売却

中古区分マンションを個人間で売却できる?注意点は?

2021年5月31日

ここでは、中古区分マンションの売却をお考えの方に向け、不動産会社を利用しない個人売買に関して詳しく解説します。マンションを個人売買することのメリットやデメリット、注意点などのポイントをまとめましたので、お持ちのマンションの売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
マンションの売却を個人で行うことは可能ですが、膨大な手間や時間が必要となること、トラブルのリスクがあることなども理解しておく必要があります。

不動産の個人売買は可能ではある

不動産会社を挟まずに、個人の売主と買主が直接に不動産を売買することを「個人売買」と呼びます。マンションを含め、不動産を売却するときには、買主探しから売却の手続きや物件の引渡し、代金の収納などをサポートしてもらえる不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。しかし、不動産会社を通さずに、売主と買主が直接に売買することもできます。

個人間での売却は法律が心配…という方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産の個人売買は法律に違反しません。不動産会社が不動産売買の仲介をする場合には免許や資格が必要ですが、これは不動産仲介業という事業を行うためのものです。不動産の購入・売却そのものに資格は不要です。

個人から個人へ不動産を売却する場合も、不動産会社の仲介を通して売却する流れと基本的には同じで、買主募集→売買契約締結→物件と対価の交換となりますが、その間には多くの複雑な手続きが必要です。仲介の場合には不動産会社が行う手続きも、個人売買ではすべて売主と買主で行います。

区分マンションを個人で売却するメリット

マンションの個人売買には手間や専門知識が必要です。しかし個人売買には主に以下2点のメリットがあります。

自由度の高い取引ができる

不動産会社に売却の仲介を依頼した場合、不動産会社の意向や判断によって取引に影響を受けることがあます。たとえば、「この値段では売れないので、もう少し値下げしたほうが良い」「これ以上、相手に無理な交渉を働きかけないほうが無難」などです。
それらは不動産会社の経験や専門性を元にしたもので、スムーズに売却を進めるためのものですが、人によっては「自分の考えをもっと反映して欲しい」と考えるでしょう。

不動産会社を利用せず個人でマンションの売却活動を行えば、売却価格や売却時期はもちろんのこと、営業方法、売却相手や交渉内容まで、すべて自分の考えや判断で進めることができます。
自由度の高い取引ができるという点は、マンションを個人売買するメリットの一つでしょう。

不動産会社に仲介手数料を払わなくて良い

不動産会社にマンション売却の仲介を依頼して売却が成立した場合、仲介手数料を支払わなければなりません。また、仲介手数料には消費税もかかります。
個人でマンションの売買を成立させれば、仲介手数料も消費税も不要となるため、売主にとっては経済的なメリットになるでしょう。

不動産仲介手数料の上限額は、次の速算式で算出することができます(マンションの売却額が400万円超の場合)。

仲介手数料の上限額=売却代金×3%+6万円(+消費税)

たとえば、売却代金が5000万円だった場合には、次の計算式で不動産仲介手数料の上限額は171万6千円ということです。個人売買ならこの手数料を節約できることになりますから、大きなメリットといえます。

5000万円×3%+6万円+消費税(10%)=171万6千円

なお、売却価格が400万円以下の場合は、仲介手数料の上限額は下記の計算式で求められます。

売却価格の200万円以下の部分…購入価格の5%+消費税
売却価格の200万円超400万円以下の部分…購入価格の4%+消費税

区分マンションを個人で売却するデメリット・注意点

マンションの売却には専門知識が必要です。専門家ではない方が不動産の取引を問題なく完了させるには、大変な手間と時間がかかります。十分な知識や経験がないまま個人売買をすると、おもに次のような問題に直面する可能性があります。

作成が必要な書類の用意が非常に難しい

マンションの売却には必要な書類がたくさんありますが、個人売買では売主側が用意すべき書類の中には売主自身で作成するものもあります。
最低でも次の書類が必要です。

  • 不動産売買契約書:買主との間で締結する売買契約書。新規作成する必要がある。
  • 物件状況等報告書:雨漏りや、近隣トラブルなどの状況について記したもの。
  • 重要事項説明書(※):宅地建物取引業者が買主に登記や法令などについて説明するためのもの。ここでは、それに類するものという意味で記載。
  • 管理費・修繕積立金清算書:売買契約が含まれる月の管理費と修繕積立金は慣例的に売主と買主が日割りで負担することがあるので、その負担額がそれぞれ何日分なのかを記したもの。作成にはマンション管理会社や管理組合に不明点を相談しましょう。
  • 固定資産税・都市計画税清算書:管理費や修繕積立金と同様、売主と買主が日割りで負担することが多いため、それぞれ何日分負担するのか記したもの。不明な点は、所管の税務署もしくは税理士に確認・相談することをおすすめします。
  • 付帯設備表:水回りや空調など、マンションについてくる設備を記したもの。

※「重要事項説明書」について
正規の「重要事項説明書」は、宅地建物取引士の有資格者でなければ作成できません。よって売主は「重要事項説明書」に類した書類を作成することになります。
不備のないよう作成するためには、司法書士への作成依頼も検討したほうが良いでしょう。また、チェックのみ司法書士や不動産会社に依頼するという方法もあります。

