売却

マンションの相続後に売却するべきか判断する方法を解説

2023年9月27日

ここでは、相続したマンションの扱い方(住む・売る・貸す)について、以下の3つを中心に詳しく解説します。

  • 1つのマンションに対して複数の相続人が入る場合の選択肢
  • マンション相続の流れ
  • 相続したマンションの売却を決めるタイミング

相続したマンションに「住む」と決めている方以外は、マンションを相続後、様々な検討・協議が必要となります。

マンションを相続する際の3つの選択肢

親が所有するマンションを相続した際の選択肢には、「住む」「売る」「貸す」の3種類があります。
相続したマンションの扱い方について決めかねている方に向け、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

住む

住むメリット

自分が生まれ育ったマンションなど、思い入れのある物件を大切にし続けられることが住むメリットです。
思い入れを大切にしながらも居住空間としての実用性も兼ねていることから、通勤・通学等に不便がなければ、相続したマンションに住むことも現実的な選択肢となります。
被相続人が投資用として購入したマンションだったとしても、相続人が住んでも構いません。
また、人が住むことでマンションの老朽化を遅くし不動産としての価値を保つメリットもあります。

住むデメリット

思い入れのあるマンションとは言え、自分が希望しない条件の物件に無理に住むことは、生活の質を下げる恐れがあります。
「希望とは違うけど、もったいないから住む」という考えでしたら、相続したマンションを売却して希望のマンションを購入したほうが良いかもしれません。
もとより、賃借人がいる投資用マンションを相続した場合には、賃借人が退去しなければ住むこともできません。

売る

売るメリット

相続したマンションを売って現金化すれば、その後の生活に潤いがもたらされる可能性もあります。
また、現金化すれば他の相続人と公平に相続財産を分けられます。

売るデメリット

もし思い入れのあるマンションであれば、これを手放すことは寂しい気持ちになることがデメリットでしょう。誠実な購入者を探し、大切に使ってもらうよう伝えましょう。

貸す

貸すメリット

相続したマンションから家賃収入を得られる点が最大のメリットです。思い入れのあるマンションを手放さなくて済むこともメリットになるでしょう。
マンション経営を難しく感じるのでしたら、マンション管理会社に管理を一任する方法もあります。

貸すデメリット

投資用マンションとして維持していくためには、空室対策や修繕などの様々な手間がかかります。
また、自分の所有する不動産である以上、賃借人ではなく自分が固定資産税などの税金を納付しなければなりません。
もとより住居用として購入したマンションは、高い家賃が期待できる賃貸用には適していないこともあるため、長い目で見れば売却したほうが良い場合があります。

相続人が複数いる場合の選択肢

例えば区分マンションを相続した場合、1つの物件を複数の相続人で分割して相続することはできません。
分けて相続できないマンションを親などから相続した場合、どのような方法で相続人同士の公平性を保てば良いのでしょうか?
以下、区分マンションの相続人が複数いる場合の4つの選択肢をご紹介します。

現物分割

現物分割とは、相続財産の形を変えずそのまま相続する方法です。例えば「マンションを長男が相続し、現金を弟が相続する」といった形です。
シンプルで分かりやすい相続方式ですが、相続人同士、完全に均等に分割することは難しく、中にはトラブルに発展するケースもあります。

換価分割

換価分割とは、マンションを売却して相続人同士で売却益を均等に分ける方法です。相続人の誰もが利用する予定のないマンションでしたら、換価分割がもっとも公平性のある相続方式と言ってよいでしょう。
公平性があることから、基本的に相続関連のトラブルへ発展することはほとんどありません。

代償分割

代償分割とは、一人の相続人がマンションを相続し、マンションを相続した人が他の相続人へ現金を分配する方式です。
高い公平性を保てる相続方法ですが、マンションを相続した人に十分な預貯金がなければ、適切な現金分配はできません。一定の資力のある方に適した相続方法と言えるでしょう。

共有分割

共有分割とは、マンションを相続人全員の共有名義として相続する方法です。公平性を担保できる点がメリットとなりますが、権利関係が複雑になるなどの大きなデメリットもあります。
共有名義の場合、名義人一人の一存でマンションは売却できません。また、維持管理費や固定資産税などの負担割合について、相続人同士で揉めることもあります。
さらに、共有名義人の一人が亡くなった場合には、その相続を受けた配偶者や子も共有名義人になるなど、1つのマンションに対する所有関係が複雑化します。
共有分割は、特別な理由がない限りおすすめできる方法ではありません。

相続の流れと売却を判断するタイミング

相続放棄をしない限り、相続したマンションについては「住む」「売る」「貸す」のいずれかの方法を選択しなければなりません。
いずれの方法を選択するにしても、一度相続することが前提となります。
以下では、マンションの基本的な相続の流れ、および「売る」を判断するタイミングを確認してみましょう。

1.相続人調査と相続財産調査

相続が発生することを知ったら、速やかに相続人を特定する「相続人調査」が行われます。
あわせて、相続財産の全体像を把握する「相続財産調査」も行われます。相続財産調査では、プラスの財産だけではなくマイナスの財産(借金や連帯保証人の地位など)も明らかにします。
相続人が複数いる場合、必ずすべての相続人で遺産分割協議を行わなければなりません。また、必ずすべての相続財産を明らかにして遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議が終わった後に新たな相続人や新たな財産が発覚した場合、当初の遺産分割協議が無効とされる可能性があるため、必ず遺産分割協議を行う前に相続人調査と相続財産調査が行われます。

