不動産投資の基礎

収益物件の修繕費用の目安とは?修繕費を抑えるポイントをご紹介

2023年11月6日

収益物件を運用する上で避けることのできない支出の1つが修繕費。

なるべく修繕費をかけないほうがマージンを多く確保できるものの、定期的に修繕しなければ空室率が上がる可能性もあることから、収益物件の投資家にとって修繕費は必要不可欠な支出となります。

例えばRC造マンションの場合、一般的には築12年ほどで補修・塗装工事が必要とされていますが、築12年目を迎えた1棟マンションをお持ちの方は、すでに補修・塗装工事を終えているでしょうか?

投資を行ったマンションから安定的な収益を確保するため、計画的な修繕計画と計画的な資金計画を立てていきましょう。
ここでは、収益物件の修繕に掛かる費用の目安、修繕費を安く抑えるコツなどについて詳しく解説しています。

収益物件の修繕に関連する3種類の費用

収益物件の修繕と聞き、最初にイメージするのが大規模修繕でしょう。区分マンションに投資をしている方は、大規模修繕に備えた修繕積立金の負担が決して軽くありません。

大規模修繕を含め、修繕に関連してオーナーが負担する3種類の費用を確認してみましょう。

大規模修繕に掛かる費用

大規模修繕とは、マンション・アパート全体を対象とした大がかりな修繕工事のこと。マンションの外周に足場を設けて大規模修繕を行っている景色は、日常でも時々目にします。

大規模修繕は、物件全体の外観を美しくするだけではなく、物件の安全性や耐久性も高めて資産価値を維持するための必須の修繕。費用は区分マンションのオーナーが「修繕積立金」として負担しています。

修繕予防に掛かる費用

修繕予防とは、大がかりな修繕が発生しないよう予防的に行う修繕のこと。不具合を早期発見し、大事に至る前に行う比較的軽微な修繕です。

外壁の不具合の有無をチェックするなど、各種の検査も修繕予防の1つとされています。

小規模修繕(原状回復)に掛かる費用

小規模修繕とは、入居者が退去した後のクリーニングや内装整備、共用部分の日常的な修繕など。基本的に入居者退去後の原状回復修繕は、賃貸借契約の際に入居者から支払ってもらった敷金があれば敷金でまかなわれる形となります。

収益物件に発生する主な不具合の箇所と修繕する時期の目安

一般的な収益物件に発生する主な不具合の箇所、および、それぞれの箇所で不具合に対して必要な修繕について見てみましょう。

なお、不具合の発生個所や発生時期は、物件の構造や資材、立地などによって異なります。以下は一般的な目安となります。

  • 【不具合の発生個所1】屋根
    塗装・補修、防水・葺替は11年~20年目に必要とされています。
  • 【不具合の発生個所2】外壁
    塗装は11~18年目、タイル張り保証は12~18年目に必要とされています。
  • 【不具合の発生個所3】給排水管
    高圧洗浄は5年目、取替は30年目に必要とされています。
  • 【不具合の発生個所4】階段・廊下
    鉄部塗装は4~10年目、塗装・防水は11~18年目に必要とされています。
  • 【不具合の発生個所5】給湯器・エアコン
    11~15年目に交換が必要とされています。

以上のように、収益物件は様々な箇所で修繕が必要となるため、健康的な状態を維持していくためには一定の支出を避けられません。

もし支出を節約するために修繕を怠った場合、周辺の物件に対する競争力低下から、家賃を下げざるを得ない事態になるでしょう。家賃を下げれば、修繕に掛けられる支出が減るため、さらに修繕の時期が先延ばしとなります。

