売却

親から相続した投資用マンションを売却するべきケースとは?

マンション

2023年7月21日

ここでは、親から相続した投資用マンションを所有するか売却するかの判断基準として、相続の流れや各種税制などについて解説しています。
相続や税制に関する基礎知識を基に、他の相続人と相談して投資用マンションの所有・売却を判断しましょう。

所有・売却を決めるのは「相続する人」

仮に相続する投資用マンションが区分マンションだった場合、複数の相続人で部屋を小分けして相続はできません。
そのため、相続した投資用の区分マンションの所有・売却を決めるためには、まず「誰が投資用マンションを相続するのか」を決める必要があります。

相続する人を決める流れ

相続人が一人しかいない場合には、その一人が投資用マンションを相続することになります。一方で相続人が複数いる場合には、遺言書の有無により、投資用マンションの相続人を決める流れが異なります。

遺言書がある場合

遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って相続人が決まります。遺言書の中に「投資用マンションは長男が相続する」と記載されていれば、原則長男が投資用マンションを相続します。

遺言書がない場合

遺言書がない場合は、相続人同士で遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人の誰が何をどの程度相続するかを決める話し合いです。
遺産分割協議によって決まった内容は遺産分割協議書にまとめ、全員が内容に合意したことを証明するため、すべての相続人の実印による捺印および署名が必要となります。
なお、遺言書がない場合の相続においては、法定相続人と呼ばれる親族が遺産を相続することになります。法定相続人には、次のような相続優先順位があります。

  • 被相続人の配偶者…常に相続人
  • 第1順位…子供(直系卑属)
  • 第2順位…親(直系尊属)
  • 第3順位…兄弟姉妹

法定相続人に該当する人が亡くなっている場合には、その子供などが代襲相続人として遺産を相続することになります。

投資用マンションを相続したら必ず名義変更(相続登記)が必要

投資用マンションを相続したら、必ず相続登記(名義変更)を行いましょう。
登記されている投資用マンションの名義は、相続発生により自動的に変更となるわけではありません。
相続人が相続登記を行わない限り、投資用マンションの名義はいつまでも被相続人の名義であり続けます。
2023年5月時点で、相続登記手続きに期限はありませんが、2024年4月以降は、相続の開始を知った日から3年以内の相続登記が義務付けられます。
売却の可能性も考慮し、相続が発生したら速やかに相続人は相続登記するようおすすめします。

賃借人にオーナー変更の連絡をする

相続した投資用マンションに賃借人が入居中の場合、相続人が決まったら早急に賃借人へオーナー変更の連絡をしましょう。
連絡を怠ったり失念した場合、引き続き家賃が被相続人の口座へ振り込まれる可能性があるのでご注意ください。

投資用マンションを相続した時の税制の注意点

相続した投資用マンションの所有・売却を判断する材料として、2つの税制特例に関する扱いを見てみましょう。

相続した投資用マンションを売却しても3000万円の特別控除は使えない

住宅用マンションを売却した場合には3000万円の特別控除の対象となりますが、投資用マンションを相続した場合、この特別控除の対象にはなりません。
3000万円の特別控除とは、住居用財産を譲渡した際に発生した譲渡所得から、最大3000万円までを控除できる制度です。
仮に住居用マンションの売却で3000万円の譲渡所得が発生したとしても、この制度を適用すれば譲渡所得0円にできるため、所得税などは課税されません。
相続した投資用マンションの売却を検討する際には、3000万円の特別控除の対象ではないことを忘れないようにしましょう。

投資用マンションの相続でも「小規模宅地等の特例」が適用される

投資用マンションは、小規模宅地特例の中の「貸付事業用地宅地等の特例」を利用できます。
相続した投資用マンションの土地に該当する部分について、評価額を限度面積200㎡までを50%減額できる特例です。
投資用マンションにおける貸付事業用地宅地等の特例の適用要件は次の3点です。

  1. 相続税の申告期限までに被相続人の貸付事業を引き継ぎ、貸付事業を行っていること
  2. 相続した投資用マンションを相続税の申告期限まで所有していること
  3. 相続開始の3年以上前から貸付事業が行われていた投資用マンションであること

「3」については、仮に3年以上にわたる投資用マンションではなかったとしても、被相続人が3年を超えて貸付事業を行っている場合には要件に該当するとされています。

なお、「小規模宅地等の特例」については、「宅地」という言葉のイメージから一戸建て住宅を対象とした制度との誤解もあるようですが、投資用マンションも対象となるのでご安心ください。
区分所有の投資用マンションには、建物の区分所有権と土地の敷地権という権利がありますが、小規模宅地等の特例では、投資用マンションの敷地権も対象としています。

