売却

検査済証がない物件は売却できる?

2023年10月25日

検査済証のある物件でもない物件でも、売却することは可能です。ただし、検査済証がなければ、売却しにくくなることも事実。物件の売却に際しては、まず検査済証の有無を確認し、もしなければ適切な対策を行った上で売却活動に入ったほうがスムーズでしょう。

ここでは、検査済証の概要、検査済証のない物件が売却しにくい理由、検査済証のない物件を売却するためのコツについて解説します。

検査済証とは

検査済証の概要を確認しておきましょう。

検査済証は違法建築物でないことを証明する書類

検査済証とは、特定の建築物が建築基準法などの法令に違反していないことを証明する重要な書類です。検査済証がなければ、基本的には当該建築物の適法性を証明できないとされています(証明するための対策は後述)。

法令に違反しているかもしれないが違反していないかもしれない、という曖昧な建築物について、これを好んで買いたいという買主はほとんどいないでしょう。

検査済証はいつ交付されるものなのか

建築物が完成すると、建築主は4日以内に「完了検査申請書」を提出しなければなりません。申請書の提出を受け、自治体や指定の審査期間が「完了検査」を行います。

完了検査は多くの基準に沿って行われますが、すべて基準に合致していることが確認された時、検査済証が交付されます。ただし、完了検査の結果、何らかの不備が発覚した場合、不備への対応が必要となることから検査済証の交付が延びることもあるでしょう。

なお、2023年現在では検査済証の取得が実質的に義務化されている状態となっていますが、かつては検査済証の取得に関し、制度的に緩い時代がありました。そのため、古い建築物の中には検査済証がない例も非常に多く見られます。

検査済証は再発行できない

検査済証は再発行できません。過去に完了検査を受けた「記憶」があったとしても、検査済証を紛失・処分してしまっている場合には、永遠に再取得できません。

再発行できない理由は、検査済証の偽造や偽装を防止するため。同じ建築物にも関わらず異なる内容の検査済証が複数存在した場合、どれが本物の内容なのか分からなくなります。

検査済証は、法令に基づいて作成される極めて重要な書類。その信憑性や価値を維持するため、再発行はできない決まりとなっています。

検査済証のない物件が売却しにくい理由

検査済証のない物件でも売却は可能ですが、検査済証のある物件に比べ、売却に難航する可能性があるでしょう。検査済証のない物件が売却しにくい主な理由は次の通りです。

増改築・用途変更ができないから

検査済証のない建築物を購入しても、購入後に建築物の増築や用途変更ができません。理由は、対象建築物の適法性を証明できず、建築確認申請が却下されるためです。

買主の中には、購入後に建築物の増改築・用途変更を考えている方も少なくありません。そのような方は、検査済証のない建築物を候補から外す可能性が高いでしょう。

住宅ローンが通らない

家を新築して購入しようとする場合に住宅ローンを組む際に検証済証の提出を求められます。

検査済証のない物件をスムーズに売却するためのコツ

「そうか、自分の持っている物件は検査済証がないから売れないのか…」と落胆している方々に向け、検査済証のない物件でも問題なく売却するコツをご紹介します。

近年でこそ、完了検査の受検率は約90%となっているものの、一昔前、少なくとも住宅に関しては完了検査を受検する建築主のほうが少ない状況でした。ちなみに国土交通省が発表しているデータによると、平成10年における建築物全体の完了検査の受検率は約38%。

やや築古の建築物については、検査済証を取得している例のほうが、むしろ稀です。それにも関わらず、2023年現在でも築古の建築物は不動産市場でたくさん流通しています。

ご自身が持つ建築物の売却に際し、検査済証がないことで極度に落胆する必要はありません。検査済証がない物件をスムーズに売る4つのコツをご紹介します。

参照:国土交通省|建築確認検査制度の概要
https://www.mlit.go.jp/common/001279404.pdf

台帳記載事項証明書を取得する

建築物を建てた時には完了検査を受けているものの、検査済証を紛失してしまったという方は、市役所の建築指導課などで台帳記載証明書を取得しましょう。

過去に完了検査を受けていれば、その建築物に関する台帳記載事項証明書が役場に残されていますが、台帳記載事項証明書には、検査済証が交付された旨が記載されています。

つまり、台帳記載事項証明書に検査済証の交付日と番号が書いていれば、建築物の適法性の証明となります。

建築基準法適合調査を受ける

過去に完了検査を受けておらず、台帳記載事項証明書の取得が困難な場合には、国土交通省が定める「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に従い、建築基準法適合調査を受けましょう。

建築基準法適合調査とは、建築前に行った建築確認申請の際に交付される各種書類をもとに、専門家が現地で行う調査のこと。交付された各種書類を紛失している場合には、別途で専門家が現地調査を行った上で書類を復元することが可能です。

なお、建築基準法適合調査にかかる費用は10~30万円ほど。残存している書類や建築物の状況によっては100万円以上掛かる場合もあります。費用が不安な方は事前に調査の見積りを取り、費用対効果のある方法かどうかを検討する必要があるでしょう。

建築基準法「12条5項報告書」で建築物の適法性を証明する

検査済証のない建築物については、建築主事が在籍している役場・自治体などに、建物が確認通りか増築がないかを建築士が調査し報告する「12条5項報告書」と呼ばれる書類を提出します。

提出に際しては「12条5項報告書」の原本と副本を持参し、建物が違法であると認められ、建築主事の審査が通過すれば副本が返却される仕組み。この副本をもって増改築や用途変更が可能となるため、売主は建築物を売却しやすくなります。

不動産会社に買い取りをしてもらう

一連の手続きを行う手間を省き、すぐにでも建築物を売却したいという方は、検査済証のない状態のまま不動産会社へ買い取りしてもらう、という方法もあります。

検査済証のある建築物や検査済証の代わりを用意した建築物に比べ、買い取りの価格は割安になる傾向がありますが、面倒な手間を省略してスピーディに現金を手に入れられるという点で、大きなメリットを感じられる方もいるでしょう。

【まとめ】専門機関に相談しながら丁寧に手続きを進めていきましょう

検査済証のない建築物は、スムーズに売却できない可能性があります。ただし、検査済証がなかったとしても、売却をスムーズにするための代替策はあります。

専門的な段取りが必要となるため、不動産会社などの専門機関に相談しながら丁寧に手続きを進めていきましょう。