不動産に関わる税金

中古マンションの売却時にかかる税金の種類・計算方法

2021年1月28日

ここでは、中古マンションを売却する際に課される税金について解説します。

中古マンションを売却して利益が出た場合には、その利益に対して税金が課されます。
課税対象になる利益は、単純にマンションの売却代金から購入代金を差し引いた金額ではありません。減価償却費などの様々な要素を考慮して算出されるものです。条件によっては軽減税率などの特例措置を受けて計算方法が異なるなど、マンション売却における税金の計算は複雑になることがあります。中古マンションを売却したときの税金のしくみを理解しておきましょう。

不動産購入時の税金についてはこちら

マンションを売却するときに必ずかかる2つの税金

マンションを売却するときには、たとえ利益が出ていなくても、必ず課される税金があります。印紙税と登録免許税です。
この2種類の税金は必ずかかるため、マンション売却をお考えの方は、理解をしておくことをおすすめします。

印紙税

印紙税とは、取引に伴う契約書を作成した際、その文書に課税される税金で、納税方法は売買契約書に収入印紙を貼付する形となります。
マンション売却の際には、売主と買主との間で売買契約を締結時に作成される売買契約書が印紙税の課税対象です。

なお、印紙税の金額は売買契約の金額によって変わります。売買契約の金額が大きければ大きいほど、印紙税の金額も大きくなるということです。
ただし、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成された売買契約書のうち、売買契約の金額が10万円を超えるものについては、印紙税率の軽減措置がとられています。
以下、契約金額の違いによる本則税率(本来の税率)の納税額、および軽減税率の納税額について確認してみましょう。

契約金額の違いによる印紙税の納税額(本則税率)

契約金額
本則税率の納税額
10万円を超え
50万円以下のもの
400円
50万円を超え
100万円以下のもの
1千円
100万円を超え
500万円以下のもの
2千円
500万円を超え
1千万円以下のもの
1万円
1千万円を超え
5千万円以下のもの
2万円
5千万円を超え
1億円以下のもの
6万円
1億円を超え
5億円以下のもの
10万円
5億円を超え
10億円以下のもの
20万円
10億円を超え
50億円以下のもの
40万円
50億円を超えるもの
60万円

契約金額の違いによる印紙税の納税額(軽減税率)

契約金額
軽減税率の納税額
10万円を超え
50万円以下のもの
200円
50万円を超え
100万円以下のもの
500円
100万円を超え
500万円以下のもの
1千円
500万円を超え
1千万円以下のもの
5千円
1千万円を超え
5千万円以下のもの
1万円
5千万円を超え
1億円以下のもの
3万円
1億円を超え
5億円以下のもの
6万円
5億円を超え
10億円以下のもの
16万円
10億円を超え
50億円以下のもの
32万円
50億円を超えるもの
48万円

注)不動産売買契約書に記載された契約金額が10万円以下の場合には、軽減措置の対象となりません(税額200円)。また、契約金額が1万円未満の場合には印紙税が課税されません。

※引用元:国税庁公式サイト
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm

登録免許税

登録免許税には2種類あります。

  • マンションなどの不動産の所有者が変更になる際、登記の変更にともなって課される税金
  • 住宅ローンなどに関わって設定される抵当権の抹消にともなって課される税金

ただし前者は買主が負担することが多いため、売主が負担するのは後者の「抵当権の抹消に関わる登録免許税」のみと考えていて良いでしょう。

一般に、マンションをローンで購入する際、そのマンションは抵当に入っています。この抵当権を外す手続きをする際に、上記税金が課されます。
納税額は、不動産1つにつき1,000円。一戸建てなど建物と土地が別々の不動産とみなされる場合、合計2,000円となります。

なお、不動産登記の変更手続きはやや難しいため、司法書士に手続きを依頼するのが一般的です。司法書士に依頼する際の費用の目安は1~2万円ほどと考えておきましょう。

マンション売却で利益が出たときに課される税金:譲渡所得税

マンションを売却して利益が出た際には、その利益が課税対象になります。ここでかかるのが通称、譲渡所得税です。
土地と違い、マンションには経年劣化があるため、一般には購入したときの金額よりも売却するときの金額のほうが安くなります。ただし、マンションの管理状態や地価の上昇などの影響で、逆に売却するときの金額のほうが高くなることがあります。この場合、売主に譲渡所得税がかかることがあります。
譲渡所得税には、正式には所得税・住民税・復興特別所得税の3つが含まれます。以下、それぞれの税金の概要について見てみましょう。