やがて入居者から関心を持たれなくなり、家賃を下げても空室が目立つ物件になるかもしれません。

なお、修繕を怠ることで収益物件が経営不能に陥っていく状況のことを、国土交通省は「負のスパイラル」と称してオーナーへ注意喚起しています。

【物件別+築年数別】修繕費の目安

一戸あたりに掛かる修繕費

←左右にスクロールできます→
築年数 修繕箇所 RC造20戸(1LDK~2DK) RC造10戸(1K) 木造10戸(1LDK~2DK) 木造10戸(1K)
5~10年目 ベランダ・階段・廊下(塗装) 約9万円 約7万円 約9万円 約7万円
室内設備(修理)
排水管(高圧洗浄等)
11~15年目 屋根・外壁(塗装) 約55万円 約46万円 約64万円 約52万円
ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)
給湯器等(修理・交換)
排水管(高圧洗浄等)
16~20年目 ベランダ・階段・廊下(塗装) 約23万円 約18万円 約23万円 約18万円
室内設備(修理)
給排水管(高圧洗浄等・交換)
外構等(修繕)
21~25年目 屋根・外壁(塗装・葺替) 約116万円 約90万円 約98万円 約80万円
ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)
浴室設備等(修理・交換)
排水管(高圧洗浄)
26~30年目 ベランダ・階段・廊下(塗装) 約23万円 約18万円 約23万円 約18万円
室内設備(修理)
給排水管(高圧洗浄等・交換)
外構等(修繕)
1戸あたりの合計 約225万円 約177万円 約216万円 約174万円
30年目以降も修繕が続きます

※表は「国土交通省 住宅局住宅総合整備課賃貸住宅対策室|民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」を編集部がまとめたものになります。
※参照:https://www.mlit.go.jp/common/001231406.pdf

修繕費用を安く抑えるためのコツ

建物の健康を維持して長期的に安定した収益を確保するため、定期的な修繕は必須となります。しかしながら、なるべくオーナーの実収入を増やすためには、可能な限り修繕費を節約したいものです。

以下、少しでも修繕費を安く抑えるためのコツについてご紹介しましょう。

修繕を行っている施工業者へ直接発注する

1棟マンションのオーナーはもとより、区分マンションのオーナーにおいても、物件の管理を管理会社へ一任している例が一般的です。

その流れの中で、修繕のタイミングや業者選定も管理会社に一任している例が見られますが、管理会社を通して修繕を行うと中間マージンが上乗せされるので注意が必要です。

修繕工事について、直接的に管理会社が行うことはありません。管理会社が元請けとなり、付き合いのある下請けの施工会社へ発注しているに過ぎません。

この際、管理会社は自社の中間マージンを上乗せした価格をマンションオーナーへ請求します。

契約上、避けられないならば管理会社へ修繕を一任するしかありませんが、自分で発注しても構わない契約であれば、オーナー自身が施工会社を見つけましょう。

なお、収益物件を取り扱っている不動産会社の中には、自社の中に施工部門を設けているところもあります。

収益物件を購入する際、初めからそのようなタイプの不動産会社を選べば、自分で施工業者を探す手間なく中間マージンを排除することもできます。

相見積もりを取って施工業者を決める

オーナー自身が修繕の施工業者を探すならば、1社ではなく複数の業者から相見積もりを取りましょう。

似たような工事内容であるにも関わらず、業者により見積りが大きく異なることもあります。高すぎる業者は論外ですが、安すぎる業者も考えもの。見積りが安くても、追加料金で高くなる業者もあるので注意が必要です。

なるべく多くの業者から見積りを取れば、修繕の相場感が分かります。この相場感を軸に、高すぎず安過ぎず、そして信頼できる業者を選ぶようにしましょう。

築年数の浅い物件に投資する

基本的なことですが、修繕費を安く抑えるためには、築年数の浅い物件に投資することが大切です。

収益物件は、築年数が古くなるほど修繕の必要が増えていくもの。建物だけではなく設備の寿命も考慮すれば、なるべく築浅の物件に投資したほうが修繕費の節約につながります。

なお、将来的な買い替えを予定している場合でも、保有期間が5年以下の場合には売却時の税金が高くなるため、短くても6年程度は保有したほうが良いでしょう。

修繕費の掛かるタイミングから逆算すれば、「築2~3年の物件に投資し、築10年になる前に買い替える」というサイクルを繰り返せば、長期的には修繕費を大きく節約できるでしょう。

【まとめ】長期的視野に立って適切な修繕を行いましょう

収益物件の修繕について、工事のタイミングや費用の目安、修繕費用を安く抑えるためのコツなどをご紹介しました。

収益物件の投資家にとって頭の痛い修繕費ですが、定期的に適切な修繕を行うことで、物件の価値が長期的に維持されます。

収益物件での資産運用は、プロの投機筋でもない限り、長期投資を前提としたインカムゲインの獲得が目的。目先の支出に惑わされず、長期的視野に立って適切な修繕を行いましょう。