売却

投資用マンションを解体して売却するべきなのはどんな時?

2022年5月29日

投資用マンション1棟まるごとの売却をお考えの方の中には、建物を残したまま売却すべきか、それとも建物を解体して更地にして売却すべきかという点にお悩みの方もいることでしょう。
確かに、古いマンションを残したまま売却するよりは、更地にして売却したほうが、空室であれば価格も高くなる傾向があります。ただし、古いマンションを解体することは、思うほど簡単ではないことも理解しておいたほうが良いでしょう。

ここでは、一棟マンションは更地にしてから売るべきかどうかをテーマに解説しています。

建物が古くても建物付きのまま売ること

まずは、たとえ投資用マンションが古かったとしても、解体せず建物付きのままで売却する方向で検討してみましょう。

解体するには多額の費用がかかる上、多くのプロセスや手間が必要です。
また、当該マンションに入居者がいる場合には、借地借家法によりオーナーの都合のみで退去させることはできません。もし入居者を退去させたいならば、オーナーが引っ越し費用を負担することに加え、立退料を要求されることもあります。
場合によっては入居者が立ち退きに応じず、解体できないまま膠着状態になるかもしれません。

確かに、空室の古い建物付きのままで売却するよりは、更地にしてから売却したほうが、手元に入るお金も高くなる傾向があります。しかし、解体にともなうこれらの要素を考慮すれば、必ずしも割に合う選択肢とは言えません。
建物が古かったとしても、建物付きのままで売却を検討することを考えましょう。

更地にしてから売却するメリット

更地にしてから売却することのメリットがあることも事実です。
主なメリットを3点ほど見ておきましょう。

買主の層が広がる

更地にしておくことで、買主には建物を解体する手間やコストがかかりません。
また、土地を購入してすぐに新築物件を建てる工事に入れるため、古い建物付きの土地よりも買主には魅力的に感じられることでしょう。

また、更地であれば、投資用マンションの経営に限らず、様々な用途に利用可能です。利用可能な範囲が広がれば、買主の層も広がる可能性があります。

建物付きより高い価格になることもある

建物付きの土地に比べると、更地のほうが高い価格になることもあります。
とりわけ都心部などには余っている土地が少ないことから、多様な用途に利用できる更地は特に好条件での取引が期待できるでしょう。

解体費用を経費にできる

解体に要した費用は、更地の譲渡費用として経費に計上可能です。解体費用は高額になるため、経費計上で少しでも節税につなげたいものです。

更地・建物付き、どちらで売るべきかの判断基準

更地にしてから売るべきか、それとも建物付きのまま売るべきかについては、オーナーの意向や物件の状況により異なります。

以下、更地にしてから売ったほうが良い人の例、および建物付きのまま売ったほうが良い人の例をご紹介します。

更地にしてから売ったほうが良い人の例

以下に該当する人は、更地にしてから売ることを検討してみたほうが良いでしょう。

  • 所有する投資用マンションがあまりにも古すぎる
  • 所有する投資用マンションの耐震性に問題がある(新耐震基準に適合していない)
  • 所有する投資用マンションが都市部にある
  • 少しでも多くの買主候補に更地購入を検討してほしい

とりわけ耐震性に問題のある投資用マンションは、建物付きのままでは売却しにくいこともあるため、解体して更地にしてから売却することを検討しましょう。

建物付きのまま売ったほうが良い人の例

以下に該当する人は、建物付きのまま売ることを検討してみましょう。

  • 所有する投資用マンションの資産価値が高い
  • 再建築できない土地に投資用マンションが建っている
  • 土地の査定価格より解体費用のほうが高い

建築基準法の改正によって再建築できない土地である場合や既存不適格建築物の場合には、建物を解体せず、そのまま売却したほうが売りやすくなります。

建物を解体して更地にする際の注意点

投資用マンションを解体して更地にする際の注意点を確認しておきましょう。

固定資産税が高くなる

土地に住宅(投資用マンションを含む)が建っている場合、特例が適用されて固定資産税は更地より割安になります。

建物を解体して更地にすると、この特例が適用されなくなるため、固定資産税大きく上がります。解体後、なかなか買主が見つからない場合には、買主が見つかるまで高額な固定資産税を納め続けることになるのです。

また、土地に住宅が建っている場合、固定資産税と同様に都市計画税でも特例が適用されます。
建物を解体して更地にすれば、都市計画税も増額されるでしょう。

再建築できないことがある

建築基準法で再建築不可とされた土地に建つ投資用マンションを解体すると、その土地には新たな建物を建てることができなくなります。
再建築不可となっている更地を売却する場合には、買主にその旨を注意喚起する必要があります。

再建築不可の土地とは、具体的には「接道義務」を果たしていない土地のこと。建築基準法における「道路」(幅員4m以上)に2m以上接している土地でなければ、その土地に新たな建物を建てることはできません(既存の建物を維持することは可能です)。