所得税

所得税とは、所得税法という法律に基づいて課される国税です。所得にはいろいろな種類がありますが、このうちマンションの売却で得られるのは「譲渡所得」といって、マンションの購入価格や売却時にかかった費用よりも、売却代金のほうが高かったとき、その利益に対して課されます。課される所得税率は、そのマンションを所有していた期間が5年以下かどうかにより異なります。

住民税

住民税とは、都道府県民税と市町村税の総称。地方税法という法律に基づいて課される地方税の一種で、その年の1月1日に住民票のある市町村から徴収されます。また、課税されるのは所得のあった翌年です。
マンションの売却で課される住民税率は、所得税と同様に、そのマンションを所有していた期間により異なります。

復興特別所得税

復興特別所得税とは、東日本大震災の復興を目的とした財源確保のために設けられた一時的な税金のこと。2013年から2037年12月31日に所得税を納付する場合に、併せて課されます。この期間にマンション売却で利益が出て所得税を納める場合、復興特別所得税の対象になります。

譲渡所得税の計算方法について

譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得税を計算するには、まず課税対象になる「譲渡所得金額」を算出します。
譲渡所得は次の計算式で求めます。

譲渡所得=譲渡による収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

おおまかには、マンションを売却(譲渡)した際の収入金額(売却代金)が購入時の取得費よりも高くければ、譲渡所得税の課税対象となります。ただし正確には、購入・売却時にかかった費用や、税制上適用できる控除額などを反映して計算するのです。

では、譲渡所得の金額の算出に必要な取得費・譲渡費用などについて確認しましょう。

取得費とは

譲渡所得の計算上で「取得費」にあたるものは、マンションの購入や維持で発生した費用の総額から、建物の減価償却費を差し引いた金額です。次の計算式で算出されます。

取得費=マンションの購入代金+購入時の経費-減価償却費

まずはマンションの購入代金(物件価格)に、購入にあたってかかった費用を加算します。購入時にかかった仲介手数料やリフォーム費用、登録免許税、不動産取得税、印紙税などを算入できます。譲渡所得の計算で取得費を求めるには、ここから「減価償却費」を差し引きます。

減価償却とは

減価償却とは、経年によって価値が減少していく資産(減価償却資産)について、その減少分を経費としてカウントする会計処理のことです。減価償却資産の取得費を計算するときは、購入代金の全額ではなく、価値が減少した分を差し引いて経費とします。土地は減価償却資産ではないので、マンションの場合、建物部分のみ減価償却費を差し引きます。

たとえば新築マンションを購入してから10年たった場合、そのマンションの価値が10年分減少したとみなし、その価値減少分を税金の計算に反映させる処理をします。これが減価償却です。

減価償却の計算をする際の大切な要素が、その資産を使用できる年数を法的に定めた「耐用年数」です。マンション売却時には、この耐用年数に応じて減価償却費を計算したうえで、税金の計算に反映させることとなります。

耐用年数の求め方

耐用年数は建物の構造や用途に応じて法律によって決まっています。たとえば鉄筋コンクリート造の居住用マンションの場合には、「47年」が耐用年数として定められています。仮に築47年を過ぎて実際には使用し続けられる状態だったとしても、会計処理上は新築から47年でマンションの価値は償却され尽くすと解釈します。
建物の耐用年数は、構造に採用されている主な材質により異なります。参考までに、構造別の耐用年数を確認しておきましょう。

●マンションに関わる耐用年数一覧(住宅用)

材質
耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)
鉄筋コンクリート(RC)
47年
れんが・石・ブロック
38年
木造・合成樹脂
22年
木骨モルタル
20年

※参照元:国税庁公式サイト
https://www.keisan.nta.go.jp/r2yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html