相続した投資用マンションが古くて売れにくい場合

相続した投資用マンションを売却すると決めたとしても、築年数が古いなどの理由で、なかなか売れない場合もあります。
もし投資用マンションを一般市場から売り出しても売れない場合には、不動産会社に「買取」してもらう方法があります。
以下、投資用マンションの「売却」と「買取」の違いを簡単に確認しておきましょう。

売却とは

売却とは、不動産会社に仲介してもらう形で一般市場から買主を見つける方法です。
物件の広告を出したり不動産会社同士のネットワークを活かし、対象となる物件を買いたい人を探します。
買主が見つかって売買が成立すれば、売主は不動産会社に対して不動産仲介手数料を支払う必要があります。

買取とは

買取とは、一般市場を経由することなく、不動産会社や開発会社、投資業者などが買主となる取引方法です。
買主となった不動産会社などは、買取した物件に独自の加工を行って再販売し、売買の差額を収益とします。
不動産会社に仲介してもらって買主を探すわけではないので、売主は不動産仲介手数料を支払う必要がありません。

不動産投資が相続税対策になると言われる理由

一般的に、不動産投資は相続税対策に有効と言われています。その主な理由を見てみましょう。

建物の評価額が6~7割程度となるため

賃貸アパートの建物の評価額は固定資産税評価額を使います。
固定資産税評価額は取得金額の60%ほどですので、賃貸アパートを1億円で建築した場合、評価額は6000万円ほどになり相続税評価額も6000万円ほどになります。

土地の評価額が8割程度となるため

相続した不動産に土地が含まれていた場合、土地の相続税の計算には路線価が利用されますが、路線価は土地の時価に対して8割程度で評価されています。
そのため、現金での相続に比べ、2割ほど評価額が下がります。マンション用地の場合には、さらに2割ほど評価額が下がります。

現金で相続するよりも不動産で相続したほうが評価額は下がり、その分、相続税を圧縮できることから、不動産投資は相続税対策になると言われています。

相続税の基礎控除について

相続税の納付義務は、相続税の基礎控除額を超えた時に発生します。
投資用マンションを含め、すべての相続財産をあわせて基礎控除額を超えていなければ、相続税を納付する必要はありません。
基礎控除額の計算方法は、「3000万円+(600万円×法定相続人の人数)」です。この計算式で算出した金額を超える相続をした場合、その超過分に対してのみ相続税が課されます。

自筆遺言と公正証書遺言の違い

相続人の決める際、まずは遺言書の有無を確認する必要があることは、すでに説明した通りです。
ただし、もし金庫等から遺言書が発見されたとしても、その場ですぐに開封しないようご注意ください。
遺言書の種類について、自筆遺言書と公正証書遺言の2種類を理解しておきましょう。

自筆遺言書

自筆遺言書とは、被相続人が自筆でまとめた遺言書です。自宅の金庫や被相続人の机の中などから発見されます。
自筆遺言書の内容は法的に有効ですが、自宅などに保管されている事情から、相続人の誰かが、自分に有利な内容となるよう書き換えるリスクがないとは言えません。
そのため、自筆遺言書は、相続人同士が立ち合いのもと、家庭裁判所ではじめて開封する決まりとなっています。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で作成した遺言書です。法務大臣が認定した公証人が立ち合いのもとで作成し、そのまま公証役場に保管されます。
公正証書遺言は、作成時点での被相続人の意思が正しく反映されていることに加え、改ざんのリスクがないことから、開封にあたって相続人同士が立ち会ったり家庭裁判所に出向いたりする必要はありません。

【まとめ】所有するも売却するも適切な対応を

親から相続した投資用マンションについて、所有・売却の判断基準となる基礎的な情報をご紹介しました。

相続した投資用マンションを所有するならば、物件の管理や空室対策などをしっかりと行いましょう。
投資用マンションが負の資産とならないよう、必要に応じて管理会社などの協力も得ながら、着実な果実を生む資産として活用してください。
一方、相続した投資用マンションを売却するならば、相続人の確定や税制の理解などが必要となります。
基本的に不動産会社のサポートを受ける形になると思われるため、手続きや制度の詳細については、仲介・買取を依頼する不動産会社などに相談しましょう。