不動産に関わる税金

不動産投資が所得税や住民税の節税になる仕組みとは?

2022年9月28日

1970年には24.3%だった国民の租税・社会保障料の負担率は、1979年には30%を超え、さらに2013年には40%を超え、2022年現在では46.5%まで上昇しています(※)。何らかの方法で節税したいところですが、サラリーマンの税金は給与からの天引きなので節税は難しいのが現状です。
ここでは、節税が難しいとされるサラリーマンの方々に向け、不動産投資で節税する仕組みをご紹介します。

※出典:財務省|国民負担率(対国民所得比)の推移
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/sy202202a.pdf

損益通算で所得税・住民税が節税できる

結論から言うと、「損益通算」と「減価償却」という2つの考え方をベースに確定申告をすることで、サラリーマンでも不動産投資で節税ができます。

損益通算とは

不動産投資で節税できる税金は、所得税と住民税です。
所得税とは、所得税法によって区分された10種類の所得から徴収される税金のこと。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10分類があります。

サラリーマンは主に給与所得を得ていますが、給与所得の額に応じて累進課税が適用されることは、多くの方がご存じでしょう。
一方で住民税とは、都道府県と市区町村が課税する税金のこと。課税所得に対して一律10%が住民税となります。

不動産投資における「損益通算」とは、給与所得と不動産所得を合算して課税所得を申告することです。給与所得が黒字でも、不動産所得が赤字になっていれば課税所得が圧縮され、所得税と住民税の額も減らせるという手法になります。

減価償却とは

損益通算における不動産投資の赤字を作るポイントがこの減価償却です。

不動産投資における減価償却とは

減価償却とは、事業のために購入した高額な設備等について、その購入費用を一定期間に分配して経費計上する仕組みを言います。
例えば設備の購入費用1000万円を10年に分配し、毎年100万円ずつ経費計上するなどの方法です。経費計上をした分は所得と損益通算ができるため、課税所得の額が減り、その分だけ節税につながります。

なお、経費を分配する期間を「耐用年数」と言い、設備ごとに「耐用年数」は定められています。減価償却する際には、定められた「耐用年数」の期間に分配する形で経費処理をしていく形となります。
主な設備の「耐用年数」については、以下、国税庁の資料をご覧ください。

国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

不動産投資で減価償却の対象となるのは、「建物」と「建物附属設備」のみになります。土地は減価償却の対象に含まれない点にご注意ください。

ちなみに「減価償却はお金の出ていかない魔法の経費」と言われることがありますが、実際には、すでに出ていったお金を一定期間に分配して経費計上しているだけなので、決して魔法の経費ではありません。

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法(=各年に分配する経費の算出方法)には、定額法と定率法の2種類があります。ただし、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備および構築物で使えるのは定額法のみです(※1)。

定額法とは、毎年の減価償却費が均等になるように計算する方法で、定率法とは、毎年の減価償却費が一定の割合で減少するように計算する方法。それぞれの計算方法は次の通りです。

  • 定額法による減価償却費=物件の購入価格×定額法の償却率(※2)
  • 定率法による減価償却費=未償却残高×定率法の償却率(※2)

※参考1:国税庁|減価償却のあらまし
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
※参考2:国税庁|減価償却資産の償却率等表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

不動産投資の節税の仕組み

損益通算を通じた節税の仕組み、および税率の差異を活用した節税の仕組みをご紹介します。

損益通算で課税所得を圧縮

不動産投資の節税対策として多くの投資家が行っている方法が、損益通算です。
損益通算とは、すでにご説明した通り、課税所得に対して赤字をぶつけることで課税所得を減らし、結果として税金の額を少なくする方法です。不動産投資に関連する会計処理で赤字を作り、この赤字で給与所得等を相殺して所得税・住民税を節税します。

不動産投資で赤字を作る材料としては、基本的に「不動産投資にまつわること」であれば概ね計上可能です。

最も有効な必要経費は、減価償却費になります。経費計上の際に現金が出ていかないので、キャッシュフローはプラスでも、税法上の決済は赤字にすることができるのです。
例え赤字が1万円だとしても、課税所得900万円から899万円になるだけで、所得税率が3%も下がります。3%も税率を下げることができれば、金額としては大きな節税になるでしょう。

売却時の税率の差異を利用する

投資用不動産を売却する際、購入価格よりも売却価格が高かった場合には、その利益分に対して所得税と住民税が課税されます。ただしその税率は、不動産の所有期間によって異なります。

不動産を購入して5年以下で売却した場合には、所得税率と住民税率を合わせて39.63% ですが、5年超で売却した場合には20.315% となります。このタイミングと減価償却が終了するタイミングを合わせることで、節税効果を最大限に引き出すことが可能です。
ただし、定率法を採用していた場合には、事前に資金繰りをシミュレーションしておくようにしましょう。

法人化をして節税する

法人として不動産投資を行えば、所得税や住民税が法人税に切り替わるため、下落傾向の続く日本の法人税率の下では、節税効果を得られる可能性があります。

参考までに、資本金1億円以下の法人は、課税所得800万円までの法人税率が15%で800万円を超える部分の法人税率が23.2%となっています(※)。
ただし、法人化すると確定申告に専門的な知識が必要となることから、税理士費用などのコストがかかる可能性がある点に注意が必要です。

※参考:国税庁公式HP
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

不動産所得を赤字にする方法

不動産所得を赤字にする主な方法をご紹介します。
なお、以下でご紹介する内容を曲解的または誇張的に援用し、合法的な節税の範囲を逸脱しないようにしてください。納税は正しく行うことが大前提です。

ローンの返済方法を工夫する

不動産投資ローンの返済方法には、毎月支払う返済額のうち元金額が一定となる元金均等返済と毎月の返済額が一定の元利均等返済の2種類がありますが、どちらの返済方法を選択したとしても、建物や建物に付随する設備にかかった部分のローン金利は、経費として計上することが可能です。

売却前提での場合には、減価償却費の発想と同様に、前半のほうに金利が高くなる元金均等返済を採用したほうが有利になる可能性があります。
返済シミュレーションを行い、どちらが有利になるかを確認するようにしましょう。

必要経費を積み増す

不動産投資に関連して発生した支出であれば、概ね経費として計上することができます。例えば、税理士との打ち合わせのために支出した交通費やお茶代などです。
ただし、実際には不動産投資との関連が薄いにも関わらず、無理にこじつけて経費に計上することは違法行為となります。必ず、不動産投資に関連した支出のみを経費に計上するようにしましょう。

今回のまとめ

不動産投資は、うまくいけば損益通算をすることでサラリーマンでも所得税・住民税を節税することができます。損益通算に最も有効な手法は減価償却費の計上ですが、他にも売却時の税率の差異を利用する方法、法人化して不動産投資を行う方法などがあります。

また、減価償却の計算方法や不動産投資ローンの返済方法を適切に選択したり、不動産投資に関連する各種の経費を計上したりすることでも、節税効果をもたらします。合法的に節税できる部分は、しっかりと対策を行っていきましょう。

Myアセットには、不動産投資の節税に関する専門家も在籍しておりますので、お客さまに合った投資プランのご提案が可能です。豊富な実績を背景に、プロの視点からの的確なサポートを行って参りますので、不動産投資を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。