これらの他、買主がマンションを購入した当時の重要事項説明書やパンフレットがあるとよりスムーズな売却ができるでしょう。

トラブルにも自分で対処する必要がある

不動産会社に売却の仲介を依頼した場合、買主との間に何らかのトラブルが発生したとしても、不動産会社が間を取り持ってくれるでしょう。
ところが個人間での不動産取引でトラブルが生じた場合、このトラブルに対処するのは自分。法的な問題に発展した場合には、交渉などのために費用をかけて弁護士に依頼しなければならないかもしれません。

トラブルの例として、住宅ローン審査の難航による買主からの売却代金の支払い遅延や、売買契約のキャンセル、引き渡した物件の不具合などがあります。手付金や売買代金の支払期日や手付解除規定など、不動産取引上で考えられるトラブルに関する事項は、買主との間で締結する売買契約書で明記しておきますが、個人売買では契約書を自分で作成するため、取り決めが不足してしまうおそれがあります。

物件の不具合にかかわるトラブルについては、2020年に改正された民法で定められた「契約不適合責任」について理解しておくことも大切です。以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていた制度が、「契約不適合責任」という制度に改正されています。
この民法改正にともない、買主の権利や売主が担う責任・損害賠償の範囲などが変更されています。
大きな変化として、売主側が問われる責任の定義があります。瑕疵担保責任では、隠れていて注意していても見つけられなかった瑕疵(例えば雨漏りやキズなど)について責任を問う法律でしたが、改正後は契約書に記載があるかどうかで判断されるものになっているのです。

これら変更内容についてきちんと確認し理解しておかなければ、不測の法的トラブルへと発展する恐れがあるので、売主も買主も注意が必要です。

広告を大々的に出せず買主を見つけにくい

マンション売却では買主を探し、誰にいくらで売るかを決めるまでが大変な作業です。個人売買は、親族や知り合いなどで既に買主を見つけて行うケースが多いですが、買主が決まっていなければ、自分で様々な宣伝活動を行わなければなりません。
宣伝活動の方法はおもにネット広告やチラシ広告があります。

ネット広告は、インターネット上の不動産情報サイトに売却物件情報を掲載してもらう宣伝方法です。
ただし、大手不動産情報サイトは、個人オーナーからの掲載依頼を受け付けていないところが多いようです。広告掲載には不動産仲介業の免許である「宅地建物取引業免許」を持つことを要件としているなど、出稿はおもに不動産会社向けとされているため、個人が直接ネット広告を出して買主を探すことは難しいと考えたほうが良いでしょう。

チラシ広告なら、自分で作成することが可能。作成したチラシは新聞折込で宣伝したり、ターゲットとなる地域に向けてポスティングしたりできます。
ただし、ポスティング広告を代行業者に依頼するとコストがかかることに注意。両面がカラーのA4チラシは大体、3~5円/枚のコストがかかります。
仮に1枚の広告作成に5円のコストがかかったとすると、10万枚の広告を作るのに50万円かかる計算です。
印刷のみ業者に依頼して自分でポスティングすれば費用は抑えられますが、同じく10万枚と仮定した場合、その枚数を個人がポスティングするのは非現実的です。手間がかかりますし、広範囲へのポスティングは難しくなるでしょう。

ネットを用いた大手サイトへの広告掲載は個人では難しく、ポスティング等のアナログな手法での広告にはコストと手間がかかります。個人で大々的に広告を出すのは簡単ではない、とご認識ください。

売却価格が安すぎると贈与税が課される

マンションを個人で売却するにあたり、すでに親族や知り合いを買主として想定しているという方もいらっしゃるでしょう。
親しい相手に買い取ってもらうときには相場よりも安く売ってあげようと思うかもしれませんが、相場よりも大幅に安く売却すると、贈与税が課されてしまうおそれがあります。「みなし贈与」とみなされるためです。

「みなし贈与」とは、あげる人ともらう人の双方に合意や意図がなかったとしても、実質的には贈与と同じとみなされる経済行為のこと。

例えば、相場では6000万円のマンションを親族に4000万円で売却した場合、売却価格が相場から著しく低いため差額の2000万円は「金銭的利益の贈与をした」と判断されることがあります。当事者の間では贈与の認識がなく贈与税を納めていなくても、税務署が贈与と判断すると買主には贈与税がかかるのです。

みなし贈与は法的に明確な基準があるわけではなく、どれくらい相場と離れた金額で売却すると贈与にあたるかは、個別のケースによります。みなし贈与とならないように、売却前には不動産会社や不動産鑑定士に査定を依頼して評価額を確認しておくなど、個人売買であっても専門家によるサポートを受けておく方が安全です。

今回のまとめ

不動産会社を通さずに個人で区分マンションを売却することは、法的には問題ありませんし、仲介手数料がかからないことなど個人売買ならではのメリットもあります。
その一方で、仲介であれば不動産会社が行う複雑かつ専門的な作業を、自分で行わなければなりません。書類や取引上の不備が原因で、思わぬトラブルに発展するリスクもあるでしょう。
個人売買をお考えの方は、入念に準備し、慎重に手続きを進めるようにしましょう。

Myアセットでは、中古区分マンションの売却をお考えの方からのご相談を受け付けております。経験豊富なスタッフが誠意をもって対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。