一棟アパートの売り時はいつ?売却価格に響く4つのポイント

2025年11月12日
目次
「最近、空室がなかなか埋まらなくなった」
「そろそろ大規模修繕の時期だけど、費用負担が大きい」
「今後の管理の手間や、将来の相続のことを考えると、少し不安」
大切に管理してきた一棟アパートだからこそ、このような悩みは尽きないものです。そして、ふと「そろそろ潮時かもしれない」と売却を考え始めたとき、次に頭をよぎるのは「どうすれば損をせずに売れるのか?」という新たな疑問ではないでしょうか。
そんな方へ向けて、本記事では一棟アパートの売却タイミングから、資産価値に関わるポイント、手続きの流れまでを紹介します。
一棟アパートの売り時とは?
一棟アパートの「売り時」は、いくつかの要素が絡み合って決まります。ここでは、4つの売却タイミングをご紹介します。
不動産市場が盛り上がっているときに売る
わかりやすいのが、ニュースなどで「不動産価格が上昇中!」と報道されているような、市場全体が活気づいているタイミングです。景気が良いと、企業は設備投資や事業拡大にお金を使い、個人の給料も上がりやすくなります。すると、「不動産に投資しよう」と考える人や法人が増え、アパートのような収益物件の需要が高まります。
需要が高まれば、当然ながら物件価格は上がりやすくなります。買主が多いということは、強気の価格設定でも売れる可能性が高まるということ。市場の波に乗ることは、高値売却の基本戦略です。常にアンテナを張り、世の中の景気や不動産ニュースに少しだけ注目してみましょう。
金利が低いときに売る
不動産のような高額な買い物をする人の多くは、銀行などからローンを組んで購入します。その際に発生するのが「金利」です。金利が低いということは、買主が少ない利息でローンを組めるということ。つまり、月々の返済負担が軽くなるため、購入のハードルも下がります。
例えば、1億円の物件を金利3%で借りるのと、金利1%で借りるのとでは、総返済額に何千万円もの差が出ます。金利が低い時期は、買主にとって「今が買い時」と感じやすく、購入意欲が刺激されます。その結果、アパートの買主が見つかりやすくなり、売却がスムーズに進む可能性が高まるのです。
築年数が浅いうちに売る
アパートは、年を重ねるごとに少しずつ価値が下がっていきます。特に、金融機関が融資の際に参考にする「法定耐用年数」は買主の融資額に影響を与えるため、価格決定の重要な要素です。
一般的に、築年数が浅いほど高く売れやすい傾向にあるため、売却を視野に入れているなら価値が大きく下がる前に決断するのも賢明な選択です。
大規模修繕のタイミングで売る
アパート経営には、10年~15年に一度、外壁の塗り替えや屋上の防水工事といった「大規模修繕」が入ります。これには数百万円単位の大きな費用がかかります。「そろそろ大規模修繕が必要」という時期が近づいているなら、その費用を負担する前に売却してしまう、というのも一つの考え方です。
ただし、買主側としては、大規模修繕直後の綺麗な状態のほうを高く評価します。そのため、修繕前であればその費用分を価格交渉の材料にされる可能性があります。
ライフイベントに合わせて売る
最後は、売主の状況に合わせたタイミングです。
■ 資産の組み換え
・アパート経営で得た資金を元手に新しい事業を始めたい
・都心のマンションなど別の不動産に買い替えたい
■ 相続対策
・将来、家族が相続で揉めないように現金化して分割しやすくしておきたい
■ 管理の手間からの解放
・入居者対応や建物のメンテナンスなど、アパート経営には意外と手間がかかるもの
・年齢を重ねて管理が負担になってきた、あるいは本業が忙しくなって手が回らないから手放したい
市場の動向や資産価値の状態も大切ですが、最終的にはご自身の人生設計や資産計画に沿って判断することが、後悔のない売却につながります。
売却価格に影響する4つのポイント
一棟アパートの売却価格は、主に4つのポイントから総合的に判断されます。
1. 収益性
一棟アパートを購入する人の多くは「投資家」です。投資家が最も重視するのは、その物件が年間でどれくらいの家賃収入を生み出してくれるのか?という点。これを「収益性」と呼びます。
収益性を測るための代表的な指標が「利回り」です。利回りにはいくつか種類がありますが、ここでは一番基本的な「表面利回り」を例に紹介します。
表面利回り(%) = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
例えば、年間家賃収入が500万円のアパートを5,000万円で売却した場合、表面利回りは10%になります。投資家は、この利回りを周辺の似たような物件と比較して購入するかどうかを判断します。
