売却

投資用マンションの売却(仲介)ではなく買取が向いている物件とは?

2022年5月29日

投資用マンションを購入した方にとって、出口戦略は非常に大事なポイントとなります。
出口戦略には「収益物件のまま売却」「更地にして売却」「自己住居用として保有」がありますが、物件の状況や売主の意向がそれぞれ異なる以上、一概に何が有利かを言うことはできません。

ここでは、投資用マンションの出口戦略として物件を売却する予定の方に向け、仲介と買取のメリット・デメリット、買取がおすすめの物件のタイプ、買取がおすすめな人、売却に適したタイミングなどについて詳しく解説しています。

投資用マンションの「仲介」と「買取」の違い

投資用マンションの主な出口戦略として、仲介と買取の違いを見てみましょう。

仲介とは

仲介とは、不動産会社の仲介を利用して一般的な不動産市場から投資用マンションの買主を見つける方法です。

売却活動に際しては、まず不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、売主の目的に応じた契約を選択して締結。媒介契約の締結に手数料はかからず、不動産会社の仲介で売買契約が成立した場合のみ、成功報酬として不動産会社に一定の不動産売買手数料を支払う形となります。

買取とは

買取とは、不動産会社が買主となって投資用マンションの売買を成立させる方法です。

不動産会社と媒介契約を結ぶ必要はありません。売買契約を結ばずに売買が成立することから、不動産仲介手数料は無料となります。
一般市場からの売却に比べて売買価格が低めとなる傾向があるものの、売買の成立も現金化もスピーディな点は買取ならではの魅力です。

仲介のメリット・デメリット

仲介の主なメリット・デメリットについて、買取との比較で見てみましょう。

メリット

仲介の主なメリットは、不動産市場における適正価格(相場)に近い価格で売れる可能性が高い点です。
仲介での売却活動に際し、仲介する不動産会社は比較的余裕のある時間の中で、より広い範囲に宣伝活動を行うことが可能となります。結果として、より高値で購入してくれる買主と巡り合うチャンスが広がるため、買取に比べると高値で売れる可能性があるでしょう。

デメリット

売却が成立するまでに、不動産会社による宣伝活動や買主探し、買主がローンの契約を組むための審査期間などを必要とするため、売買が成立するまでに長い時間を要します。
現金化を急いでいる方は、時間的な焦りを感じるかもしれません。

また、買取とは違い、買主に対して売主は契約不適合責任を負うことになります。
契約不適合責任とは、売買成立後に契約内容と合わない部分が発覚した場合、売主の負担で契約内容に合致させる責務のこと。
例えば、契約時に「雨漏りはない」と説明していたにもかかわらず、実際には雨漏りがあった場合、売買成立後でも売主が費用を負担して修理しなければならない責務が契約不適合責任です。

他にも、買取では掛からない「仲介手数料」がかかることも、仲介のデメリットと言えるでしょう。

買取のメリット・デメリット

買取の主なメリット・デメリットについて、売却との比較で見てみましょう。

メリット

売却とは異なり、売却活動のための期間が短くなります。売買成立までがスピーディで、かつ現金化も早い点が、買取における最大のメリットになるでしょう。

また、売却とは異なり、買取では売主に契約不適合責任が課されません。
買取成立後、対象物件に契約内容とは異なる不具合が発覚したとしても、買主たる不動産会社の負担で修繕などを行います。この点も、売主には大きな安心材料となるでしょう。

加えて、仲介手数料が掛からない・築古物件でも売れやすいといった点が、買取の主なメリットです。

デメリット

買取による売買代金は、相場より低めになる傾向があります。
不動産会社が買取を行う目的は、仕入れた不動産に価値を付加して販売し、利益を得ること。利益を確保するためには販売する価格よりも安く仕入れる必要があるため、買取の価格は低めに設定されることが通常です。

ちなみに買取価格の相場は、一般市場の相場に比べて6~8割程度になることがあります。少しでも高く投資用マンションを売りたい方には、あまり向いていない方法かもしれません。

他にも、物件の状態によっては買取をしてもらえないことがある点や、すべての不動産会社が買取に対応しているわけではない点なども、買取のデメリットになります。

こんな物件は買取向き

ここでは、仲介による売却よりも買取が向いていると考えられる物件の特徴を紹介していきます。

部屋の状態が良くない物件

築古などの理由で部屋の状態が良くない物件は、内覧者への印象を悪くしてしまうことがあるため、価格を下げてもなかなか売れないことがあります。
一方で買取を行っている不動産会社は、物件をリノベーションするなどして状態を良くしてから売却活動を行うため、状態の悪い部屋でも買取を検討します。

残置物が多い物件

残置物(建物に後付けされた設備や家具、家電製品など)が多い物件については、一般に売主が自分で処分してから売却を行います。しかし残置物の処分には手間や時間がかかることから、多くの売主は「できれば残置物を残したまま売りたい」というのが本音のようです。