【参考】法定相続人と代襲相続人について

被相続人の財産を相続できる人を、民法では法定相続人と言います。
被相続人が遺言書を残していなければ、法定相続人のみが財産を相続できることになりますが、各法定相続人には次のような相続優先順位があります。

  • 被相続人の配偶者…常に相続人
  • 第1順位…子供(直系卑属)
  • 第2順位…親(直系尊属)
  • 第3順位…兄弟姉妹

ただし、例えば第1位順位の子供が被相続人よりも先に亡くなっている場合には、被相続人の孫やひ孫が第1位順位として相続することとなります。
あるいは、第2順位の父母が被相続人より先に亡くなっている場合には、被相続人の祖父母が第2順位として相続します。
第3順位の兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合には、甥・姪が第3順位として相続します。
この場合の「孫・ひ孫」「祖父母」「甥・姪」のことを、本来の法定相続人に代わって相続できる立場として、民法では代襲相続人と呼んでいます。
代襲相続人の相続割合は、本来の法定相続人と同じです。

2.遺産分割協議

複数の相続人がいる場合には、相続人全員により遺産分割協議を行います。民法による法定相続分に基づき、誰がどの財産をどの程度だけ相続するかを決める協議です。
被相続人が遺言書を残している場合には、原則として遺言書の内容通りに遺産分割を行います。ただし、相続人や遺言書で遺産を取得するよう指定されていた人全員の同意があれば、遺言書の内容にしたがわない分割も可能です。
なお、区分マンションを相続する方法には、上述の現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。

3.相続登記

相続されたマンションの相続登記を行います。相続登記とは、所有者の登録名義を変更する手続きです。
相続したマンションの売却を予定している場合には、相続登記を済ませておかなければ売却できないため、速やかに法務局で相続登記しましょう。

4.相続税の納付

相続したマンションと他の財産の合計評価額が相続税の基礎控除額を超えた場合、超えた分について相続税の納付義務が生じます。
相続税は、相続の開始を知った日から10か月以内に行う必要があるため、納付義務がある場合には早急に現金を用意する必要があります。
原則として相続税は現金で納めなければなりませんが、手元に相続税を完納できるほどの現金がない場合には、要件を満たせば相続税の分割払いや物納などが認められます。
また、マンションを売却して現金化し、相続税の原資とする人も少なくありません。

売却を判断するタイミング

マンションを相続した際の選択肢として、「住む」「売る」「貸す」の3つがあると説明しました。
自分か親族かを問わず、住む予定があるのでしたら売却を検討することはありません。また、はじめから「売る」と決めているのでしたら、相続登記が完了した段階で早めに不動産会社へ売却の相談へ行きましょう。
一方で「貸す」ことを予定している方については、管理の手間や修繕費・固定資産税などの支払いも考慮し、本当に貸す選択肢が妥当かどうかをよく検討してみましょう。
自分で判断できない場合には、不動産会社に相談してみると良いでしょう。検討の結果、「貸す」となれば売却の選択肢が消えます。
反対に「やっぱり売る」と決めた場合には、その時点で早急に不動産会社へ売却の相談をしましょう。
マンションを少しでも有利な条件で売却するためには、余裕のある売却活動期間が必要になります。また、マンションを放置し続ければ老朽化が進み、売却価格が下がる可能性もあります。
そのため、売却すると決めたら、一刻も早く不動産会社へ相談することが重要です。

マンションを相続した際の相続税控除について

マンションを相続した際の相続税控除について簡単に確認しておきましょう。

基礎控除

「3000万円+600万円×法定相続人の人数」は、基礎控除となり相続税の課税対象となりません。基礎控除を超えた部分が相続税の課税対象となります。

配偶者控除

配偶者が被相続人の遺産を相続する場合、合計1億6千万円までを配偶者控除にできます。残された配偶者の生活に配慮した制度です。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年までにマンションを譲渡(売却)していることで、納付済みの相続税の一部をマンションの取得費に加算できる特例があります。
これによりマンションの取得費を高くできるため、譲渡所得の圧縮につながり節税効果が生まれることもあります。

被相続人の住居用マンションを売却した際の3000万円の特別控除

被相続人から相続された住居用マンションを売却する際、一定の要件を満たせば譲渡益から最大3000万円の特別控除を受けられます。
譲渡益が3000万円に満たない場合は、譲渡益の額が控除の上限額となります。

【まとめ】公平な遺産分割と各種控除制度の上手な活用

マンションを相続した場合には、相続人調査や相続財産調査とともに、遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書があればその内容にしたがって相続し、遺言書がなく相続人が複数いれば遺産分割協議を行います。
遺産分割協議においてマンションを相続する人が決まったら、換価分割や代償分割など、相続人全員に公平な相続の方法も協議します。
協議の結果、マンションを売却することになった場合は、各種控除を上手に利用して相続税の圧縮を図っていきましょう。