当然ながら、利回りが高い物件ほど「儲かる物件」として投資家に人気があり、高く売れる可能性があります。家賃収入を安定的に確保するためには、空室が少ないことが絶対条件。満室に近い状態をキープできているアパートは、それだけで大きなアピールポイントになるのです。
2. 物件のスペック
次に重要なのが、建物そのものや土地の価値、いわゆる物件のスペックです。
■ 立地
最寄り駅からの距離、スーパーやコンビニ、病院などの生活利便施設の充実度は、入居者の確保しやすさに直結するため、最も重要な要素の一つです。単身者向けアパートなら駅近、ファミリー向けなら学校や公園の近さなどが評価されます。
■ 築年数と構造
前述の通り、築年数が浅いほど評価は高くなります。構造については、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)などがあり、一般的に頑丈で寿命が長いとされるRC造の方が評価は高くなる傾向にあります。
■ 建物の状態
外壁にひび割れはないか、屋上や共用廊下は綺麗に保たれているかといったメンテナンス状況も価格に影響します。定期的に修繕が行われ、大切に管理されてきたことが伝わる物件は、買主に安心感を与えます。
■ 法令上の制限
その土地に建てられる建物の種類や大きさを定めた「用途地域」や、接している道路の幅など、法律上の条件も価格を左右します。例えば、現在の建築基準法では建てられないような規模の建物(既存不適格建築物)の場合、建て替え時に同じ大きさの建物を建てられないため、評価が下がる可能性があります。
3. 管理状態
共用部(廊下、階段、ゴミ置き場など)が清潔に保たれているか、植栽の手入れは行き届いているかなど日頃の管理状態は内見時に必ずチェックされる点。管理が行き届いている物件は、入居者の満足度も高く、長期入居につながりやすいと判断されます。
もし自主管理をされている場合は、清掃の頻度や定期点検の記録などをまとめておくと、良いアピール材料になります。不動産会社に管理を委託している場合は、その不動産会社の評判も評価の一つになることがあります。
4. 入居者と賃貸借契約の内容
どのような人が住んでいるか(学生、単身の社会人、ファミリーなど)や、家賃の滞納履歴なども重要な情報です。安定した職業に就いている入居者が多い、滞納者がいないといった状況は、買主にとっては安心材料。
また、各入居者と交わしている「賃貸借契約書」の内容も確認されます。不適切な契約内容(極端に安い家賃設定や、オーナーに不利な特約など)があると、価格交渉の際に不利になる可能性があるため注意が必要です。
売却時にかかる費用
アパートを売却して手元に入ってくるお金は、「売却価格」そのものではありません。売却するためには、税金や不動産会社への手数料など様々な費用がかかります。後から「思ったより手残りが少なかった」と後悔しないために、どのような費用がいくらくらいかかるのか事前に把握しておきましょう。
不動産会社に支払う「仲介手数料」
不動産会社に対して成功報酬として支払うのが、仲介手数料です。売買契約が成立して初めて発生する費用で、売却にかかる費用の中で最も大きな割合を占めることがほとんどです。仲介手数料は、法律(宅地建物取引業法)で上限額が定められています。
■ 売却価格200万円以下の部分:価格の5%
■ 売却価格200万円超~400万円以下の部分:価格の4%+2万円以内の金額
■ 売却価格400万円超の部分:価格の3%+6万円以内の金額
※上記に加えて、消費税がかかる
登記手続きにかかる費用(ローンが残っている場合)
アパート購入時のローンがまだ残っている場合にかかる費用です。専門家である司法書士に依頼するのが一般的。費用の目安としては、手続きに必要な登録免許税と、司法書士への報酬を合わせて数万円程度を見ておくと良いでしょう。
その他にも、契約書に必要な「印紙税」や売却利益にかかる税金である「譲渡所得税・住民税」などが発生します。後者については、所有期間が5年経つか経たないかの場合、売却のタイミングを検討することで税負担を抑えられる可能性があります。不動産会社や税理士と相談しながらタイミングを検討しましょう。
一棟アパート売却の流れ
売却を決意してから、実際に代金を受け取るまでの流れを見ていきましょう。
Step1 情報収集と相場確認
まずは、所有するアパートがどれくらいの価値があるのか、大まかな相場を把握することから始めましょう。インターネットで似たような条件(エリア・築年数・規模など)の物件がいくらで売りに出されているかをチェックしてみるのが手軽な方法です。
実際には査定してみないとわからない部分も多いため、あくまでも「だいたい〇〇円くらいかな」という当たりをつけるのが目的です。
