不動産投資の基礎

収益物件を売却せず自分で住む事は可能?

不動産

2024年1月16日

収益物件とは、入居者から家賃をもらって収益を上げるための投資対象ですが、中には何らかの事情で、家賃収入という収益を放棄して自分で住もうと考える方もいます。

しかしながら、収益物件を購入する際、銀行からは住宅ローンではなく不動産投資ローンを契約しているはず。ローンの目的が異なる状況の中、自分で住むことは可能なのでしょうか?

ここでは、収益物件に自分で住むことをテーマに、押さえておきたい基本的な情報を提供しています。

収益物件に自分で住むことは可能

後述するいくつかの注意点はありますが、収益物件に自分で住むことは可能です。

はじめから住居用として購入した物件であれ、当初は投資を目的とした物件であれ、自分で契約して自分で購入した物件であることに変わりありません。

自分が所有している物件である以上、これをどのように取り扱うも、個人の自由です。家賃収入が途絶えても良いと考えるならば、収益物件に自分で住むという選択肢も「アリ」です。

ただし、実際に収益物件へ住むにあたっては、次の点に注意が必要。住みたくても住めないこともある、ということも理解しておきましょう。

収益物件に自分で住めないこともある

基本的に、収益物件へ自分で住むことは可能です。ただし、次のような場合には、自分で住むことができない場合もあります。

入居者がいる

入居者がいる収益物件に、オーナー自身が住むことはできません。「自分の所有物だから、入居者を退去させられるのでは?」と考える方がいるかもしれませんが、基本的に入居者をオーナーの一存で退去させることはできません。

借地借家法第28条には、正当な理由なくしてオーナーは入居者を退去させられない旨が規定されています。「自分が住みたいから」という理由は、入居者を退去させるための正当な理由として認められません。

不動産投資ローンの返済が残っている

不動産投資ローンの返済が残っている場合、ローンの対象となる収益物件に自分で住むことは難しいでしょう。

不動産投資ローンとは、不動産投資を目的に資金が必要な方へ対し、銀行が各種審査のうえ実行する融資です。自分で物件に住みたい方は、不動産投資ローンではなく住宅ローンを契約しなければなりません。

そのため、不動産投資ローンで購入した収益物件に自分で住むことは、銀行に対する契約違反となります。どうしても自分で住みたい場合には、あらかじめ銀行に相談して許可を得ておく必要があるでしょう。

相談の結果、不動産投資ローンの一括返済をしてから住むよう求められる可能性もあります。

収益物件に自分で住むことのメリット

収益物件に自分で住むことの主なメリットを見てみましょう。

住居にかかる全体的な支出を抑えられる

収益物件の空室が長く続いている場合、自分の住居にかかる支出と収益物件の維持にかかる支出が二重に発生する形となります。

この場合、自分の住居を手放して収益物件に引っ越せば、住居にかかる全体的な支出を抑えることが可能です。

別で自宅を探す手間がなくなる

現在住んでいる住居からの引越しを検討している場合、すでに所有している収益物件に引っ越せば、別で自宅を探す手間がかかりません。

自分が所有する物件である以上、引越しに際して敷金・礼金などのコストもかかりません。

現在より生活の利便性が高まる可能性もある

収益物件の対象となる物件は、一般的に駅近などの好条件を備えているものです。そのため、収益物件に引っ越せば、今までよりも生活の利便性が高まる可能性があるでしょう。

収益物件に自分で住むことのデメリット

収益物件に自分で住むことの主なデメリットを見てみましょう。

家賃収入を得られなくなる

収益物件に自分で住むことになれば、当然ながら、以後は家賃収入を得られなくなります。多くの投資家は家賃収入を目的に収益物件を購入しているため、自分で住めば本来の目的が失われることになるでしょう。

結果として、何を目的に物件を購入し所有しているのか、分からなくなります。「はじめから不動産投資なんてやらなければ良かった」と後悔するかもしれません。

住宅ローンより高い金利で返済を続けることになる

物件を購入する際に銀行のローンを利用する場合、自分で住む目的ならば住宅ローンを契約します。一方、投資が目的ならば不動産投資ローンを契約します。

通常、不動産投資ローンは住宅ローンよりも高金利。本来なら住宅ローンの金利で済むところ、より金利の高い不動産投資ローンの金利を支払いながら自分が住むこととなります。

なお、不動産投資ローンを途中で住宅ローンに変更することは、かなりハードルが高いと考えましょう。

銀行からローンの繰り上げ返済を求められることもある

収益物件の購入を目的に不動産投資ローンを契約する際、銀行は、家賃で得られる収入で返済することを前提に審査を行っています。

そのため、もしオーナーが自分で収益物件に住むと、銀行が審査の前提としていた家賃収入が途絶えることになるため、銀行から契約違反を指摘される可能性があるでしょう。

契約違反を理由に、銀行から不動産投資ローンの繰り上げ一括返済を求められるかもしれません。

物件を空室にしたままでは、無駄に維持費が掛かり続ける上、ローンを自腹で返済していく必要もあります。これを解消するため自分で住むことを選択しても、繰り上げ一括返済を求められるかもしれません。オーナーにとって、大変厳しい状況です。

減価償却の計上による節税ができなくなる可能性もある

減価償却とは、高額な資産を購入した際に、その購入費用を1年ごとに分散して経費計上する会計処理のこと。経費時計上した年度の収益と合わせ、利益を圧縮すれば、圧縮分に該当する税金が安くなります。

ちなみにRC造マンションの減価償却期間は47年。新築時に収益物件として購入すれば、47年にわたり節税効果を得られるということになります。

ただし、この減価償却という制度は、あくまでも「事業用の資産」を購入した時に適用されるもの。自分が住むと「住居用の資産」となるため、原則として減価償却はできず節税効果を享受できなくなります。

本来、収益物件には減価償却、住居用物件には住宅ローン控除という別々の減税措置が用意されています。

収益物件に自分で住んでも不動産投資ローンを住宅ローンに途中変更することは困難なので、住宅ローン控除は利用できません。また、自分で住む以上は減価償却費も計上できません。

せっかく用意された2つの節税対策が、どちらも利用できない形となります。

【まとめ】メリット・デメリットを比較して適切な選択肢を検討しよう

「入居者がいない」「銀行からの許可を得られた」などの一定の条件を満たせば、収益物件に自分で住むことは可能です。

空室物件を無駄にしたくない方や転居先を探す手間をかけなくない方は、自分で購入した収益物件に住むことも選択肢として検討してみましょう。

一方で、収益物件に自分で住むことにはデメリットが多いことも事実。とりわけ、銀行との交渉が難航したり減価償却費計上による節税効果が失われたりする点は、十分に納得しておく必要があるでしょう。

メリットとデメリットを比較しつつ、家族の意向も考慮しながら適切な選択肢を検討してみましょう。