オンラインで行う方法と役所の窓口に直接行く方法の2通りがあります。
オンラインで申請を行う場合
マンション管理センターを通じてマンション管理士に「事前確認」という手続きを依頼することになります。
マンション管理士の事前確認で認定に問題がないと判断されると、事前確認適合通知(適合証)が届き、窓口での事務手続きを省略して申請が可能です。
窓口へ直接行く場合
窓口で行う手続きは地方公共団体によって異なる可能性があるので、各自治体に問い合わせることおすすめします。
3.認定・サイト掲載
地方公共団体で申請が受理されれば、マンション管理センターのサイトにその旨が掲載されます。
「マンション管理適正評価制度」との違い
「マンション管理適正評価制度」とは、一般社団法人マンション管理業協会がマンションの管理状態や管理組合の運営状況を評価する制度です。
この2つの制度は重なり合う項目も存在するため、評価項目の整合や一括審査の対応が予定されています。
それぞれの違いを表にまとめました。
管理計画認定制度 | マンション管理適正評価制度 | |
---|---|---|
運営 | 国・地方自治体 | 一般社団法人 マンション管理業協会 |
審査項目 | 管理組合の運営・経理 管理規約の内容 長期修繕計画など |
管理組合の体制や会計収支 建物の耐震や設備 住民の生活に関わる防災など |
更新期間 | 5年ごと | 1年ごと |
対象 | 制度を実施する地方公共団体にあるマンション(地方公共団体の方針次第) | 日本全国のマンション |
今回のまとめ
2022年4月から「管理計画認定制度」が始まることで、マンションの管理状況の「見える化」が進みます。
管理認定の有無が公開され、適切な管理がされているマンションを投資先として選びやすくなります。投資先の物件を探す際には参考になるでしょう。
また、既にマンション投資を行っている方は、認定を目指すことで所有物件の管理状況が適切かどうか確認したり、市場へのアピールによって入居者や購入者からの注目を集めたりといったことが可能です。
建物自体の条件が理想的だったとしても、その管理状況が良くなければ資産価値や入居率に影響するため、不動産投資に向いているとは限りません。
ですので、投資した不動産について資産価値の維持・向上を目指す方には、積極的な制度活用をおすすめします。
Myアセットは不動産に関するご相談を総合的に承っており、物件の売買だけでなくその後の管理に関する知見も豊富です。これから不動産投資の開始を検討している方だけでなく、既に所有されているマンションの管理についてお悩みの方も、売買から物件管理まで精通しているMyアセットにぜひご相談ください。