中古マンションの場合には、購入した時点までの経年を差し引いて残りの耐用年数を計算します。

RC造のマンションの減価償却の計算方法

上記の耐用年数のうち、建物を保有している期間は、減価償却によって建物の価値は毎年下がっていくと考えます。
マンションに多い鉄筋コンクリート(RC)の場合は耐用年数が47年ですので、「100(%)÷47(年)≒2.2」となり、1年に約2.2%ずつ減価償却されていくと解釈して減価償却費を計算することになります。

譲渡費用とは

マンションを売却する際にかかった費用のことを指し、主なものとしては以下が挙げられます。

  1. 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  2. 印紙税で売主が負担したもの
  3. 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  4. 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  5. 既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で売るために支払った違約金
    これは、土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金のことです。
  6. 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

※引用元:国税庁公式サイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm

中古マンションの売却に関わるものは対象の物件によって異なるので、上記を参考に正しく「譲渡費用」を把握しておきましょう。

特別控除とは

マンションを売却したとき、手取りの利益になるのは売却代金から取得費や売却にかかった費用を差し引いた金額になります。ですが税金の計算上は、それがそのまま課税対象になるわけではありません。
「特別控除」といって、住居用の物件を売却したときなど要件に該当する場合には、利益から所定の控除額を差し引くことができます(詳しくは「マンション売却の税額計算シミュレーション例」で後述します)。

「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」

ここまでで、譲渡所得の金額を算出したら、そこに税率をかけて譲渡所得税の金額を算出できます。このとき、税率は売却したマンションを所有していた期間によって異なります。具体的な譲渡所得税額の計算方法を見てみましょう。

所有期間が5年以下の場合

所有期間が5年以下のマンションを売却して譲渡所得が出た場合、これを「短期譲渡所得」と言います。「短期譲渡所得」における譲渡所得税額の計算方法は次の通りです。

譲渡所得税額=短期譲渡所得×39.63%(※)

※39.63%=所得税30%+復興特別所得税30%×2.1%+住民税9%

所得税・復興特別税
30.63%
住民税
9%

所有期間が5年超の場合

所有期間が5年超のマンションを売却して譲渡所得が出た場合、これを「長期譲渡所得」と言います。「長期譲渡所得」における譲渡所得税額の計算方法は次の通りです。

譲渡所得税額=長期譲渡所得×20.315%(※)

※20.315%=所得税15%+復興特別所得税15%×2.1%+住民税5%

所得税・復興特別税
15.315%
住民税
5%

「居住用マンション」と「居住用以外のマンション」の控除額の違い

売却したマンションが居住用であるか否かによって税額の計算方法が異なるため、以下では、「居住用マンション」と「居住用以外のマンション」について分けて説明します。

それぞれ説明の最後にはマンションを売却した際にかかる税額について計算シミュレーションを行ってみます。

居住用マンション(マイホーム)の場合
居住用以外のマンションの場合

居住用マンション(マイホーム)の場合

居住用マンションを売却したときの譲渡所得を計算するときには、「3,000万円の特別控除」を差し引くことができます。また、所有期間が10年超あれば、税率も軽減されます。少しでも納税額を低く抑えるために、以下3点の特例措置をきちんと押さえておきましょう。

3000万円の特別控除

「3000万円の特別控除」とは、マンションを売却して得られた譲渡所得から3000万円を差し引いて税額計算をして良い、という制度のこと。ざっくり言えば、マンションの売却で得られた利益が3000万円以内ならば、譲渡所得税を納付する必要はない、ということです。マンションの所有期間に関わらず適用されます。
ただし、この制度を利用するためには、売却するマンションがマイホームであるという条件が必要です。マイホームではないマンション(家賃収入を目的とした投資用マンションなど)を売却した際には、この制度を利用することができないことに注意してください。ほかにも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年末までに売る、確定申告が必要など、適用するには諸条件があります。
なお、譲渡所得が3000万円に満たない場合には、特別控除の金額は譲渡所得の金額が上限となります。

所有期間10年超の場合の軽減税率

居住用マンションの場合、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていると、税率が次のように軽減されます。

