不動産投資の基礎

検査済証は再発行できる?

2023年12月18日

過去に建築物の完了検査を受けたものの、その時に交付された検査済証を紛失してしまったという方も少なくありません。

建築物をスムーズに売却するためには検査済証が必要ですが、紛失した検査済証を再発行してもらうことは不可能。検査済証の代替書類により、建築物の適法性を証明しなければなりません。

検査済証の再発行はできない

検査済証は再発行できません。
建築物を建てた後、完了検査を受けて適法性を確認してもらうことで交付される検査済証。建築物の売却や用途変更などに必要となる書類ですが、紛失している場合、再発行は困難です。

検査済証を再発行できない理由は、検査済証が非常に重要な証明書類であるからに他なりません。建築物の適法性を証明する重要書類が世の中に複数存在した場合、偽装や偽造されたものも出回る可能性があるでしょう。

どれが本物か分からない検査済証が世の中にたくさん存在すると、建築基準法の存在意義さえあやふやになります。

検査済証の信憑性や価値を維持するため、再発行はしないルールとなっています。

「検査済証なし=違法建築」ではない

検査済証がないこと自体、即違法建築となるわけではありません。

検査済証がない理由の1つは、そもそも完了検査を受けていなかったこと。検査済証は完了検査を受けなければ交付されない書類なので、完了検査を受けていない建築物のオーナーは、はじめから検査済証を持っていません。

完了検査とは建築物の適法性をチェックする検査ですが、完了検査を受けていない以上、その建築物は「適法かもしれないが適法でないかもしれない」という曖昧な状態。即違法になるわけではありません。

また、過去に完了検査を受けて検査済証を交付された建築物の場合、たとえ検査済証を紛失していたとしても、少なくとも建築当時は適法だったということになります。

つまり、完了検査を受けずに検査済証を交付されていない場合であっても、完了検査の後に交付された検査済証を紛失した場合であっても、どちらも「検査済証なし=違法建築」というわけではありません。

検査済証を持たないことで何らかのペナルティを課されるわけではないので、その点ではご安心ください。

なお、建築時は適法な建築物だったとしても、その後の法改正により、現行法に適合しなくなった建築物もあります。

そのような建築物を「既存不適格建築物」と言いますが、既存不適格建築物は、そのままの用途で使用し続ける限り違法とはなりません。ただし、増改築や用途変更を行う際には、現行法に適合させる必要があります。

検査済証のない建築物は何が困るのか?

検査済証がないこと自体で違法建築となるわけではないので、そのままの状態で建築物を利用し続ける限り、特別に困ったことは生じません。

ただし、その建築物を売却する際には、検査済証がないことで売却活動をスムーズに進められないこともあります。その主な理由を2点ほど見てみましょう。

違法建築物だった場合、買主も責任を問われるから

検査済証がなくても即違法建築物となるわけではありませんが、違法建築物である可能性がゼロでもありません。もし違法建築物だった場合、売主だけではなく、事情を知らずに購入した買主も責任を問われます。

自己負担で一部解体などを余儀なくされる可能性もあるでしょう。
そのようなリスクを含んだ建築物は、なかなかスムーズに売却できない可能性があります。

違法建築物だった場合、増改築や用途変更ができないから

購入した建築物が違法建築物だった場合、買主は自由に増改築や用途変更できません。

建築物の改修や用途変更を前提に建築物を購入する人も多いことから、検査済証のない建築物は、なかなか売れにくいのが現状です。

検査済証のない建築物を売るためにはどうすれば良いか?

検査済証の再発行ができない以上、検査済証のない建築物をスムーズに売却するためには、何らかの代替策を講じる必要があります。検査済証の提出に代わる代替策を3つほど確認しましょう。

台帳記載事項証明書

台帳記載事項証明書とは、過去に確認済証と検査済証の交付を受けた履歴が記載されている証明書のこと。役場の建築指導課などに申請することで取得できます。

台帳記載事項証明書に検査済証の交付日と交付番号が書かれていれば完了検査を受けている証明になります。

建築基準法適合調査

国土交通省が定める「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に従い、専門機関の建築基準法適合調査を受けることで、建築物の適法性を証明できます。

建築基準法適合調査は完了検査を受けていない建築物でも対象となります。

12条5項報告書

建物が建築基準法違法であれば、建築主事が在籍している役場・自治体などに、建築士が調査し建築物に関連する各種書類とあわせて「12条5項報告書」と呼ばれる書類を提出します。違法でなければ訂正しなければなりません。

建築主事の審査に合格すると「12条5項報告書」の副本が交付され、この副本の存在をもって増改築や用途変更が可能となります。

【まとめ】検査済証は唯一無二の大事な書類

もとから完了検査を受けていない場合には検査済証も手元にありませんが、たとえ完了検査を受けていたとしても、紛失した検査済証を再発行してもらうことはできません。

検査済証は唯一無二の書類なので、交付されたら厳重に保管しておくことが大事。万が一紛失し、建築物の売却に支障が出た場合には、専門家に相談して適切な代替書類を用意しましょう。