買取を行っている不動産会社の中には、残置物を残したままの物件でも買取を行っているところが少なくありません。
残置物を処分する手間や時間を省きたい方は、売却よりも買取のほうが合っていると言えるでしょう。

また、買取の場合は売主が契約不適合責任を問われません。例えば「残置物を撤去してみたら床が抜けていた」などという事後的な不具合についても、売主は責任を負う必要がありません。

事故物件

事故物件とは、比較的近い過去に何らかのトラブルがあった物件を言います。例えば、事件や事故によって人が亡くなった物件などです。

これら事故物件を売却する際には、一定期間にわたり事故があったことを公表するルールとなっているため、なかなか買主が現れません。たとえ買主が現れたとしても、大幅な値下げ交渉をされる可能性もあります。
オーナーには固定資産税等の維持費が発生し続けるため、多くの事故物件のオーナーは、少しでも早く物件を手放して仕切り直したいと考えるでしょう。

不動産会社では、一般市場で売れにくい事故物件でも買取へ応じてくれることがあります。

こんな人には買取がおすすめ

現金化を急いでいる人

売買の成立が早く、スピーディに現金化できることが買取の最大のメリットです。
相場より多少安くなったとしても、一刻も早く現金を手にしたいという方には、売却より買取が適しているでしょう。

最小限の手間で売却したい人

買取は、不動産会社と契約を結ぶだけで売買が成立します。
時間をかけた売却活動や内覧対応、買主との価格交渉など、手間のかかる対応はほとんどありません。

最小限の労力で投資用マンションを手放したいと考えている方には、売却より買取のほうが合っているでしょう。

売却活動が長引いている人

築古などの理由で買主が現れず、売却活動が長期化している物件は、以後も売却活動の長期化が想定されます。
売却活動が長引くほど物件は老朽化し、ますます売れにくくなる可能性があるため、早めに不動産会社に買取してもらうことも選択肢となります。

入居者がいる状態でも買取を利用することが可能

入居者がいる状態の投資用マンションでも、買取や売却をすることは可能です。
入居者はそのまま住み続けてマンションの所有者のみが代わることから、このような買取・売却を「オーナーチェンジ」と言います。オーナーチェンジは、特に投資用マンションの出口戦略として多く用いられている手法です。

なお、入居者がいてもいなくても、売却・買取の段取りに大きな違いはありません。売却・買取に先立って入居者へ通知する必要はなく、オーナーチェンジが済んだ後にその旨を入居者へ伝えれば良いとされています。
メリットやデメリットについても、入居者がいない場合における売却・買取と特に変わりません。

売却はどのようなタイミングで検討すべきか?

売却に適したタイミングが訪れれば、いつでも売却できるよう臨戦態勢を整えておくことが大切です。
以下では、投資用マンションの売却に適した主なタイミングを4点ほどご紹介します。

大規模修繕が行われる前

大規模修繕とは、一定期間ごとに行われるマンションの外壁・共有部分などの大掛かりなメンテナンスを言います。

大規模修繕が行われた直後のマンションは資産価値が上がるため、投資用マンションの売却に際しては、大規模修繕後が有利とする考え方もあります。
しかし、実際には逆に大規模修繕前のほうが有利になることも少なくありません。
大規模修繕にかかる費用は、マンションの所有者たちが定期的に支払う形で積み立てている修繕積立金ですが、これだけでは不足してしまうことが多くあります。
もし修繕積立金だけでは足りなかった場合、追加的にマンションの所有者から修繕費を徴収することに。この追加徴収の金額は決して安くなく、場合によっては100万円を超えることもあります。

大規模修繕前の所有者向けの説明会で追加徴収される予定の金額を確認し、金額次第では大規模修繕の前にマンションを売却することも検討してみたほうが良いでしょう。

空室期間が長くなったとき

リフォームなどの空室対策を行っているにもかかわらず、空室の頻度や空室期間が長くなってきた場合にも、売却を検討しましょう。
早めにその投資用マンションを売却して、より空室率の低い投資用マンションに乗り換えることを検討してみたほうが良いかもしれません。

路線価が上昇しているとき

路線価とは、土地の価値を示す一つの基準。路線価が高くなってきた地域では、同じ地域にあるマンション価格も一緒に高くなる傾向があります。

投資用マンションの出口戦略を探している方は、常に周辺の路線価を確認しておくのがおすすめです。路線価が上昇してきたタイミングを狙って投資用マンションの売却活動をすれば、より有利な価格で売却できる可能性があるでしょう。
なお、路線価は、国税庁が公開している「路線価図・評価倍率表」で確認できます。

>路線価図・評価倍率表(国税庁) https://www.rosenka.nta.go.jp/

減価償却が終わるとき

投資用マンションにおける減価償却とは、購入に要した費用を法定耐用年数に分散して経費計上する会計処理を言います。
減価償却を経費計上すれば、その年度の収益と損益通算できるため、一定の節税効果を得ることができます。

逆に言えば、法定耐用年数が訪れると、以後は減価償却を行えなくなることから、それまでのような節税効果を得られません。
減価償却の節税メリットを最大限に享受するためには、法定耐用年数が終わる直前に投資用マンションを売却する方法が有効です。

