売却

親のマンションがいらない時はどう処分したらいいの?

マンション売却

2023年7月24日

親が残したマンションが不要であれば、むしろ子の判断で適切に処分(売却)して現金化し、生活に少しでも潤いが生まれるほうが良い場合があります。
親から相続したマンションや親からの相続が予定されているマンションがある場合の対処法について解説します。

親にとってみれば良かれと思って子に残したマンションであっても、子にとってはすでに生活の拠点を持ち家族で安定的に暮らしている方にとって、住む予定もなく固定資産税や維持費の掛かるマンションを相続することは、かえって悩みの種になることもあります。

親から相続したマンションを売却する際の流れ、親が存命中にマンションを売却する際の流れなどについて見ていきましょう。

親が存命している場合の売却の流れ

親が存命中で、かつ親にマンションを維持したいという意思があるならば、子とはいえ勝手に売却はできません。
しかし、親が認知症で正確な意思疎通が難しい場合や親に判断能力があってマンションを売却したいと思っているにもかかわらず、体調不良などを理由に売却活動できない場合には、家庭裁判所が認める成年後見制度を使い、親に代わって子がマンションを売却することも可能です。

認知症の親に代わってマンションを売却する流れ

親が認知症を患い、自分が所有するマンションの処遇について正確に判断できない場合、子は「成年後見制度」を使ってマンションを売却できます。
ただし、成年後見制度で親のマンションを売却する場合には、一般的に考えてマンションを売却したほうが親の利益になると判断される場合に限ります。
自分の利益のために成年後見制度を乱用することは認められていません。

【参考】成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより十分な判断能力を持たない方について、その方が不利益を被らないよう、家庭裁判所による選任者が意思決定の援助をする制度です。
家庭裁判所から成年後見制度による意思決定の援助を認められた人を後見人と言います。
申し立てをする際、後見人として候補者を申立書に記載できますが、誰が後見人になるかはあくまで裁判所が決めるため希望通りになるとは限りません。

認知症を発症して、法定後見制度で親のマンションを売却する流れは次のとおりです。

  1. 家庭裁判所が後見人として選任する
  2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  3. 売却活動を通じて買主を見つける
  4. 買主と売買契約を締結する
  5. 家庭裁判所に売買契約した旨の申し立てを行う
  6. 家庭裁判所の許可を受けた後、買主から売却代金を受け取る
  7. 買主へマンションを引き渡す

契約後に家庭裁判所へ申し立てを行うこと以外、通常のマンション売却と大きな違いはありません。
ただし、申し立てを行った結果、家庭裁判所から契約を却下される可能性がゼロではないことを認識しておきましょう。
成年後見制度の趣旨は、あくまでも本人の利益を守ることにあります。趣旨に合っていないと家庭裁判所が判断した場合には、申し立ては却下されます。

認知症でない親のマンションを売却する流れ

親が認知症や精神障害などを患っているわけではないものの、歩行困難や寝たきり等の理由により、マンションを売却したいにもかかわらず売却手続きを行えないこともあります。
このような場合、子は親の代理人となることでマンション売却が可能です。ただし、子が親の代理人としてマンションを売却する場合には、親からの委任状が必要です。
不動産会社が委任状を有効と判断した場合、子は親に代わってマンション売却の法的権限を持つことになります。

代理人たる子が親のマンションを売却する流れは次のとおりです。

  1. マンション売却に関する委任状を作成する
  2. 子が委任状を不動産会社に提出する
  3. 不動産会社が委任状を有効と認めた後、媒介契約を結ぶ
  4. 売却活動を通じて買主を見つける
  5. 買主と売買契約を締結する
  6. 買主から売却代金を受け取る
  7. 買主へマンションを引き渡す

なお、委任状のフォーマットは自由ですが、次の6点は必ず記載する必要があります。

  • 登記簿謄本に基づいたマンションの物件情報の表示
  • 売却に関する決めごと
  • 委任した日付
  • 本人の氏名・捺印
  • 代理人の氏名・捺印

また、委任状を不動産会社へ提出する際には、あわせて次の6点を提出する必要があります。

  • 親の印鑑証明書
  • 親の本人確認書類
  • 親の実印
  • 親の住民票
  • 子の本人確認書類
  • 子の実印

相続したマンションの売却の流れ

すでに相続したマンションであれば、相続人の意思のみで問題なくマンションを売却できます。
ただし、相続が完了していたとしても、マンションの名義が相続人へ自動的に変わるわけではありません。
マンションの名義を変更するためには、相続人による相続登記が必要です。相続登記をしていなければ、マンションの名義は被相続人のままなので、相続人はマンションを売却できません。
相続したマンションを売却する際には、必ず事前に相続登記を行っておきましょう。

相続したマンションを売却する流れ

  1. 相続登記をする
  2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  3. 売却活動を通じて買主を見つける
  4. 買主と売買契約を締結する
  5. 買主から売却代金を受け取る
  6. 買主へマンションを引き渡す

相続登記をすること以外、一般的なマンション売却と流れは同じです。

相続登記に必要な書類

参考までに、相続登記手続きに必要な書類を確認しておきましょう。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 登記申請書
  • 印鑑証明(発行から3か月以内のもの)
  • 被相続人の住民票の除票
  • 不動産取得者の住民票
  • 相続する不動産の固定資産税評価証明書
  • 戸籍謄本(相続人全員)
  • 遺産分割協議書(相続人が複数人いる場合)
  • 遺言書(もしあれば)

