不動産に関わる税金

投資用不動産の購入は相続税対策に有利?

2021年6月28日

「現金で相続するよりも、投資用不動産を購入したほうが相続税の節税になる」と聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。しかし、なぜ節税になるのか、その理由はご存知でしょうか?
ここでは、マンションなどの投資用不動産の購入が相続税の節税につながる理由について、分かりやすく解説します。

不動産投資は相続税の節税に有効

相続税対策を考えるとき、有効な方法の一つに不動産投資があります。資産を不動産にすることで、相続税額の計算に用いられる評価額を下げる効果があるためです。
主に高齢の親など、将来に相続が発生しそうな人の資産に現金が多いときに行う方法です。

資産を不動産にしておくことで相続税評価額を下げるしくみは、主に次の2点があります。

不動産は現金よりも相続税評価額が低い

相続税は、相続する財産の相続税評価額に対して課されます。遺産が現金であれば、その評価額は残高の金額そのものになります。
不動産の場合には相続税上の評価基準があり、実際に取引される価格(実勢価格といいます)や相場より低くなるのが一般的です。

土地については、主に「路線価」(後述)が評価基準になります。
売買取引では、毎年国土交通省が発表する「公示地価」が、土地の評価額の目安になります。相続税評価額の算定に用いられる「相続税路線価」は国税庁が発表するもので、公示地価の8割ほどになります。実際に売買をするときに成立する売却価格(実勢価格)は、売主と買主の交渉によって決まるため一概にいえませんが、売却すれば1億円以上で売れるような土地が、相続税の評価では8000万円ほどになるイメージです(実勢価格の目安は公示地価の1.1~1.2倍といわれ、公示地価より高くなることがあります)。

戸建てやマンションなど、土地と建物がセットの場合には、建物部分の評価額も課税対象。建物部分は固定資産税の課税に用いられる「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額になります。建物の固定資産税評価額は、実勢価格の7割ほどになっているのが一般的です。

したがって、土地も建物も、多くの物件は相続税額の計算上では実際よりも低い評価額になります。このため、不動産には資産の評価を下げて相続税を節税する効果を期待できるのです。

投資用不動産は土地よりも相続税評価額が低い

建物が賃貸用だと、さらに節税効果を期待できます。

すでに自宅を持っている人(のちの被相続人)が相続対策のために不動産を購入する場合には、被相続人の自宅として使うのではなく、土地の上に建設されたアパートやマンションの居室を人に貸すことになるでしょう。これにより土地は「貸家建付地」となり、更地よりも相続税評価額が低くなります。

更地でも、相続税評価額は実勢価格よりも低いため、現金の遺産を相続するよりは節税効果があります。しかしその土地を人に貸し「貸家建付地」になると「借地権割合」といって、借主が土地を利用する権利(借地権)の分、所有している土地の評価額が下がるのです。
また、土地の上にある建物が賃貸物件なら、「借家権割合」、つまり借主が建物を借りる権利(借家権)の分も差し引かれます。

アパートやマンションの賃貸であれば、借主は賃料を支払うことによって貸主から「土地」と「建物」の一部を使用できる権利を借りています。
このため相続税評価額の計算においては、借主が権利を持つ分(借地権割合と借家権割合)は、資産を保有している貸主側にあるのではないとみなして、評価額からその分が控除されます(賃貸割合が100%の場合)。

借地権割合は、その土地がある地域によって30~90%の範囲で10%刻みで定められており、国税庁が路線価とともに公表しています。一般に、駅周辺や市街地など利用価値の高い土地ほど借地権の割合が高くなります。
借家権割合は地域による違いは無く、全国どこでも30%と定められています。

また、アパート・マンションにどれくらい借りる人が入居しているかも、評価額に考慮されます。これが「賃貸割合」です。一棟アパート・マンションを所有している場合は、建物内の全ての部屋のうち、賃貸中の部屋の床面積が占める割合を、貸家建付地の評価額にかけて計算します。

参考:国税庁「貸家建付地の評価」「貸家(建物)の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602_qa.htm

土地・建物それぞれの相続税評価額の確認方法

では、相続税評価額の確認方法を解説しましょう。

土地の相続税評価額の確認方法

土地の相続税評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」により算出します。

路線価方式

道路ごとに設定された価格「路線価」をベースに、対象となる土地の相続税評価額を計算する方式。都市部をはじめ、市街地の土地の相続の場合、こちらの路線価方式を用いることが一般的です。

公表されているのは道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額です。相続税評価額は、その土地の形状など(道路から奥にあるか、がけ地かなど)に応じた補正をして、路線価にその土地の面積をかけて計算します。