投資用マンションの仲介売却に関する基本

不動産会社の仲介による投資用マンションの売却について、基本的な知識を確認しておきましょう。

不動産会社と結ぶ媒介契約の種類

不動産会社の仲介により投資用マンションを売却する場合には、事前に不動産会社と媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類。対象となる投資用マンションの状況や売主の希望に応じ、いずれかの媒介契約を選択して売却活動を進めていきます。

それぞれの媒介契約の特徴を確認しておきましょう。

一般媒介契約

一般媒介契約とは、複数の不動産会社と同時に締結できるタイプの媒介契約を言います。契約した不動産会社だけではなく、売主本人が買主を探す売却活動を行うこともできます。
一般媒介契約を結んだ不動産会社は、対象となる投資用マンションの売却情報について、レインズ(※)へ登録する義務を負いません。また、売却活動の内容や進捗を売主へ報告する義務も負いません。

※レインズとは
レインズとは、国土交通大臣指定の「不動産流通機構」が運営しているコンピューターネットワークシステムのこと。不動産市場の活性化や売買の迅速化などを目的に、全国の不動産会社から多くの「売りたい」「買いたい」という情報がシステムに登録されています。
ほとんどの不動産会社は、レインズを利用できる全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)か全日(全日本不動産協会)に加盟しています。

専任媒介契約

専任媒介契約とは、1社の不動産会社とのみ結ぶ媒介契約のひとつです。
契約した不動産会社に売却活動を進めてもらう一方で、売主本人が買主を探す売却活動を行うことも可能。ただし、売主本人が買主を見つけた場合でも、不動産会社に不動産仲介手数料を支払って売買契約を結ぶことになります。

専任媒介契約を結んだ不動産会社は、契約締結から7日以内に、対象となる投資用マンションの売却情報をレインズへ登録する義務を負います。
また、2週間に1度以上の頻度で、売主へ売却活動の内容や進捗を報告する義務も負います。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約とは、1社の不動産会社とのみ結ぶ媒介契約の1つです。契約した不動産会社に売却活動を進めてもらう形が原則で、売主本人が買主を探す活動は認められていません。

専属専任媒介契約を結んだ不動産会社は、契約締結から5日以内に、対象となる投資用マンションの売却情報をレインズへ登録する義務を負います。また、1週間に1度以上の頻度で、売主へ売却活動の内容や進捗を報告する義務も負います。

仲介にかかる主な費用

仲介によるマンション売却にかかる費用には、主に次のようなものがあります。

  • 不動産仲介手数料
  • 印紙税
  • 登記費用(登録免許税)
  • 司法書士報酬 など

これらのうち、不動産仲介手数料と印紙税は、売却価格が高ければ高いほど金額が高額となります。
登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。土地1筆につき1,000円、建物1つにつき1,000円です。

売却にともなって必要となる登記手続きを司法書士に依頼した場合、司法書士報酬として2~3万円程度の費用がかかります。
また、売却によって譲渡所得が生まれた場合には、譲渡所得税や住民税、復興特別所得税などが掛かるので、確定申告も忘れないようにしましょう。

他にも、必要に応じてリフォーム代やハウスクリーニング代などがかかる場合もあるでしょう。

売却・買取における譲渡所得の計算方法

投資用マンションの仲介・買取で譲渡所得が生じた場合には、譲渡所得に一定の税率を乗じた譲渡所得税の納税義務が生じます。
譲渡所得は、「譲渡価額」から「取得費」と「譲渡費用」を差し引く形で算出します。算出の大きな流れは次の通りです。

1.取得費を計算する

投資用マンションの物件購入費用に各種費用を加算した上で、累積減価償却費を差し引いて取得費を算出します。

2.譲渡価額から譲渡費用を差し引く

投資用マンションの売却代金(譲渡価額)から、譲渡に要した各種費用を差し引きます。

3.「2」から「1」を差し引く

「2」から「1」を差し引いて算出された金額が譲渡所得です。
譲渡所得がマイナスとなった場合には、譲渡所得税や住民税等が非課税となります。

投資用マンションの売却価格は収益還元法で計算される

不動産の価格を算出する方法には、大きく分けて「収益還元法」「原価法」「取引事例比較法」の3種類があります。これらのうち、投資用マンションの価格については、収益還元法で算出されることが一般的です。

収益還元法とは、対象となる投資用マンションから将来的に得られる収益を考慮して価格を算出する方法。「直接還元法」と「DCF法」の2種類があります。
直接還元法とは、不動産が生み出した1年間の収益を、その不動産から得られるであろう妥当な還元利回りで割り戻し、収益還元価格を求める方法です。
DCF法とは、将来得られる収益と売却予想価格を現在の価値に割引き、それらを合わせて不動産の価値を求める方法です。

ともに計算が複雑なので、投資用マンションの売却価格を計算する際には専門家に相談する必要があるでしょう。