■所得税

譲渡所得金額が6000万円までの部分
10%
譲渡所得金額が6000万円を超える部分
15%

■住民税

譲渡所得金額が6000万円までの部分
4%
譲渡所得金額が6000万円を超える部分
5%

3000万円の特別控除を利用した後で、こちらの軽減税制も利用することができます。
軽減税率も、売却するマンションがマイホームであることが条件となります。投資用マンションなどでは適用されない制度なのでご注意ください。

買換えにおける課税繰り延べ

新たな住居への買換えを目的に所有マンションを売却する方は、譲渡所得税の課税繰り延べ(課税される時期を先送りすること)を選択することができます。ただし、この制度を利用するためには、主に次のような条件を満たさなければいけません。

  • 売却するマンションがマイホームであること(投資用マンション等ではないこと)
  • 新たに購入する住居もマイホームであること
  • 新たに購入する住居は土地500平米以下で、かつ建物が50平米以上であること
  • マンションを売却した年の1月1日時点で、そのマンションの所有期間が10年を超えていること
  • マンションの譲渡金額が1億円以下であること

ただし課税時期を繰り延べることができるとは言っても、課税のタイミングを来期に先送りできるというだけであり、課税額そのものは変わらないという点を覚えておいてください。

これら特例措置があることを踏まえたうえで、以下では居住用マンション売却時における譲渡所得税の計算シミュレーションを行ってみましょう。
ご紹介するシミュレーションは、「3000万円の特別控除」が適用された場合の例となります。

居住用マンションの譲渡所得税シミュレーション

【設定条件】
所有期間:8年
譲渡所得:5000万円

所得税=(5000万円-3000万円)×15%=300万円
復興特別税=所得税300万円×2.1%=6万3千円
住民税=(5000万円-3000万円)×5%=100万円
譲渡所得税合計:406万3千円

居住用以外のマンションの場合

居住用以外のマンション(投資用マンションなど)を売却した際に譲渡所得が発生した場合、その税額は、居住用マンションと同様に所有期間が5年を超えるか否かにより異なります。
なお所有期間が5年を超えているかどうかの基準日は、マンションを売却した年の1月1日となります。実質的な所有期間とは異なるので、売却タイミングには注意してください。

また、居住用マンション以外の売却では、「3000万円の特別控除」「所有期間10年超の場合の軽減税制」「買換えにおける課税繰り延べ」を適用できないことを改めて確認しておいてください。

以上を踏まえ、鉄筋コンクリート(RC)造の投資用マンション売却にともない譲渡所得が発生した際の譲渡所得税をシミュレーションしてみましょう。
以下のシミュレーションでは、減価償却費を考慮していますが、売買に関わる諸費用は考慮していません。

居住用以外のマンションの譲渡所得税シミュレーション

【設定条件】
所有期間:10年
購入価格:5000万円
売却価格:7000万円

減価償却費:5000万円×0.9×2.2%×10年=990万円
売却時の建物価格:5000万円-990万円=4010万円

所得税:(7000万円-4010万円)×15%=448万5千円
復興特別税:9万4,185円
住民税:(7000万円-4010万円)×5%=149万5千円
譲渡所得税合計:607万4,185円

今回のまとめ

マンションの売却が初めてという方は、まず「売却金額=課税対象」ではないことを理解してください。課税対象は、あくまでも利益の部分。売却して譲渡所得が出た場合にのみ課税される、ということを覚えておきましょう。
また譲渡所得の計算は、建物の様々な条件によって大きく異なります。構造により減価償却の計算方法も異なるので注意が必要です。

なお売却するマンションが居住用である場合には、ご紹介した通り、多くの特例措置を利用することが可能です。少しでも有利にマンションを売却するためにはこれら特例もしっかりと活用してい くことが必要ですが、ご説明した通りその計算は複雑なものになりがちです。
居住用マンションの特例措置が本当に適用できるのかどうかなど専門家に相談した上で、より納得のいく取引を進めていただければと思います。

当社Myアセットでは、居住用マンション・居住用以外のマンションともに売買のお取り扱いをしております。
ぜひお気軽にご相談ください。