Step2 不動産会社に査定を依頼する
次に、複数の不動産会社に査定を依頼します。査定には、物件情報だけで算出する「机上査定」と、実際に現地を訪問して建物の状態などを確認する「訪問査定」があります。一棟アパートのような高額物件の場合は、より正確な価格を知るために必ず「訪問査定」を依頼しましょう。
複数の不動産会社から査定額や売却戦略を聞くことで、より客観的に物件の価値を判断できますし、各社の強みや担当者との相性も比較できます。査定額の高さだけで選ばず、「なぜこの価格なのか」という根拠をきちんと説明してくれる、信頼できる会社を見極めましょう。
Step3 媒介契約を結ぶ
査定内容や担当者の対応に納得できる不動産会社が見つかったら、売却活動を正式に依頼するための媒介(ばいかい)契約を結びます。媒介契約には、以下の3種類があります。
■ 専属専任媒介契約
1社にしか依頼できず、自分で買主を見つけることはできません。
その分、不動産会社が手厚くサポートしてくれます。
■ 専任媒介契約
1社にしか依頼できませんが、自分で買主を見つけることは可能。
■ 一般媒介契約
複数の不動産会社に同時に依頼することができます。
一棟アパートの場合、購入希望者が限定されるため1社に絞って集中的に販売活動をしてもらう「専任媒介契約」か「専属専任媒介契約」が一般的です。不動産会社と相談し、ご自身の希望に合った契約形態を選びましょう。
Step4 売却活動の開始
媒介契約を結ぶと、いよいよ不動産会社による売却活動がスタートします。主な活動内容は以下のとおり。
■ 不動産情報サイトへの物件情報掲載
■ 不動産会社間のネットワークシステム(レインズ)への登録
■ 既存の顧客(投資家など)への紹介
購入を検討したいという買主が現れたら、内見を行います。共用部や空いている部屋を案内することになりますが、居住中の部屋はプライバシーに配慮が必要です。内見の際は、物件を少しでも良く見せるために、共用部の清掃などを念入りに行っておきましょう。
Step5 売買契約を結ぶ
「この物件を買いたい」という意思表示(購入申込書)があれば、価格や引き渡しの時期などの条件交渉に入ります。不動産会社の担当者が間に入って調整してくれるので、ご自身の希望をしっかりと伝えましょう。
双方の条件がまとまったら、売買契約を締結します。契約時には、宅地建物取引士から物件に関する重要な説明(重要事項説明)を受け、売買契約書に署名・捺印します。このとき、買主から手付金(売買代金の5~10%程度)を受け取ります。
Step6 決済と引き渡し
売買契約から約1~2ヶ月後、金融機関などで最終的な手続きである決済と引き渡しを行います。決済日には、
■ 買主から売買代金の残額を受け取る
■ 固定資産税などの精算を行う
■ 司法書士が所有権移転などの登記申請手続きを行う
■ 物件の鍵や関連書類を買主に渡す
といったことを同時に行います。
不動産会社への仲介手数料の残額や、司法書士への報酬もこの日に支払います。すべての手続きが完了すれば、無事に売却は完了です。
なお、売却の翌年には確定申告が控えています。売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、必ず申告して納税する必要があるため、忘れずに行いましょう。
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【買取強化物件】
・種類:一棟収益用のアパート、マンション、ビル(全室空物件や社宅、寮も含む)
・売主:個人様、一般法人様、長期保有の業者様
・エリア:東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県
・価格:何千万円~10億位
・利回り:エリアによってご相談
・構造:不問(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等)
※契約不適合責任免責、現況渡し、融資特約不可、手数料、検査済証未取得物件も相談可能です。
まとめ
一棟アパートの売却では、「いつ・いくらで・どのように売るか」の見極めが大切です。ポイントを振り返ってみましょう。
■ 売り時の判断は、市場動向・金利・築年数・修繕タイミング・自身のライフイベントがポイント
■ 価格は、収益性・物件の立地や状態・管理状況・契約内容など多角的に決まる
■ 売却までの流れを把握しておくことで、余計な不安なく進められる
■ 費用や税金も事前に確認し、手元に残る金額を見通す
情報を集めた上で、信頼できる不動産会社に相談し、自分にとって納得できるタイミングで動きたいもの。資産をただ手放すのではなく、次につなげる選択肢として、売却を進めていきましょう。