再建築で建物が小さくなることもある

再建築が可能な土地であったとしても、既存不適格の建物を解体した場合には、新たに建てる建物が小さくなることもある点に要注意です。
既存不適格の建物とは、定められた建ぺい率や容積率を超えている建物のこと。そのままの状態で建物を維持することはできますが、解体して新たに建物を建てる場合には、規定の建ぺい率・容積率の範囲内に収める必要があります。
そのため、既存の建物に比べてサイズが小さくなることもあります。

高額な解体費用がかかる

投資用マンションの解体には、高額な解体費用がかかります。
更地の売出価格に解体費用を上乗せできますが、価格が高くなる分、買主が見つかりにくくなるリスクもあるでしょう。

更地にするために必要なこと

投資用マンションを更地にして売却するためには、解体業者に作業を依頼することに加え、以下のような点に留意する必要があります。

買主との契約条件を十分に確認する

投資用マンションを解体して更地として売却する場合には、後々のトラブルのリスクを最小限に抑えるため、売買の契約条件を十分に確認しておくことが大切です。

例えば、契約内容に「ローン特約」が設定されている場合には要注意。ローン特約とは、「もし買主がローンの審査に不合格となった場合には、売買契約が白紙に戻る」という特約です。
この特約が設定されている場合、解体後に買主がローンの審査に不合格となれば、高額な解体費用をかけたにもかかわらず土地を売れないという事態に陥ります。

他にも、売買契約には様々な特約が設定されます。売買契約を結ぶ際には、それら特約の意味やリスクを十分に理解しておくことが大切です。

解体前に地歴調査を行う

古くから利用されている土地の場合、解体中に地中埋設物が発見されることも少なくありません。もし地中埋設物が発見されれば追加工事が必要となり、予定外の出費がかさむことになります。

このような予定外の事態を避けるためには、建物の解体前に地中埋設物の有無を確認する地歴調査が必要です。
地歴調査の結果、地中埋設物の存在が示唆された場合には、追加費用をかけてまで解体したほうが良いのかどうか、検討の余地が生まれるでしょう。

なお、地歴調査には一定の費用や期間がかかりますが、地歴調査済みであることは買主に対するアピールポイントとなるので、必ずしもマイナスばかりではありません。

近隣に挨拶まわりをする

投資用マンションを解体する際、解体業者は近隣に迷惑をかけないよう様々な配慮を払います。
それでも、大きな建物を取り壊す作業である以上、ある程度の騒音・振動の発生を避けられません。工事に関する近隣からのクレームが入れば、その対応のために時間がかかり、工事が予定通りに進まない可能性もあります。

解体工事を行う際には、工事期間中にトラブルへ発展しないよう、近隣住民へ誠意のある挨拶まわりをすることが必要です。解体業者も独自に挨拶まわりを行いますが、業者にまかせっきりにせず、物件のオーナーたる自分もきちんと挨拶まわりをすることが大切です。

投資用マンションの解体費用の目安

建物の解体費用は、その建物の大きさや構造、工期などによって異なります。

鉄筋コンクリート造の投資用マンションの場合、解体費用の目安は1坪あたり7~8万円ほど。木造アパートの場合には、1坪あたり4~5万円が解体費用の目安です。もちろん、立地・築年数・隣地距離等により解体費用は変わります。

解体前には事前調査が必要で、調査費用もかかります。
また解体中、実際にアスベストが含有されている部分が見つかった場合には、、アスベストの処分代が上乗せされます。その他にも、解体前の想定とは異なる状況が発覚した場合、工期が伸びて予想以上の解体費用になることがあります。

法定耐用年数と建物の寿命は異なる

「法定耐用年数となったから解体したほうが良い」とお考えの方もいるかと思いますが、「法定耐用年数イコール建物の寿命」というわけではない点にご注意ください。

法定耐用年数とは、国税庁が定めた減価償却上の会計処理に登場する考え方。例えば鉄筋コンクリート造の場合は47年、木造住宅の場合は22年とされています。
設定された法定耐用年数に応じて、建物の購入費用を年毎に分散する形で減価償却費を計上していく、という考え方です。

しかし、実際には、メンテナンスをしっかりと行っていれば、法定耐用年数を超えても安全に建物を使用し続けることが可能です。
鉄筋コンクリート造の建物の場合、法定耐用年数は47年、一般的に言われている寿命は60年、物理的な寿命は100年を超えるとされています。法定耐用年数が到来したことを解体・更地化の理由とする場合には、いったん立ち止まり、本当に解体する必要がある物件かどうかを検討し直す必要があるでしょう。

なお、一般的にマンションには「住宅性能表示制度」があり、各マンションには劣化対策等級として1~3の評価数値が付けられています。
この評価数値を基準とした場合、等級2の建物の寿命は約50~60年、等級3の建物の寿命は約75~90年とされています。等級1の建物の場合には、建築基準法に定める対策がなされます。