倍率方式

固定資産税評価額に一定の評価倍率を乗じ、相続税評価額を算出する方式。郊外や山間部など、路線価が定められていない地域の土地に、倍率方式を用います。

どちらの方法で評価額を計算するかはその土地ごとに指定されていますが、路線価方式で算出される土地の具体的な路線価や評価倍率については、国税庁のサイトを参照してください。

国税庁:路線価図・評価倍率表

建物の相続税評価額の確認方法

建物の相続税評価額は固定資産評価額と同じです。
役所の窓口で発行できる「固定資産評価証明書」、もしくは市区町村から毎年送付される「納税通知書」などの書類で確認することができます。

投資用不動産からの収益で相続財産が増えてしまう場合の対策

現金の資産を投資用マンションなどの不動産に変えておくと、相続時に評価額が下がり相続税対策に有効ですが、物件を賃貸に出して賃料収入があると預貯金が増えてしまい、相続税の節税効果が薄れてしまうおそれがあります。そのような事態を回避・軽減するために、相続税対策として不動産投資をするときには、将来の相続にそなえて、資産全体の把握や相続人の確認をしたうえで、相続税務に詳しい専門家に相談しながら進めることが大切です。

具体的な資産の状況や、購入する不動産によって、適切な対策は大きく異なりますが、投資用不動産によって現金が増える対策の一例には、次の方法があります。

賃料収入を現金で生前贈与する

投資用マンションなど、相続税対策として購入した不動産から得る賃料収入を、現金で他の人に贈与しておく方法です。

贈与税には非課税枠があり、1名に対して年間110万円までの贈与であれば、贈与税が課されません。これを「暦年贈与」といいます。この制度を活用し、投資用マンションやアパートなどの賃料収入から年間110万円までを、将来相続人となる予定の子どもや孫などに生前贈与します。そうすることで、被相続人の遺産に多額の現金・預金が残らないようにします。

ただし、同じ人に、毎年同じ金額を贈与すると「定期贈与」といって、はじめから高額な贈与をする予定だったものを分割しただけとみなされ、贈与税が課されるおそれがあります。
また、相続開始前3年以内の贈与は、相続が発生したときに他の人のものになっていても相続財産に加算されます。

不動産を生前贈与する

投資用マンションやアパートなどの不動産自体を生前に贈与しておく方法です。相続の発生時にはすでに被相続人のものではなくなっており、賃料収入も贈与を受けた人のものになります。
ただし、贈与をすれば贈与税がかかることに注意。投資用マンションなど自宅ではない不動産の贈与は贈与税が高額になるおそれがあります。

これを回避する方法のひとつが、「相続時精算課税制度」です。
「相続時精算課税制度」とは、被相続人が生きている間に、将来的に相続する予定の資産を贈与し、その贈与税を、のちに発生する相続税と精算する制度のこと。この制度を用いると、要件を満たした贈与について、2500万円までは贈与税が課税されません(複数年にわたって贈与を受けた財産が2500万円を超えると、超えた部分に対して一律20%の贈与税が課されます)。

その後、実際に相続が発生した際には、この制度を使って贈与を受けた財産と、それ以外の相続財産を合わせて相続税額を計算します。2500万円を超えたことにより納付済の贈与税があれば、相続税額から差し引いて精算します。
贈与した不動産はのちに相続財産とみなされることにはなりますが、2500万円までは贈与税がかかりませんし、超えた金額への税率も通常より低いため、贈与税額を抑える効果を期待できます。

「相続時精算課税制度」の利用には、贈与する人が60歳以上の父母・祖父母で、贈与を受け取る人が20歳以上の子・孫であるなどの要件があります。また、この制度を一度利用すると、年間110万円まで非課税になる「暦年贈与」を利用することができなくなります。

暦年贈与とする場合も、相続時精算課税制度を利用する場合も、のちの相続に効果的になるように行うにはほかにも細かな対策が必要です。また、個別の事例によって適切な相続税対策は異なります。

参考:国税庁「相続時精算課税の選択」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm

今回のまとめ

土地や投資用マンションなどの不動産は、相続税の節税に有効です。財産内の現金の比率・金額が多いと感じている方は、不動産の購入やマンションなど投資用不動産の建設を検討してみても良いでしょう。
ただし、相続税対策として不動産を活用し、上手に節税するには、不動産や税務に関する十分な知識と経験が重要です。信頼できる不動産会社と相談しながら、適切な活用方法を検討していくことをおすすめします。

Myアセットでは、投資用不動産の取り扱い・物件管理を専門的に行っています。相続税対策としての不動産投資をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。