相続登記の前に行っておくべきこと

相続登記を行うためには、事前に以下の項目をすべて完了させておく必要があります。

遺言書の有無および内容の確認

遺言書の有無を確認します。もし遺言書があり、かつマンションの相続人を別の相続人に指定されていた場合、自分はマンションを相続できず、売却もできません。

法定相続人の確認

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取得し、法定相続人の確認を行います。
法定相続人が複数名いる場合には、相続人全員で遺産分割協議の上、マンションの相続人を決めることになります。

相続財産の確認

マンションだけではなく、他の相続財産もすべて確認します。
現金・預金などのプラスの財産だけではなく、債務や連帯保証人の地位など、マイナスの財産もすべて明らかにしなければなりません。

相続するかどうかの決定

相続財産を確認の上、相続するかどうかを決定します。プラスの財産とマイナスの財産を相殺してマイナスとなった場合、相続放棄を選択したほうが良いかもしれません。
なお、「マイナス財産のみを放棄してプラス財産のみを相続する」ということはできません。
相続放棄を選んだ場合には、プラス・マイナスにかかわらず、原則としてすべての財産を放棄することとなります。
相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3か月以内に、被相続人の住所を管轄する家庭裁判所で行います。

遺産分割協議

相続人が複数名いる場合には、遺産分割協議を行って各相続人に不平等のないよう相続内容を確定させます。
この際、もし自分が親のマンションを相続することになれば、相続登記(名義変更)の上マンションの売却が可能となります。

相続しただけでマンションを放置した場合のデメリット

親のマンションを相続したものの、遠方に生活拠点があったり仕事が多忙だったりなどの理由で、実質的にマンションを放置している例が少なくありません。
相続したマンションについては、早急に「住む」「売る」「貸す」のいずれかを選択してください。放置した場合には、次に挙げるようなデメリットが生じるからです。

築年数が進んで売りにくくなる

マンションを放置していれば、放置した期間だけ老朽化が進みます。
住んでいるマンションなら微細なメンテナンスを重ねているため老朽化が進みにくいものですが、放置しているマンションは老朽化のスピードが加速します。
老朽化したマンションは、当然ながら資産価値が下がるため、いざ売却する際に想定以下の価格となっている可能性があります。

税金・維持費が掛かる

放置しているマンションであれ、所有者が自分である以上、毎年固定資産税と都市計画税が発生します。もとより、すでに相続税や贈与税を納付済みかもしれません。
これらの税金に加え、共益費や管理費、修繕積立金などの維持費も掛かります。
中には「住んでいない」との理由で、共益費・管理費・修繕積立金を滞納した場合、これらの費用はマンション住人が平等に負担するコストとなっているため、滞納が重なれば管理組合との関係が悪化します。
場合によっては、管理組合から裁判所へ競売が申し立てられる恐れもあるので注意しなければなりません。
他にも、電気代・ガス代・水道代・固定電話などを設置していれば、まったく使用しなくても基本料金が掛かります。使っていないマンションに、毎年多くの固定費がかかります。

空き家トラブルに発展する可能性もある

放置マンション(いわゆる空き家)であることが周囲に知られれば、空き巣などの被害を受けるかもしれません。
最悪の場合、マンションは犯罪の拠点として悪用される可能性もあります。
空き家トラブルはマスコミでも報道されているとおりですが、一戸建てにかかわらずマンションでも空き家トラブルは見うけられます。

複数の相続人でマンションを相続する方法

誰か一人がマンションを相続して現金などで相続全体を調整するか、またはマンションを売却して現金化した上で平等に財産を分ける形はあります。
複数の相続人でマンションを相続する場合の4つの方法を見てみましょう。

現物分割

現物分割とは、マンションや現金をそのままの形で相続する方法です。例えば「マンションは長男」「現金は長女」などの形で相続します。
シンプルで分かりやすい相続方法である反面、相続の公平性を維持しにくい点がデメリット。
他の相続人が相続した財産に比べ、自分が相続したマンションの評価額が高い場合、親族間のトラブルに発展する可能性もあります。

換価分割

換価分割とは、マンションを売却して現金化し、全相続人で公平に売却益を分割して相続する方法です。
全相続人にマンションを利用する予定がなければ、もっとも穏便かつトラブルの起きにくい相続方法と言って良いでしょう。

代償分割

代償分割とは、マンションを相続した相続人が他の相続人に現金を支払う形で公平性を保つ相続方法です。
現物分割より公平な相続となる一方、換価分割ほど穏便な結果を得られるかは分かりません。
もとより、マンションを相続した相続人が現金を支払うだけの十分な資力を持っていることが、代償分割の前提となります。

共有分割

共有分割とは、相続人全員の共同名義でマンションを相続する方法です。
一般的に、1つのマンションを共同名義で相続することは、特別な理由がない限り推奨されません。
なぜなら、マンションを売却する際などに名義人全員の同意が必要となったり、維持費や税金などの負担割合で揉めたりすることがあるからです。
また、共同名義人の一人が亡くなった場合、その名義をめぐって新たな相続人が発生するなど、マンションの所有関係が複雑化していくことも共有分割が推奨されない理由です。

【まとめ】相続したマンションの処遇に困ったら売却がおすすめ

親のマンションを子が処分する方法についてご紹介しました。
親が認知症の場合には、成年後見制度を利用して子が親のマンションを売却できます。
また、親が認知症ではないものの寝たきりなどの理由で売却手続きができない場合には、委任状を利用して子が親のマンションを売却できます。

マンションを相続した場合には、「住む」「売る」「貸す」のいずれかを選ぶことになりますが、いずれも選ばずに放置することは禁物です。
放置する可能性があるならば、早めに売却することをおすすめします。